第十話 呪眼の黒獣
「おい、片桐。準備できたぞ」
早朝、俺とミリアは片桐の家の前まで来ていた。
ここで片桐と合流してから出発する手はずだからだ。
「明人、それにミリア嬢か。よく来てくれたな」
片桐も服装のみ見れば準備はできた様子で現れたが、何故か武器装備等の携行品は一切身に着けていない。
「なんだ?まだ準備できてないのか?」
「いいや、そうじゃない。明人、お前さんは葵と会った事がなかったろう?丁度良い機会だ、会っていけ」
「まさか、その為にここ集合にしたのか?」
「まあ、そんな所だ」
確かに会った事がないし気にもなっていたが、出発前の今唐突に引き合わされるとは思ってもいなかった。
どんな奴なんだろう等と考えを巡らせている俺を気にも留めず、片桐は葵の部屋に向かい一言二言交わした後俺を迎えに来た。
「さあ、入っていいぞ」
「あ、ああ」
促されるままに部屋へと入る。
まず目に入ったのは開け放たれた窓。そこで風に揺れる薄いカーテンが、朝日を浴びて美しく揺らめいている。
その窓の隣、ベッドの上に葵は居た。呪いのせいか、あるいは外に出れないせいか色素の薄い肌と、触れれば壊れてしまいそうな華奢な体つきとが相まって、今すぐにでも消えてしまいそうな、とても儚げな印象を受けた。
思わず見つめていた俺と目が合った葵は優しい笑みを浮かべ、俺はとっさに言葉が出せず、軽く会釈するのが精一杯だった。
これではまるでコミュ障だ。
「初めまして、明人さん。兄がいつもお世話になってます」
外見から受けた印象を更に強める、か細い声で葵が挨拶をする。
同時に軽く頭を下げ、肩まで伸びた美しい黒髪が前へと流れた。
その様子に思わず見とれてしまいそうになったが、背中を殴られて我に返る。
後ろを見ると目線だけで射殺されそうな勢いでミリアが俺を睨んでいる。
「何見とれてんのよスケベ。早く挨拶しなさいよ」
「うるせえ、わかってるわ!」
初対面の葵の前だというのを忘れてついいつもの様に返してしまい、しまったと葵の方を見ると、彼女はそれは本当に面白そうに笑っていた。
「ふふっ、本当に仲が良いんですね。ミリアさん、ここに来る日は少なくとも一回は必ず貴方の話題を出すんですよ」
「は?マジで」
そんな馬鹿な、と思わず後ろを振り返るとミリアは慌てて否定した。
「ちょっと!誤解を生む言い方するのやめてよね!私はあんたの悪行を葵に話してあんたが葵に変な事できないようにしただけよ」
ちょっと意味がわからないが、取りあえず深く追及はしないで本題へと戻そう。
「まあいい、このツンデレは置いといて……、世話になってるのは俺の方だ。いつも片桐には剣の稽古を付けて貰ってるからな、おかげで大分強くなったと思う」
「兄さん、毎日楽しそうに話してましたよ、見込みのある弟子だって」
「弟子入りした覚えはないが」
少なくとも見て貰ってるだけで、弟子入りを志願した覚えも、弟子だと言われた事もない。
「さて、顔合わせはそこらで良いかな、そろそろ出発するぞ」
いつの間にか装備を整えた片桐が部屋の入口に現れ、出発を促す。
葵は一瞬名残惜しそうにしたが、すぐに表情を変えて俺達を送り出した。
「ミリアさん、明人さん、私の為にありがとうございます。どうか気を付けて、いってらっしゃい」
「ああ、任せろ」
「気にしなくても良いわよ葵、必ず呪い解いてあげるから、待ってなさい」
「じゃあ、行ってくるな、葵。しばらくしたら隆が来るはずだから、何かあったらあいつに言うんだぞ」
といった具合でフォレストサイドを出発して早数時間(体感)。歩けども歩けども目的地はいまだ見えず。
肉体は強靭なおかげで疲れこそ感じないが、ただの草原を歩き続けるというのも退屈極まりない。
せめて風景に変化があればそれなりに楽しめるが。
「なあ」
「何よ?」
「この草原、いつまで続くんだ」
「知らないわよ」
何で知らないんだよと言いかけた所で先行していた片桐が足を止めて振り向いた。
「まだまだ続くぞ、日が傾き始めた頃に森に入るだろうが、それまではずっと草原だ」
「マジかよ」
恐らく影の位置からして今は11時くらいなので、まだまだ4~5時間はこのままの景色という事だろう。
呆然と目の前に広がる草原と、果てしなく続く街道を見つめていると、遠くの方で何かがこちらに向かって来ているように見えた。
「ん?なあ、なんかこっち来てないか」
