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スキル

「知ってる天井だ。」


 目を覚ますと俺は部屋のベッドの上にいた。あの森の出来事はやっぱり夢だったんだろうか?夢だったらいいんだけどなぁ。

 そんな俺の願いを服の汚れや体の痛みが否定する。俺はポケットの中にあるスマホを取り出した。スマホには新しい情報が追加されている。


・・・


ステータスアプリを追加インストールしました。

クエスト報酬 スキルポイント1が追加されました。

次クエストまで残り6日と16時間


・・・


 俺はこれを見て目の前が真っ暗になった気がした。どうやらあのクエストで終わりではないらしい。1週間後にはまたあの危険地帯に飛ばされるみたいだ。あれをまたやらないといけないのか。正直もうやりたくないんだけど。


 今回のクエストではモンスターに襲われる危険こそあったけど、実際は歩いただけだ。だけど今度のクエストではモンスターと戦わないといけない場面もあるかもしれない。あんなのと戦って勝てる可能性は正直皆無だ。瞬殺される自信がある。モンスターを一定数倒さないと帰れないクエストとかだったら俺はもうこっちに帰れなくなるんじゃないだろうか?


……あんまり考えたくないな。


 森での経験から考えるに強くならないと直ぐにモンスターに殺されるのは目に見えている。できるだけ早く強くならないといけない。手っ取り早く強くなる方法として考えられる物としてはやっぱりクエスト報酬でもらったスキルポイントだろう。小説とかで良くあるみたいに強力スキルを修得して無双できれば異世界に行くのだって楽しくなるかもしれない。つまり、手っ取り早く強くなる方法が目の前にあるのだ!


 俺はステータスアプリを起動してその中のスキルメニューを開いた。習得できるスキルは意外にも少ない。スキルは以下の3つだ。


・・・


バースト  攻撃系スキル

ブースト  身体強化系スキル

イリーガル 特殊系スキル


・・・


 バーストは簡単に言うと魔法みたいな物らしい。レベルが上がれば強力な攻撃手段になってくれるだろう。

 ブーストは常時発動型じゃなくて任意発動型の身体強化で、全身強化だけじゃなくて部分強化もできるみたいだ。部分強化の方が出力は上がるらしい。

 イリーガルは人によってその性質が変わるらしい。透明になるスキルや心を読むスキル、瞬間移動ができるようになるスキルなんかもあるようだ。


 スキルはレベル1を取るためにスキルポイントを1使う。スキルレベルを上げるたびに消費するスキルポイントも増えていくようだ。レベル2なら2ポイント、レベル3なら3ポイント必要になる。


(さて、どのスキルを取ろうかな?)


 個人的にはブーストを取って身体能力を上げて生存率を上げたいところだが、次のクエストがモンスター退治だった場合、バーストがないと厳しいかもしれない。

それか強力スキルを期待してイリーガルのスキルを取ってみようか。


 結局俺はどのスキルかを取るかで悩んでいるだけで登校時間になってしまい、スキル取得は保留になるのだった。


・・・


 どんなに自分が異常事態の中心に放り込まれたとしても、学生は病気にでもならない限り学校を休むことは許されない。そんなわけで俺はガタガタな体を引きずりながら登校中というわけだ。


 そういえば、異世界関係のメールやアプリは普通の人には認識できないみたいだった。親に見せたら不思議な顔をしていたので間違いないだろう。

 あとこれは俺の勝手な推測だけど、異世界に行っている間はこちらの時間は止まっている可能性が高い。体感時間だけど半日くらい森を彷徨っていたのに次の日の学校に間に合ってるのがその証拠だ。

 こんな異常な事がただの都市伝説で終わっている理由がわかった気がした。俺みたいに異世界に行くようになった人間がどれだけみんなに話したとしてもそれをみんなに信じてもらえないからだ。


 向こうで死んだら死体は向こうで処理されると説明に書かれていた。その場合、こっちの世界で俺はどういう扱いになるんだろう? 行方不明や神隠しとかならまだ良いけど、最初からいなかったとかにはならないよね? 考えたらちょっと怖くなってきた。


