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避難


 こっちに戻ってから4日が過ぎた。こちらの世界では今、ゴブリンや巨大なオオカミといった新種の動物に大騒ぎだ。

 まぁ、そんなモンスターがいるのは俺が住んでいる町からはかなり離れているので俺はゴブリンもオオカミも直接は見てないけどね。

 今のところこれといった被害はオオカミによるものだけで、他にはこれといった被害は出ていない。サルに代わって出現したゴブリンがいる動物園なんか、ゴブリン見たさの野次馬で連日凄いことになっているらしい。

 まぁ、どんな危険があるか分らないから自衛隊が動物園を封鎖しちゃって、野次馬達はゴブリンは見れないらしいけど。


・・・


 俺はこの数日で自己流の特訓に何処か行き詰まりを感じていた。スキルの効果が現実世界と異世界で違いすぎるため、スキルの特訓をしてもそこまで意味がないという事がわかったからだ。

 こっちでスキルに慣れれば慣れるほど、向こうに行った時の効果の上昇に戸惑うことになる。それは一歩間違えば致命的なミスを招く事になるだろう。


 勿論、筋トレや走り込みは朝晩続けているが、それだけじゃ足りない気がする。順調に強くなっていると思っていたが、それは勘違いだったのかもしれない。

 スキルを使わないと俺はこんなに弱かったんだな。そう考えると自然にため息が出た。


 最近は空いた時間を使って異世界で生き残るにはどうしたらいいかを考えるようになった。異世界のモンスターは硬いモンスターが多い気がする。それは俺が巨大ダンゴムシと大岩を背負ったカニとしか戦っていないからかもしれないが、見た感じ巨大カマキリやアリっぽいモンスターもそこそこ硬そうだった。

 カマキリはそこまで硬くない気もするけど、あの両手の刃がある限り戦いたいとは思えない相手だし、例外でいいだろう。

 俺には硬いモンスターを素手で殴る趣味はない。だから今の俺に必要なのは強力な武器だと思う。


 まぁ、武器が欲しいといってもただの高校生が日本刀や銃を入手することは難しいだろう。俺みたいな貧乏人が買えるのはやっぱり鉄パイプくらいしかない。鉄パイプ以外だと、金属バットなんかも武器候補だろうか。


 財布の中には諭吉が1枚。それが今の俺の全財産だ。本当はゲーム機を買うためにコツコツ貯めていた軍資金なのだが、死んだらゲームもクソもないから仕方ない。

 異世界に行った時のための服も用意しないといけないから、1万円でもまだ足りないかもしれないけど。悩んだ結果、金属バットとキャンプ用のナイフを購入した。手斧があったので買いたかったが、3500円と少し高かったので辞めておいた。

 買おうと思えば買えたけど手斧はキャンプ用のようで、武器としては頼りなかったからだ。特に持つところの部分がすぐ駄目になりそうだった。

 金属バットも同じくらいの値段がしたけれど、こっちの方が攻撃力もありそうだし何より親に説明するときも楽だ。


 洋服は近所の商店街で500円のTシャツを3着購入した。ズボンも1着購入したら財布が寒くなってきた。残りのお金で保存食を買っていく。前回で気づいたことだが食べ物は勿論大事だが水も結構大事だ。前回は拠点にしていた洞窟に泉があったから何とかなったが次もどうなるかは分からない。本当は水筒を買いたいところだが、ペットボトルで我慢しよう。


 買い物も終わったので家に帰って買ったものをリュックに詰めていく。ナイフと金属バットはベッドの下に隠しておくことにした。


・・・


 こっちに帰ってから6日が過ぎた。テレビのニュースでは連日ゴブリンや狼などの突然現れた異形の動物達の事を取り上げていた。現れたモンスターたちは自分達のテリトリーに近づかない限り人を襲うことはないようだ。