俺の言葉に他二人も道の先を見やる。
「ふむ、あれは馬車だな」
「え?そこまで見えんの?嘘だろ?」
「嘘ではない。すぐにわかるさ」
その言葉通り、その後さほど時間もかからずに前方の物陰が馬車だと判明した。
馬車には男が1人だけ乗っていて、俺たちに気付くとその場に馬車を止めた。
「おい、あんたらこの先の山を目指すのか?」
「そうだ」
俺の短い返答に、男は必死の形相で叫んだ。
「やめとけ!あそこには悪魔が棲みついてるんだ!死にたくなかったら今すぐ引き返せ!」
「悪魔ねえ」
魔法だの魔物だのが存在するこの世界の事だ、悪魔の一人や二人は実在しても驚きはしないが、この男の言う物が本当に悪魔かどうか、そこはわからない。
などと考えていると、ミリアも同じ考えに至ったようで、俺より先に疑問をぶつけた。
「その悪魔って、三つ目の黒い獣じゃなかったかしら?」
「そうだよ、なんだお前ら知ってるのか?知ってて行くのか?」
「ああ、丁度そいつを倒しに行く所だ」
俺とミリアが男と話している間、いつの間にか裏に回って馬車を調べていたらしい片桐が戻ってきて話に割り込んだ。
「見た所、あなたは鉱夫か。大方その獣と遭遇して慌てて逃げてきたといった所か」
「その通りだ、あいつのせいで仕事どころじゃねえ。仲間は俺を除いて全滅だ……」
「どうだろう。我々がその獣を討伐するから、その場所まで乗せて行って貰えないだろうか?」
さすがベテランの傭兵。実に感激する手際で鉱夫の男に交渉を持ち掛けた。
鉱夫の方は値踏みする様に片桐を見つめていたがハッと顔色を変えて叫びだした。
「あんたのその恰好、もしかしてカタギリ……異郷のカタギリか!?」
「確かにそうだが、その二つ名はやめてくれないか、好きじゃないんだ」
「あのカタギリが居るってんなら話は別だ!いくらでも乗せてってやる!なんなら報酬だって出すから是非あの悪魔を倒してくれ!」
鉱夫は片桐の話を半ば遮る様に叫びながら俺達を乗せて行く事を快諾。しかも倒したら報酬までくれるらしい。
もともと倒す予定の敵に懸賞金まで付くと言うのだからまさに棚から牡丹餅だ。
俺達三人は馬車に乗り込み、目的の場所へと移動を再開。
さすが、馬車なだけあって移動速度は徒歩の比ではない。この分なら往復一日も掛からず討伐を達成できるだろう。
「馬車に乗せてもらえるとは、僥倖だったな」
「何言ってんだ、片桐が話しつけたんだろうが」
「ええ、さすが伝説の傭兵ね。見事な交渉だったわ」
そう言いつつ、ちらりと俺を見るミリア。
「おい、なんで今俺を見た」
「別に、あんたと二人だったらどうなってたか考えてただけよ」
「はいはい、どうせ何もしてませんでしたよ」
いちいち言い返すと確実に言い合いに発展するのは学んだので適当にやり過ごす。
そんな俺とミリアのやり取りを見て、片桐は軽く鼻で笑った。
そんな片桐にミリアがいちゃもんを付ける。
「何よ?」
相手が片桐であろうとも突っかかっていくのはさすがミリアと言った所か。
「いやなに、微笑ましいなと思ってな」
「馬鹿にしてるの?」
「違う、そうじゃない。私は一人で戦ってきたからな、パートナーと二人でいるお前さん達が新鮮でね」
「え?片桐は妹と組んでるんじゃないのか?」
「まさか。妹も戦えなくはないが、傭兵として活動するには実力不足だ。それに私の故郷、タマガネでは二人一組での戦闘スタイルは殆どなくてな、そもパートナーなどという文化がない」
てっきり葵が床に伏しているから一人で戦っているのだと思っていたが、まさか最初から一人だったとは。
だが確かに思い返してみれば片桐の戦闘技術は一人での戦闘に特化して完成されている。もはや連携の必要などどこにもないのは俺の目にも明らかだった。
「俺もそんな風に強くなりたいもんだな」
「何を言う。お前さん達は個々での戦闘力は並みだが、二人一組での戦闘力ならば私に勝るとも劣らない。それは素晴らしい事だぞ」
「そうかい」
素っ気ない俺の返事に、片桐はやれやれといった風で言葉をつづけた。
「お前さんたちがどれだけ稀有な存在か、理解していない様だな。いいか?パートナーとはいえ所詮は別人同士、どれだけ連携を極めようと僅かなロスが出る、だがお前さんたちのそれは殆どロスがない」
「というと?」
「お前さん、よくやるだろ。特に掛け声も無しに姿勢を低くしてミリアの雷撃用に射線を通すあれだ。互いの信頼あってこそだが、それだけではそうはいかん」
