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クエストへ


 時間っていうのは本当にあっという間に過ぎる。どんなに頼んでも待ってはくれない。どれだけ神に祈ったとしても時間を止めることは誰にも出来ないのだ。

 もうすぐ異世界に行く時間になる。準備を整えて倉庫のマットの上で横になった俺は何度目かのため息を吐いた。


 今度はどんなクエストが待っているのか? 討伐系だけは勘弁してほしいと思う。現代社会に生きる人間としては例え姿が昆虫だったとしてもそれを殺すには忌避感というか、そういうのがあるのだ。それに討伐対象になるだろう昆虫型モンスターは俺よりでかいやつが殆どなので、下手をしたらこっちが殺されてしまうのも嫌なところだ。


 そんな事を考えていたら俺の周りに魔法陣が出現した。青く光る魔法陣は何処か厨二な心をくすぐる模様が描かれている。

 魔法陣の光はどんどん強くなっていく。体育倉庫の中が青い光で染められていき、俺は目を開けていられなくなった。


・・・


 次に目を開けた時は見慣れてきた異世界の森の中だ。俺はクエストの確認をする前に身に付けていた荷物が無事にこっちに来ているか確認する事にした。

 結果としては金属バットだけこっちに持ってこれていなかった。どうやら体に括り付けずに手に持っていたのが不味かったみたいだ。多分転移の時に手放してしまったんだろう。


 さて、次はクエストの確認だ。ここにずっと立っているとモンスターに気付かれそうなので、前回のクエストで拠点に使っていた洞窟に移動する。この周辺はレベル上げの時に歩き回ったのでもう庭みたいなものだ。   

 まぁ、モンスターの気配に気を配らないといけないから気を抜ける訳じゃないけれど。


 モンスターに気付かれないようにブーストを使用せず忍び足で進んでいく。この森で警戒しないといけないのはアリ型とカマキリ型の2種類のモンスターだ。アリ型のモンスターは常に集団で陣形を取って行動しているから見つかったら逃げるのも難しいし、カマキリ型には単純に勝てる気がしない。


 この森で唯一勝てる相手といえばダンゴムシ型のモンスターだ。固い外殻が厄介だけどダンゴムシは聴覚が悪くて注意すればやり過ごすのも簡単だし、不意打ちをすれば一方的に倒すこともできる。カマキリとアリもこれくらい簡単ならありがたいんだけど。


 目的の洞窟は5分もしない内に見えてきた。ゴツゴツした岩肌から冷気が漏れ出ている。

 洞窟は入口の前から肌寒く、まるで冷蔵庫の中にいるような気分になってくる。ずっとここに居たら体調を崩してしまいそうだが、ここは寒さを嫌う虫型モンスターが近寄ってこないので俺が知る中ではこの洞窟は唯一の安全地帯になっている。


 だからこの森にいる限りでは寝泊りがこの寒い洞窟になる。前回の時は寒さのせいで碌に眠ることができなかったが今回はどうなる事やら。

 荷物が増えて動きが鈍るのは避けたかったので毛布や寝袋は持ってきてないから(用意できなかったという所もあるが)なるべく早く次の安全地帯を見つけたい。


「さて、今回のクエストはっと。」


・・・


 クエスト 魔導士アムスを探せ


 ゴルダダ大陸の何処かにいる魔導士アムスを探し出してください。

 アムスはあなたをこの世界に呼び込んだ魔導士です。魔導士アムスを探し出し、あなたをこの世界に呼んだ目的を聞き出しましょう。


 スタート地点から北に向かって森を抜けると農村があるので、まずはそこで情報を集めると良いかもしれません。


クエスト成功条件 魔導士アムスの発見

クエスト失敗条件 プレイヤーの死亡

クエスト成功報酬 ???


・・・


 ここはゴルダダ大陸という大陸の森の中らしい。異世界3回目にして初めて情報らしい情報が手に入った。そして初の現地人との交流の予感。ドキドキが止まらない。

 今回のクエストでは魔導士アムスっていう人を探すのが目的らしいが今までとは違って明確な目的地が示されていない。ゴルダダ大陸がどれだけの広さなのか分らないが今回は長丁場になりそうだ。


 この世界の文明レベルはどれ位なんだろう? この世界で俺の格好は目立たないか? 言葉は通じるんだろうか? 色々不安なところは多いけど、それでもこの森で延々モンスター退治をするよりはマシだと思う。

 クエストの説明文を読む限り文明レベルはある程度ちゃんとしていると感じだし、農村がある位だから食料もお金のさえ何とかなれば大丈夫そうだ。


「まずはこの森を抜けないとな。」


 クエストの目的は魔導士アニムスを探すことだが、まずは森を抜けないと話にならない。前のクエストで山の上から見た感じだと、森はかなり広い。ここを抜けるだけでも何日も掛かりそうだ。


 幸いな事に食料は持ってきているし、今の俺なら逃げるのに徹すればモンスターも何とかなりそうだ。森は広大だけど、こっちにはアプリにあるマップがある。迷うことはないだろう。


 俺は安全地帯の洞窟を出て北の農村を目指すことにした。

 アプリのマップを確認してみると、今は森の中心あたりにいるみたいだ。まだ外も明るいし、マップを使えば他の安全地帯も見つけるのは容易いと思う。


 自慢じゃないが俺は自他ともに認める方向音痴だ。マップがなかったら迷い死ぬ自信がある。アプリのマップは自分の位置がリアルタイムで更新されるので本当に助かる。


 森はかなり広い。しかも同じような景色ばかりなので気が滅入ってくる。快適な場所ならともかくここは危険な森の中でモンスターも沢山いる。その事実が俺の精神をガリガリと削っていった。


 マップが無かったら俺は発狂していたかもしれない。どれだけ進んだかが分るのはそれだけでもありがたい事だ。


・・・


 安全地帯である洞窟から出発してどれだけの時間が過ぎただろう? 日も暮れてきたけど安全地帯が依然として見つからない。

 俺はこの森を甘く見すぎていたみたいだ。朝を待つことなく洞窟を出発した事を軽く公開し始めていた。目にブーストを使えば夜でもある程度周りが見えるので歩くのに支障はないけれど、休憩なしで歩き続けられるわけないし早くゆっくり休める場所を見つけない。



 それからしばらくして草木に隠された洞窟を見つけた時、俺が半泣きだったのは内緒だ。




これで1章終了です。

しばらくの間は1章を手直しします。

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