表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/16

戦闘2

最初にダンゴムシを倒してから3日が経った。この3日間で倒したモンスターの数は5体、いずれもダンゴムシだ。

そのおかげでダンゴムシも瞬殺まではいかないが、安定して倒せるようになったと思う。この3日でレベルも2に上がったし、概ね順調だといっていいだろう。


入手したスキルポイントでバーストも取得した。レベル1で使えるスキルは空気を固めるスキルだ。エアロックっていうらしい。

このスキルは説明だけ聞くと攻撃スキルっぽくはないが、固めた空気は範囲内(自分を中心に半径3m)であれば自由に動かせるので、結構使い勝手がいい。攻撃にも防御にも使える万能スキルといった所だろうか。


 実際このスキルは足止めにも使えるし、固めた空気は見えないのでトラップにもなる。範囲内なら自由に動かせるから不可視の攻撃としても活躍できるのでかなり便利だ。

 固めた空気は最長で10分間は固定しておくことができる。硬さはソフトボール位なので攻撃手段としてはやや不安が残るが、それでも中距離の攻撃手段ができたのは大きいだろう。


 食料が殆ど残っていないので、そろそろ山にも登らないといけないし、今日もダンゴムシ狩りを頑張ることにしよう。俺は立ち上がって大きく伸びをする。外は今日も晴天、絶好の狩り日和だ。


・・・


 狩りは準備が大切だ。ダンゴムシを見つけても直ぐに襲いかかってはいけない。周りに他のモンスターがいないかを念入りに確認するのは必須事項だ。

 ダンゴムシが他にもいたら安全のために保留しなければいけないし、ほかのモンスターがいた場合も同じだ。むしろ他のモンスターが居たときは直ぐにその場から離れたほうがいい。


 この3日で確信した事だけどダンゴムシはこの森の中で最弱のモンスターだ。カマキリは鋭い両手の鎌で大岩を真っ二つにするし、アリは1体の能力はダンゴムシと同じくらいだと思うけど常に5匹以上でチームを組んで動いているので手が出せない。

 まだダンゴムシ以外のモンスターとは戦ったことは無いけど他のモンスターには苦戦しそうな気がする。


 俺がダンゴムシに勝てるのは、ダンゴムシが俺にとって戦いやすいモンスターだったからだ。今更戦いなれたダンゴムシ以外とは戦う気になれない。


・・・


 ダンゴムシを見つけたので草むらに隠れて様子見に入る。運がいいことに他のモンスターはいないみたいだ。俺は鉄パイプを握りしめて草むらから飛び出した。


 まずは背後からの1擊。何時もならこれが決まって動かなくなったダンゴムシにトドメを刺すだけだったが、今回は少し違った。ダンゴムシが俺の鉄パイプを転がることで避けたのだ。


 まずい


 俺はそう思った。今までは一撃必殺で、ダンゴムシからの反撃を受けたことがなかった。瞬間、エアロックを使って空気の壁を正面に何十にも展開する。


 衝撃が走る。


 前を見るとダンゴムシは体を丸めて転がってきていた。凄い勢いで空気の壁を破ってくる。勢いは若干緩やかになったものの、ダンゴムシは止まらない。


 俺は両腕でガードした。

 だけどダンゴムシの突進は強くて、その突進を受けた俺の両腕は燃えるように熱い。骨は折れてないみたいだけど、しばらくは使い物にならないだろう。

 エアロックを使わなかったら両腕の骨は砕かれ、下手したら死んでいたかもしれない。


 今の攻防で鉄パイプを落としてしまった。俺の顔を見てダンゴムシが笑っている気がする。苦し紛れにエアロックで空気の弾丸を作って攻撃していくが、あまり効果がないみたいだ。


 ダンゴムシの外皮は固く、エアロックでは傷一つつかない。俺はブーストを全身に使ってダンゴムシの攻撃を避けていく。両腕の痺れが無くなるまで攻撃を避け続ければ、きっと勝機はあるはずだ。


 ダンゴムシの突進も逃げに徹していれば避けられないスピードじゃない。あと数分もすれば手の痺れも治るだろう。

 何とかなる、と思った時、目の前のダンゴムシが真っ二つになった。緑色の体液が俺の顔を濡らす。ダンゴムシの後ろにカマキリのモンスターがいるのが見えた。


 新手のモンスターだ。このカマキリ型のモンスターはこの数日で何度も見ている。戦ったことはないが、素早い動きと両手の鎌の鋭さは良く知っているつもりだ。


 今の自分では奇襲を仕掛けても勝ち目が薄いと思わせる程に強力なモンスターだ。俺よりも機敏に動き、空を飛ぶ。ダンゴムシの様な防御力はないだろうが、こちらが攻撃を当てる前にカマキリは俺の首を刎ねるだろう。

 足に力が入らない。逃げなければいけないのは分かっているけれど、体が動かない。俺はここで死ぬんだろうか?


 そんな事を考えている俺を無視してカマキリは自分が倒したダンゴムシをムシャムシャと食べている。

 外皮を残してダンゴムシを食べ終わったカマキリはそれで満足したのか、そのまま何処かに行ってしまった。


 俺は助かったみたいだ。カマキリにとって食べる部分が少ない俺は、殺すに値しなかったのかもしれない。しばらくしてズボンが湿っている事に気付く。

 恥ずかしながら漏らしてしまったみたいだ。気持ち悪いし今日はもう洞窟に帰ることにしよう。俺は鉄パイプを拾って洞窟に帰ることにした。


・・・


 洞窟に帰ってもしばらくは体の震えが止まらなかった。これが死の恐怖ってやつだろう。トラウマになりそうだ。

 この数日の間、何もかもが上手く行き過ぎていて少し調子に乗っていたのかもしれない。レベルも2に上がって新しいスキルも覚えて、ダンゴムシ1匹くらいなら簡単に倒せると勘違いしてしまっていたみたいだ。

 実際はただ運が良かっただけだった。最初の1擊が外れるだけであんなにピンチになるとは思わなかった。


 ここは死と隣り合わせな危険な場所だ。それを思い出したら今すぐにでも元の世界に帰りたくなった。目標のレベル3にはなってないけど明日にでも山に向かうことにしよう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