「ああ、あれな。何となく感じるんだよ、ミリアが撃つなってタイミングが」
普段意識してやっている訳では無い。
だからこんな曖昧でふわっとした言葉になってしまうが、何故か来るタイミングがわかるし、実際その通りに雷撃が来るのだから山勘の類ではないのは明らかだ。
「私は、別に。あんたよく私の雷撃食らってるし、当たった所で死なないでしょ」
「お前…当てる気で撃ってたのかよ!」
「良いじゃない。なんでか知らないけどあんた避けるし。それが丁度いい連携攻撃にもなってるんだし」
確かにそうだが、コイツは当初の目的を忘れてはいまいか。
「ふっ。それもある意味信頼の形だな。必ず避けると信頼しているのだ」
「してないから!」
ヒステリックにミリアが叫んだのとほぼ同時に、馬車が急停止して俺たちは体制を崩しかけた。
「おわっと。おい、ミリア、お前が叫ぶから馬車が止まったじゃないか」
「関係ないわよ!」
俺とミリアがいつもの調子であるのに対し、見れば片桐だけは張り詰めた表情になっていた。
「二人とも、そこまでだ」
「敵だ!魔物が道に!!」
片桐の言葉にかぶせる様に鉱夫が叫んだ。
片桐がすぐさま飛び出し、俺とミリアも後に続く。
馬車の前に回るとそこには苔の様な色合いの肌をし、中学生程度の伸長の魔物が数匹居た。
「こいつは…ゴブリンか?」
「ふむ、よく知ってるな」
どうやら当たりらしい。
「ならば次にどうなるか、それもわかるか?」
「んなもん。戦いに決まってるだろ」
言い終わらぬ内に剣を抜く。
既に馬車は森に入っていたが、薄暗い森の中でさえ、俺の剣は虹色に輝いていた。
実戦でコイツを使うのは初めてだが、何日も特訓したおかげで既に手には馴染んでいる。
「ミリア、雷撃を俺の剣に。さっそくコイツの威力を試したい」
「しょうがいないわね。そのかしちゃんと受け止めなさいよ?」
「では私はお前さんたちの援護に回ろう。思う存分試すと良い」
片桐は俺の意図を酌んでくれたようで、俺より前に出て準備が整うまで足止めをしてくれるようだ。
近づく片桐を見てゴブリンたちは一斉に襲い掛かる。それと同じくしてミリアは詠唱を開始。
程なくして完成した呪文が発動し、俺めがけて雷撃が飛んでくる。
「アキト!」
「おう!」
しっかりと剣で雷撃を受け止め、雷の魔力を刀身に帯びさせる。
虹色に煌いていた刀身は、雷撃を受けて青白く輝き、ときたまスパークを散らす。
「すごい、これがアキトの……」
「片桐!!」
青く輝く剣を横に構え、片桐に声をかける。
ゴブリンどもを危なげなく捌いていた片桐は、声を受けて返事をするよりも早くその場から飛び退く。
片桐の退避を確認すると同時に剣を振り抜き、前方の空間を横薙ぎにする。
同時に解き放たれた雷の魔力は、前方一帯に広範囲の雷撃による斬撃を発生させた。
「ギッ!!」
「アギャ!!?」
ミリアの生み出した魔雷がどれほどの電圧と電力を持って居たのかは知らないが、目の前の光景は凄惨の一言に尽きた。
雷撃に体を飲み込まれたゴブリンは、体の別の場所から雷撃を放出し、また別のゴブリンへと雷を渡していく。
それが魔雷の力が完全に失われるまで続き、目の前には完全に黒焦げになったゴブリンの焼死体のみが残った。
「これは恐ろしい、うっかり巻き込まれでもしたら私でも助からんな」
その惨状をまじまじと見ていた片桐が思わずこぼす。
次いでミリアが悔しそうに叫んだ。
「なんで私の魔法より強力なのよ!もとはと言えば私の魔術でしょ!?おかしいじゃない!」
「知らねぇよ。この剣の触媒のおかげじゃないのかよ」
「何よそれ!これ終わったら隆を問い詰めてやるわ!」
ギャーギャーと喚くミリアを無視して、俺は馬車へと戻る。
そんな俺とミリアの様子を見て片桐もやれやれといった感じで肩をすくめて俺の後に続く。
残されたミリアもブツクサと言いながらも馬車へと戻る。
鉱夫はというと……あまりの出来事に理解が追い付いていないようだった。
「おーい、鉱夫のおじさん。戦闘終わったから移動していいぞ」
「お、おう。今動かす」
俺の言葉に鉱夫は我に返り、馬車は焼死体を避けながら移動を再開。
初の戦闘も難なくこなし、それからの道のりは何も起こる事はなく、平穏が続いた。
しかし、そうなればやる事はない。
俺達は自然と、会話をする事でその暇を紛らわした。