 モンスターは何処から出てくるのか増え続けている。最初は動物園にいただけのゴブリンは外でも見るようになり、襲われた人も多い。結果モンスターは恐怖の対象として見かり次第自衛隊や警察に射殺されている。


 だけどモンスターのニュースは無くならない。殺しても殺してもモンスターはどこからか湧いてくるからだ。

 昨日までいなかった街中にゴブリンが現れたこともある。その時は3人の死傷者がでた。学校の中に巨大な狼が入り込んでいた事もあった。その時は10人の教師と学生が食い殺されたらしい。


 モンスターが何処から現れているのかはまだ判明されていない。

警察や自衛隊が見回りを強化しているにも関わらず被害は減らない。学校も休校になり、警戒が解けるまでは公民館や学校に避難することになった。


 こうなってくると少し問題が出てくる。それは俺の異世界に行くために準備していた道具の事だ。俺も例外なく避難することになるのだが、準備していたものを持っていくのは目立つ。

 ナイフと前回使った包丁、鉄パイプは置いていくしかないだろう。金属バットはギリギリいけると思う。

 俺は帰宅部で野球なんか授業でしかやったことがないが、別に持っていても不思議じゃないだろう。もし怪しまれそうだったら体育倉庫にでも閉まっておけばいい。

 非常食もそこまで問題にはならないだろう。食事は配給があるだろうし、準備のいいやつくらいにしか思われないはずだ。

 親には変な目で見られるかもしれないが、別に危ないものを持っているわけじゃないし何も言わないだろう。


 特訓ができないのは残念だが伸び悩んでいた所だし、筋トレ位なら避難所でもできる。避難所である中学校は近所だが、駐車場にも限界があるから移動は徒歩になると思う。

 荷物は厳選しないといけない。俺は非常食と読みかけの武術の入門書3冊をバックに詰め込んだ。金属バットはそのままで、着替えの洋服を別のバックに詰め込んでいく。


 モンスターの被害は大きいようで、自衛隊と警察が警戒をしている時間帯に近所の人達で固まって避難する事になった。

 まぁ、ここら辺にはまだモンスターの目撃情報はないので、そこまで警戒する事はないだろうけど。


・・・


 次の日、俺は家族と近所の人達と一緒に避難する為に近所の公園に来ていた。

避難する中学校は少し前まで通っていた学校でもある、体育館が大きくてスポーツに力を入れている学校だった。


 中学校までは自衛隊が警備している道を通る。銃を担いだ迷彩色の服を着た男たちが油断なく警戒している中、俺たちは足早に通っていった。


 それでもここら辺はまだ危険が少ない場所だという認識らしく、自衛隊員の中にも談笑している人たちもいる。中学校に到着して、正門に入った時、遠くから銃声が聞こえてきた。モンスターが出たのだろうか?破壊音と共に怒声と悲鳴が聞こえてくる。

 俺達は急いで避難所である体育館に避難した。体育館の中には100人位の人が避難していた。さっきの銃声が聞こえていたみたいで、皆不安そうな顔をしている。


 しばらくして銃声も破壊音も聞こえなくなった。不安だが外に出て結果を確かめに行く勇気は俺にはない。


 日が暮れた頃に自衛隊員が晩ご飯の配給にやってきたので撃退はできたんだろう。しかし、これでここら辺にもモンスターが出てくることがわかった。自衛隊の人が言うには5匹のゴブリンが突然襲いかかってきたらしい。

 ゴブリン達は動物園にいたやつとは違って体を布で隠して金属バットを武器として使っていたみたいだ。身体能力も高く、銃の弾丸を避けながら攻撃してきたらしい。


 5匹のゴブリンは最後には逃げたみたいで、体育館の人達も注意してほしいと自衛隊員が説明していた。自衛隊員の話ではゴブリンたちは独自の言語で意思疎通をしているようで、知能も低くないみたいだ。


 自衛隊員の説明を聞いた人達は更に不安になったみたいだ。これからどうなるのか。俺は胃がキリキリと痛むのを感じた。


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