・・・


 学校はいつも通りだった。いつも通り異世界メールの噂で溢れている。昨日まではそんなに気にならなかった噂話だが、当事者になってしまった今では気になって仕方がない。


 この噂は俺みたいに異世界に行ってる奴が流しているのかもしれない。そうなると学校とか近所にも俺みたいに異世界に行っているやつはいるんだろうか? 学校で流れている噂を改めて聞いてみるとこんな感じだった。


・質問に答えると異世界に連れてかれる。

・異世界からは逃げられない。

・異世界から帰ってきた人間は特殊な力を手に入れる事ができる。


 どうやら異世界からは逃げられないらしい。絶望的な気分になった。刺激が欲しいとか、冒険がしたいとか考えなかった訳じゃないけど、本当にモンスターと戦う事になるなんて聞いてない。


 あと、これでこの噂を流したやつが俺と同じように異世界に行っている可能性がかなり高まった。異世界に行った奴じゃなきゃ帰ってきた人間が特殊なスキルを手に入れる事ができる、なんて発想が出てくるはずない。


「顔色悪いぞ?大丈夫か?」

「あ、あぁ。大丈夫。」


 スマホアプリを見せて「昨日異世界に飛ばされた。」とか言っても多分嘘つきとしか思われないだろう。相手はアプリを認識できないんだから。頭のおかしい奴と思われるかもしれない。もしくは目立ちたがりの虚言壁野郎とか。


 可能性は低いけど俺と同じように異世界に行っている奴が接触してくるかもしれない。だけど一緒の場所に飛ばされる可能性は少ないだろうし、情報交換にしても俺は何の情報も持っていないので相手を怒らせてしまう可能性もある。

 俺と同じように異世界に飛ばされている人を探すにしても、もう少し後にしたほうがいいだろう。まずは情報だ。


 とりあえず今はやれる事をやろう。まずはどのスキル取得するか決めて、そのスキルに慣れる事から始めないと。

 後は何か武術的な物も身に付けないといけないかもしれない。スキルには戦闘技術を補助するような物はなかった。つまりそういう技術は自分で何とかするしかないという事だろう。


 次に異世界に飛ばされるのは約1週間後。それまでに今より動けるようになりたい。良くある【スキルでいきなり剣豪になっちゃった☆】とかはできそうもないので、生き残る確率を上げるために武術を習うのは必須かもしれない。


 これは俺の予想でしかないが、次に異世界に飛ばされたときの開始時点は前回の終了地点の近くだろう。あの魔法陣はセーブポイント的な役割もある気がする。毎回違う場所に飛ばされるっていうのは無いと思いたい。

 飛ばされるのが森なら、モンスターと戦うための武器はこっちから持っていくしかない。


 学生の俺が手に入れられそうな物の中で武器として使えそうなのは木刀と鉄パイプ、後は包丁とかくらいだろう。それであの巨大カマキリやダンゴムシに対抗できるとは考えづらいけど。

 まぁ、こっちから武器を持っていけるかは不明なんだけどね。前の時は服とスマホはそのまま持っていけた。自分の体に接触していれば持っていけるんだろうか? 取り敢えず異世界に行く日には包丁と鉄パイプを持って寝る事にしよう。


 取得するスキルも決めた。まずはブーストをレベル1にする。

 次にバーストとイリーガルもレベル1に強化して使い勝手を調べてからスキルレベルの上げ方を本格的に決めようと思う。俺はアプリを起動してブーストのスキルをレベル1にした。


 さっそくブーストを全身を強化する形で使用してみるが、ブーストはハッキリ言って微妙だった。


 確かに凄いことは凄い。右手をブーストさせれば中身が入ったジュースの缶も握りつぶせたし、足にブーストを掛ければ2m近くのジャンプが可能になった。スポーツ選手もびっくりだ。


 でも、これであのモンスターに勝てるかって言ったら微妙だと思う。なんていうか、これ位なら鍛えたスポーツ選手ならできる気がするのだ。

 まだレベル1だからこんなにショボイのだろうか?これだったらバーストかイリーガルのレベルを上げたほうが良かったかもしれない。俺は次のクエストがかなり不安になった。


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