色々な事を話した。
俺の居た日本とはどういう地で、どんな人達が暮らしていたのか。
色々な事を聞いた。
主だったのは片桐の話。タマガネとはどういう地なのか。何故葵と二人だけなのか。
色々な事を知った。
ミリアは己の話は殆どせず、代わりにこの世界の事を色々と教えてくれた。
そんな話をしているうちに、俺達はついに目的の地に着いた。
馬車から降りると、緊張で青くなった鉱夫がすぐそこに立っていた。
「俺は一旦ここから離れさせてもらうぞ。あんたらが行った後、あの悪魔に出くわしたらたまらん」
「おいおい、俺達はここで置いてけぼりか?」
鉱夫の言う事も最もだが、さすがにそれはあんまりだ。
そもそも、ここで別れてしまってはどうして報酬を受け取る事ができようか。
「なら倒したら合図を送るわ。日が沈むまでに戻らなかったら帰っていいわ」
「合図って、どうするんだ?叫ぶのか?」
「なるほど、ミリア嬢が魔法で合図を上げるのだな」
「さすがねカタギリ。その通りよ」
「わかった、それで良い。ただし日が沈むまでに合図が確認できなかったら俺は帰るからな!」
若干震えた声でそう言い残すと、すごすごと鉱夫は馬車へと戻り、俺達の前から消えて行った。
「んで?探す所から始める訳だが、日が沈むまでに何とかなるのか?」
「そんなの簡単よ、あんたがどうにかするんだから」
何故俺が。
正直ミリアに言われてもピンと来ない。
こういう事は魔法の使えるミリアがどうにかする方が適任だと思うのだが。
「意味がわからん。なんで俺なんだ?」
「あんた、サイクロプスの巣を見事見付けたじゃない。なんだっけ、トラ……まあなんだか忘れたけど。あれで居場所がわかるでしょ?」
「ほう、明人はそんな特技を持って居るのか」
持ってねえよと言いたい所だが、過去できてしまった手前なかなかそうとは言い出せない。
我ながら見栄っ張りだが、まあどうにかするしかない。
幸い、鉱夫の話では今日襲撃に遭ったらしいから、その坑道を探し出せば痕跡はまだはっきり残っているはずだ。
「しょうがねえ、まずは坑道探すぞ」
「坑道?どうして?」
「鉱夫の仲間が襲われたんだろ。あまり気のりはしないが、襲撃現場から痕跡を辿る」
「なるほどな、確かに理に適っている」
「おら、サクサク探すぞ、時間は限られてるんだ」
とはいっても、坑道までは鉱夫達の足跡が残っているはずだから、それを辿れば迷う事無くたどり着ける。まずはその足跡を探す事からだ。
「これは、馬車の跡だな」
馬の蹄の跡が2頭分、そして車輪の跡が往復分、奥へと続いている。
俺達が降りたのは今この場所だから、当然俺達以外の誰かになる。
気がかりな事に、帰りの分の馬の足跡が行きに比べて感覚が広くなっている。
「これは恐らく、何かから逃げてたな。二人とも、この先だ」
「ほう、馬車の跡を追うのか?」
「ああ、そうだ。当たりならそこから鉱夫達の痕跡を追えるはずだ」
地面に残された馬車の跡を追うと、そう離れていない場所で往復分の馬車の跡が一つになっていた。
つまりここで馬車は停車し、鉱夫達を下したのだ。鉱夫達の物であれば、だが。
「む。5人分の足跡に、これは荷車か何かの跡か」
複数人分の足跡もすぐに発見できた。
荷車の跡は足跡よりも大分深く刻まれている事から、余程重い荷物を運んでいた事が伺える。
「二人とも、次はこれを追うぞ」
「中々手馴れているな。日本という国ではこんな事は日常茶飯事だったのか?」
「んな訳ないだろ。さっき言った通り平和そのもの、まったくもって退屈な毎日だったよ」
「でも地面が柔らかい土で良かったわね。しっかり整備された道だったら足跡なんて残らないわよ」
ミリアの言う事は正しいが、人に突然丸投げした奴が言うセリフではないだろう。
愚痴を心の中に留めながら足跡を追うと、程なくして岩肌が剥き出しの崖に突き当たる。
さすがにこの辺りの地面は岩が剥き出しで、足跡は残されていない。
「まいったな、足跡はここまでだ。こうなったら崖沿いに歩いて坑道を探すしかないな」
「ふむ、止むをえまい」
「まったく、役に立たないわね」
「あのな?ここまで追って来れたのは俺のおかげだろう?」
「冗談よ、あんたは良くやったわ」
「こいつ……」
一瞬イラッとするが、これがこいつなりの労い方なのだと自分を納得させて、怒りを鎮める。
ミリアが男だったら構わず顔面パンチの二十発は食らわせている所だが、さすがに女子相手にそれはまずいので堪えるより他はない。
「この臭いは……血だな」
先行していた片桐がふと足を止めて呟いた。
言われてみれば確かに錆びた鉄の様な臭いが漂っている気がする。
そう思いつつ片桐の横まで来た時、その臭いははっきり知覚できるレベルで鼻を刺激した。
「うっ……、すごい臭いだな……」
「一人二人じゃないわね。当たりよこれ」
こっちの世界に来てから幾度か戦いを潜り抜け、血の臭いにも慣れてきてはいたが、やはりつらい物がある。
「進むぞ」
片桐の言葉に俺とミリアは無言で頷く。
一歩進む毎に臭いは強さを増し、背筋は温度を失っていく。
これ以上臭い強くならないといった辺りでようやく坑道の入口が見えた。
「そういえば明人、人の死体は大丈夫か?平和な世界では見る事もなかったのでは?」
「生憎わずか二日目で人殺しなら経験済みだ」
「ほう、それはそれは」
坑道に入り、鉱夫達の遺体を目の当たりにした時、心配する片桐の言葉の意味がよくわかった。
剣で切り殺されたのとは訳が違う、獣の爪や牙で引き裂かれた残骸が辺り一面に散乱していた。
そう、残骸だ。そこには飛び散った肉片や臓器、原形を留めないかつて人だった肉の山が残されているのみ。
しかもその所為か、坑道内は血の臭いだけでなく、なんとも言い難い別の臭いも充満していた。
「うっ……」
最初こそあまりの衝撃にそこまで感じなかったが、突然吐き気が襲ってきた。
思わず手で口元を抑えて遺体の山から目を反らすと、その先でミリアもまた同じく辛そうに口元を抑えていた。
「傭兵に成り立てのお前さん達には辛かろう。ここは私に任せて、外で休むと良い」
「悪い……そうさせて貰う」
「ごめんなさい、私も……任せるわ」
俺とミリアは坑道の外に出ると言葉もなくただ茫然としているだけだった。
ここも勿論血の臭いは漂ってくるのだが、中に居るよりは全然ましだ。
しばし休むと徐々に楽になり、少し会話する余裕ができ、やや離れた所で座り込んでいるミリアに話しかける。
「意外だな、お前は平気なもんだと思ってた」
「平気な訳ないじゃない。人の死体なのよ、それも……あんな……」
「そうだな、すまん」
俺はミリアを……、この世界の人間を勘違いしていたかもしれない。
確かに人死になど日常茶飯事かもしれない。かといってその犠牲を気にもしない訳ではないのだ。
今坑道に一人残った片桐でさえ、慣れているというだけで精神的に辛いはずだ。
そんな当たり前の事に気付けなかった嫌悪感、ミリア達を野蛮人の様に見ていた罪悪感で、次の言葉が出てこなかった。
会話がないまま、どれだけ経ったか。
戻って来た片桐は、俺とミリアの間に流れる空気を感じたのか、一瞬表情が曇った様にも見えたが、すぐさま話を切り出した。
「中の死体は鉱夫の仲間達でまず間違いはない。肝心の魔物だが、坑道の奥へ進んだ様だ」
「奥に?」
坑道が魔物の巣だという事だろうか。
「ああ。だが奥といってもこの坑道、トンネルになっているようで、抜けると山の中腹に出る」
「つまり山の上に居る訳か」
「そうなるな」
となると、また坑道に戻らなければならない。
外回りでも行けるだろうが、道を探す時間も惜しい。
「ミリア、行けるか?無理そうならここで待っていても――」
「馬鹿言わないで。私も行くわ」
「そうか、無理するなよ」
いつもと同じ強気な発言だが、普段よりトゲがなく感じたのは気のせいだろうか。
気にした所でミリアはそんな事ないと突っぱねるのはわかっているので先を急ぐ。
先ほどの遺体の山を通り抜け、奥へ進む。
しばらく進むと奥に光が見えてきた。どうやら本当に外に続いているようだ。
「出た瞬間鉢合わせたらどうするよ」
「それは探す手間が省けるという物だ」
スッと得物に手を伸ばす片桐。
妹のため、何が何でも討ち倒すという気合が見える。
ミリアの方も、新たに得た友人の為に発起しているのが感じられる。
これは俺も負けてはいられない。
「くっ」
薄暗い坑道を進んでいた事もあって、山の中腹に出た瞬間の眩しさに一瞬目がくらむ。
うっそうとした森だった麓と違い、中腹は日光を遮る物がなく、一際明るかった。
そんな中で、足跡を探すのは容易だった。
足元を見れば、生々しい血の赤で描かれた足跡が。
「魔物の足跡だな、これを追えば……」
「ああ、私達の獲物が居る」
「そうね、葵の為に、なんとしても倒さないと」
ついに決戦が近い、俺達3人の間でそんな空気が流れだす。
片桐は刀の柄に手を掛け、ミリアは杖を握りしめ、俺は抜剣して各々いつ戦闘が始まっても問題ない様に準備を整える。
中腹は岩場が多く、高低差の多いフィールドになっていた。
慎重に、不意だけは突かれない様に、足跡を追っていく。
坑道からまだそんなに離れていない場所で、上の方に気配を感じて三人一斉に見上げた。
そこには俺達の標的、三つ目の黒獣が堂々たる出で立ちでこちらを見下していた。
「散れ!先手を取られるな!」
片桐の合図で俺と片桐は前へ、ミリアは後ろに下がって交戦形態へ移行。
三つ目の黒獣、たしかゲーラだったか、そいつはピクリとも動かない。
「片桐、どうする!?」
「降りて来ない限り私達は手を出せん。ミリア嬢、魔法で炙り出すんだ」
「わかったわ!」
ミリアが詠唱を始めると、それを待っていたと言わんばかりにゲーラはミリア目掛けて飛びかかる。
「ミリア!!」
「っ!?」
詠唱に集中していた事もあって、完全に不意を突かれたミリアは反応が遅れている。
このままでは避けられない。あの巨体で押し潰されれば致命傷足り得る。
脳裏に坑道の中で果てていた鉱夫達の姿が過る。
その時、考えるよりも早く体が動いた。
ミリアの元にすさまじい速さで駆け寄り、その身を抱えて横に飛び、ゲーラの攻撃をやり過ごす。
着地の衝撃だけで俺とミリアは倒れそうになるが、何とか堪えて距離をとる。
「大丈夫かミリア?」
「え、ええ。ありがとう」
ある程度離れた位置でミリアを降ろし、その間にゲーラと攻防を繰り広げている片桐の元へと向かう。
さすがは伝説の傭兵というだけあり、未知の敵であるゲーラとも互角に渡り合うその様に、手を出すべきかどうか悩まされる。
だが、互角に見えたのは俺の目の錯覚だったと思い知らされる。
紙一重で避けていた片桐に、浅い一撃だったがゲーラの左フックが当たり、弾き飛ばされた。
戦闘不能になる程ではない様だが、体勢を激しく崩した片桐はまさにピンチだ。
「やらせねえ!」
片桐をカバーする為にも、一気にゲーラに接近して剣を振り払う。
右腕で剣は防がれたが、幸いにもフランベルジュになった事が功を無し、ゲーラの右腕に大量出血を引き起こした。
「怯んだ!今の内に!」
「わかってるわよ!」
言葉と共に背後から雷撃が飛来する。
そこらの魔物であればこれで討ち取れるパターンだったが、こいつはそこまで甘くなかった様だ。
「避けた!?」
「馬鹿!動きを止めるな明人!」
「!?」
跳躍で雷撃を避けたゲーラだが、岩を蹴ってジャンプの軌道を変え、こちらに飛びかかってくる。
爪の一撃を何とか剣の腹で受け流すが、力の大部分を受け流しきれずに尻餅をついてしまう。
ゲーラの追撃は続き、俺の眼前に立ち、爪を振り下ろさんとしている。
「させるかよ!」
手元に転がっていた石を拾い上げてゲーラの目を目掛けて投げつける。
ナイスコントロールで、見事左の目に石を貰ったゲーラは大きく仰け反る。
その時、ゲーラの背後から片桐が刀による二連撃を叩き込み、ゲーラの背に血の霧が噴き出した。
次いでミリアの雷撃がゲーラの頭上から落ち、見事に脳天に吸い込まれる。
雷撃と背中の刀傷で怯んでいる隙に立ち上がり、バックステップと同時に横薙ぎの一撃を叩き込む。
その一撃はゲーラの左腕を切り落とし、連撃を叩き込まれ片腕を失ったゲーラは大きく叫ぶ。
その時、ゲーラの額にある三つ目の目が赤く光り、それと同時に激しい頭の痛みで俺達三人はその場に崩れた。
「ぐっ……なんだってんだ!?」
「なによこれ、頭が……」
「ぬぅ……これも、呪いの一種か」
それぞれ得物を杖代わりに何とか辛うじて立ってはいるが、とても戦闘続行はできない。
今襲われれば全滅は必至だったが、ゲーラの方も限界だった様で、襲う事はせずに一目散にこの場から離脱していった。
「逃げられたわ」
「クソ、スタングレネードみたいな真似しやがって」
よろよろと立ち上がる三人。
ゲーラがこの場から去った瞬間に、頭の痛みは嘘の様に消えた。
「厄介だな、あの能力があっては何度でも逃げられるぞ」
片桐の言う事ももっともだ。
対策を打たねばトドメを刺すことは難しいだろう。
「あの三つ目、光ってたな。あれを潰せば何とかなるんじゃないのか」
「ふむ、確かにあり得ない話ではないな」
「でもどうやって潰すのよ?」
俺と片桐は同時に言葉に詰まる。
俺達の中で遠距離攻撃ができるのはミリアだけだが、ミリアの場合、雷撃魔法による遠距離攻撃故に物理的な破壊力は伴わず、目潰しに有効であるとは言い難い。
「そういやあんた、やけにコントロール良かったわね」
「あ?あの石か?」
「それでどうにかならないの?」
ならなくは無いかもしれないが、当たる確率の方が低いだろう。
「お前は俺の右肩に全てを賭けると?」
「そう言われるとなんか嫌ね」
自分で言い出しておいてそれはないだろう。
「で、結局どうするんだ?」
「動きさえ止める事が出来れば狙う事も出来ようが……」
「そういえば、あんたがさっき言ってたスタングレネードって何よ?」
先ほど呟いた俺の言葉にミリアが興味を持った様で、今更になって問い質してきた。
正直俺自身、ミリオタではないので詳しい説明までは出来ないが、軽く説明だけする事にした。
「そうだな、音と光を発する爆発物って所だな。それを相手に投げ付けて、音で聴覚を奪い、光で視覚を奪う。そうなれば相手は動きを……」
そこまで言った所でハッと気づいた。
音は無理でも閃光を発する事は出来る。そう、こちらもスタングレネードの様な芸当は可能だ。
「そうだ、それだよミリア!お前の魔法は雷だったな!閃光を発する事は出来るか!?」
「無理よ」
「くっ」
即答された。
名案だと思ったが、できないとなれば意味がない。
「いや待て、明人の剣に雷を宿し、それから如何にかすれば良いのではないか?」
「何?」
「ミリア嬢が言いたいのは、雷を閃光のみに用いる呪文が無いという事だろう。呪文に縛られない明人の剣ならばあるいは可能かもしれん」
「なるほど」
つまるところ、俺次第と言う訳だ。
「だが、試してみない事には何も」
「なら試せば良い。奴もあの傷だ、そう遠くには逃げれまい」
「だそうだ、良いかミリア?」
「それしか手はないでしょ」
珍しくゴネもせずミリアが協力する事になり、俺はさっそく剣を構えた。
「さあ、来いミリア!」
「行くわよ!loki elm baris us!」
ミリアの呪文で魔雷が俺目掛けて放たれる。
焦らずに剣でその雷を受け、剣に雷の力を宿らせた。
「何度見ても、圧倒されるわね、その剣」
「ああ、俺自身もなんか、すげえってなるな」
「何それ馬鹿っぽい」
余計なお世話だ。
「お二人さん、盛り上がっている所すまないが、時間がない。さっそく試験に移ってくれ」
「ああ、すまん」
イメージとしては、雷を発した後、それが拡散して強烈な閃光になればいい。
贅沢を言えばついでに爆音も轟けば文句無しだが。
「二人とも、目と耳は塞いどけ、万が一成功したらやばいぞ」
俺の言葉に無言で二人は目を閉じ耳を抑える。
その姿を確認した後、俺は剣を構えなおし、魔雷を纏ったままの剣で虚空に突きを繰り出す。
思惑通り雷は虚空へ矢の如く放たれた。
次いで空中で爆散、激しい閃光と共に雷が落ちた時の様な轟音を響かせた。
「うっ…くっ……、俺も耳塞げばよかった……」
反射的に目は伏せた物の、耳だけは間に合わず、聴力を持っていかれてしまった。
まさか一発で成功するとは思ってもみなかった。
「―――――――――――?」
ミリアが何か言っているが、耳が麻痺していてよく聞き取れない。
正直自分が喋れているかすらわからないが、取りあえず、現状を説明するべく努力だけはする。
「爆音で耳をやられたんだ、何言ってるか聞こえない」
「――、―――」
ミリアは明らかに呆れている。
が、次の瞬間杖を構えたと思うと何やら呟いている。
「―――――――――――――――」
ミリアの杖が光り、俺の体をその光が包んだ所で耳鳴りが止み、周りの音が聞こえるようになった。
「あれ、聞こえる?まさか魔法か?」
「そうよ馬鹿、治してあげたんだから感謝しなさい。それで?成功したのね?」
「ああ、ばっちりだ。俺自身が体感したから間違いない」
「ならばこれで何とかなるな」
「ああ、俺が今のを使うから、片桐、その隙に目を頼む」
「任せておけ」
「なら決まりね、さっさと追うわよ」
俺達三人は、ゲーラの呪眼を封じる手立てを得た事でゲーラの追撃に移行。
はっきりと残された血痕を追っていき、ゲーラを追い詰める。
道中でミリアにまた剣へ魔雷の付与をしてもらい、準備は整っている。
後は見つけるだけだ。
血痕は山頂方向に続いており、ある程度登った所で洞窟の中へと続いていた。
洞窟の中は骨がいくつか散乱しており、恐らくゲーラの巣だ。
「いよいよ、ご対面だな」
「今度こそ仕留めるぞ」
「当然よ」
三人で意気込み、巣の中を進んでいく。
一番奥、広めの空間の真ん中にゲーラは居た。
どこぞの狩猟ゲーの様に、喪失した左腕を抱え込むようにして寝込んでいたが、俺達の存在を感知したのか、すぐさま飛び起きて戦闘態勢へと移った。
「今だ明人!やれ!」
「オーケー!目と耳塞いどけよ!フラッシュスラスト!」
今度は俺も目は閉じる。
耳は事前に用意していた耳栓を、放つ直前に着用して保護する。
瞼の上からでもわかる光の後、目を開けてゲーラを見やる。
思惑通り、目を抑えてのたうち回っている。
「行けえ!片桐ぃッ!!」
「おうよ!」
風の如き疾走で片桐はゲーラとの距離を詰め、未だ聴覚と視覚を失っているのであろうゲーラの眉間目掛けて刀を突き立てた。
離れた位置でも聞き取れる、湿った何かが潰れた音に、俺は目潰しが成功したと確信した。
目を潰した片桐は、刀を引き抜きゲーラとの距離を開けた。
「作戦は成功だな、後は一気に畳みかけるぞ!」
「わかったわ!」
「無論!」
そこからは、到底戦闘とは呼べない物だった。
目と耳を封じられ、その上に頼みの綱の呪眼も潰されたゲーラはもはや応戦する事もままならない。
がむしゃらに腕を振り回すが、その腕も右腕しかないのだから避けるのは容易だった。
すでに戦闘は先ほどの山の中腹で終了していた。もはや、これは後処理と呼ぶのが最も相応しいだろう。
満足な応戦もできぬゲーラを、俺達三人は容赦なく攻撃していく。
俺と片桐の斬撃に黒かった全身を真っ赤に染め、ミリアの雷撃を浴びて体から黒煙を吹く。
そんな状態で長く持つ訳もなく、程なくしてゲーラは斃れた。
俺達は目的を達したのだ。
「終わりだな」
「ああ、ありがとう。これできっと葵も……」
「ええ、きっと良くなるわ」
片桐の顔を見ると、少し涙ぐんでいる様にも見えた。
まあ、無理もないだろう。謎の病で弱るばかりだった妹を、これで救えたのだから。
ミリアはというと、友人を救えた事への達成感が、表情に満ち溢れていた。
よかったなと声を掛けたら怒られたが、内心嬉しいに違いない。
「さて、日が沈む前に合図を出すんだろ?ミリア、頼むぞ」
「ああ、そうだったわね。空に向かって雷撃を飛ばすわ」
短い詠唱の後、ミリアから放たれた雷の矢が空へ登っていく。
普通、空から地に落ちる雷が、空へ登っていく様は斬新で、美しかった。
合図を出した後、俺達は下山し、鉱夫と別れた場所へと戻った。
その場所についたとき、先に着いていた鉱夫が歓迎してくれた。
「いやあ、さすがカタギリ!あの悪魔を倒しちまうなんてさすがとしか言いようがない!」
が、見ての通り片桐だけべた褒めで、俺とミリアには何も無し。
どこの世も、英雄的人物に評価は集中するものだと考えていると、片桐に背中を軽く叩かれた。
「そんな事はない、今回の討伐はこの明人とミリア嬢が居なければ成しえなかった。それほど強敵だったよ、あの魔物は」
片桐なりに気を遣わせてくれたのだろう。
その訂正に鉱夫は一瞬怪訝な顔をしたが、片桐のいう事だからと信じたようだ。
「なるほどなるほど、見ればあんたらも随分ボロボロだ、それは頑張ってくれたんだろう?」
「ああ、まあな」
ミリアはこういった事に慣れていないのか、そそくさと馬車に入ってしまった。
俺も正直、こういうのは苦手だし、別に感謝されたい訳でもない。
「そんな顔をするな、労いに応えてやるのも私達の仕事の内だ」
まるで心を読んだかの様な片桐の一言に一瞬どきりとさせられたが、素直に受け入れ鉱夫の求めに応じて握手をすると、二人とも満足げな表情になった。
報酬の受け取りなんかは街でという話になり、俺達は帰路に就く。
帰りの馬車の時間は、それぞれ疲労も溜まって居た事もあり、居眠りや、瞑想などで会話もなく過ぎた。
俺はというと、さすがに疲労が溜まっていたのですっかり寝落ちしていた。
目が覚めた頃には、日は沈み、街の傍まで来ていた。
街に着いて馬車を降りると、佐々木と葵の出迎えが待っていた。
外に立つ葵を見て、やり遂げたのだと改めて実感する。
大変な一日だったが、こんな事も悪くはない。元気になった葵の笑顔を見ていると、そう思えた。




