普遍の崩壊
自分初のプロットを造ったのです。
意外に疲れるね
今まで何回、自分なんて消えていなくなってしまえばいいと思ったことだろう。
原因は僕にこの世界の景色を教えてくれる両目。
なんで僕の目は赤いのかとお母さんに聞いてみたことがあったけど、お母さんは目を逸らしながら声音は本当に申し訳なさそうに「気にしないで」と一言、言っただけだった。
たがらといってお母さんを恨むような気持ちにはなれなかった。
だってお母さんにも分からないから。
そしてその目のせいで僕はいじめを受けていた。
今だってほら、学校のクラスメイトから僕に向けてクスクスと笑い声が聞こえる。
先生が朝のチャイムと同時にドアから入ってきてみんなに席へ着けと促す。
「おっし、今日も欠席者はいないな」
先生が出欠を取って最初の連絡に移ろうとした時、後ろの席に座っているクラスメイトが手を上げながら言った。
「せんせぇ! 欠席してる人はいないけど、人間じゃない子がいまーす!」
その声とともに僕以外のクラスメイトが笑い出す。
その笑い声はあっという間に教室を覆い尽くす。
けどその笑い声は先生の怒鳴り声にかき消され、教室は静まりかえった。
「お前ら! 朝から弱い者いじめとは何事かっ‼︎」
そのあとは先生によるお説教が始まり、一時間目の授業が終わってしまった。
僕も最初は抵抗したけど、僕の抵抗がそこらへんに転がっている石ころほどの価値もないことに気付いてからはなされるがままに抵抗することもなくなった。
いつかの偉人さんが残した言葉に『努力は人を裏切らない』とあるけれど、あれはきっと嘘だ。
その偉人さんがした努力は報われる、実る努力だっただけで、報われない、実らない努力もある。
僕の努力がいい例。
ああ、早く授業終わってくれないかな。
けれど、僕の心とは裏腹に、僕がそう強く願うほどに過ぎる時間が遅く感じた。
机にうなだれて、時間を潰しているところに頭上からの冷たい液体。
後ろで起きる笑い声、怒りが湧き出てきた。
でもすぐにその怒りは心の最深部へと戻っていった。
怒って何が変わる。
僕はイジメを受けたせいでなぜか思考や態度が少し冷たくなってしまった。
でもこれはこれで良い。いつでも冷静をある程度は保てるからだ。
そして、やっとの放課後。
そそくさと帰る準備を済ませ、家路へと着いた。
季節が冬なので、まだ五時だというのに外は薄暗くなっている。今日の寒さは肌を突き刺すような寒さで防寒具を着ていないと凍えてしまう。
最近、ここ神宮市では残虐な殺人事件が起きている。被害者数は五人、どれも肢体が引き裂かれ死体を見慣れた検死官でさえ吐き気がしたらしい。
それに伴い学校では全ての部活動を停止させ、なるべく早く家に帰るよう言って対策ではないにしろ注意を呼びかけている。
かくいう僕も家に向かっているけど、たった今、そうほんと偶々不審者を見つけた。
格好は全身真っ黒で顔を隠すかのようにフードを深く被って、日向を避けて歩いているこれを怪しいと思わない人はいないと思う。
というわけで尾行しよう。
ほら言うじゃないか。
「あなたはなんで山に登るの?」
「そこに山があるから」
という有名かは知らないけどそんな言葉がね。
だから僕も
「なんで君は不審者を尾行するの?」
「そのに不審者がいるからさ」
と答えたい。まあ聞かれることなんて多分ないけどね。
ああ、でもどうしよう。もしこの怪しい人があの連続殺人犯だったら危ないよな。
まあ成り行きに任せたら何とかなるかな。
黒フードの男にバレないように後ろからついて行く。男はゆらゆらと足どりが不安定。
ますます怪しく見えてくる。
あ、路地に入っていった。
たしかあの道の先はもうすぐ取り壊される予定の廃ビルがあるはず。路地だと何かと危ないし、走って先回りしようか。
そして路地の出口に先回りするために走った。
学校ではあまりはしゃぐ方ではないから運動もそこまで得意じゃないけど僕的には今日はよく足が動くな〜と思った。
「ふう」
路地の出口に着いて物陰に隠れながら不審者が出てくるのを待つ。
…………あれ?全然出てこない。もしかして僕が先回りしている間に行っちゃったとか?いやいやそんなはずはない。
路地の長さは五十メートルほど。僕がまだ十二歳とはいえ全力疾走したから先に出られるなんて事はないはず。
って、あっ! 出てきた。……歩くの遅いな。
不審者は路地から出てくるとノソノソ歩いて廃ビルの方へと向かっていった。
尾行を続けて十分くらいが経った。
さすがに身体が冷えてくる。けどまあ防寒具を着ているからまだ我慢はできる。
さっきは寒さで帰ってしまおうかと思ったけど、この寒さより好奇心が僕の中で勝ったから尾行を続けることにした。
「あ……廃ビルに入っていった」
不審者は周りを気にしながら廃ビルへと入っていった。
さて、ここで打ち切って帰るかそれともまだ続けるか。どうしようか。
「キャアァァァァ‼︎」
突然ビルから悲鳴が聞こえてきた。
その悲鳴は恐怖の色に染まっている。
僕はさっきの迷いをどこかへ追いやり、気付けば夢中で走っていた。
廃ビルの中へと入り、階段を駆け上がる。
僕はさっきの全力疾走で、もう走ることはしばらくないと思っていたのに今のダッシュでまた体力を使ってしまった。
そして、その悲鳴が聞こえた階に着いて周りを見ると不審者以外の人影は見当たらない。
地面を見ても肉片や臓物が飛び散った様子もなかった。
だったらあの悲鳴は一体……。
「やあ少年。ようやく来てくれたネ」
前触れもなくいきなり不審者が僕に話しかけてきた。
その声に聞き覚えがあった。
さっきの女の人の悲鳴と似ていた。
「さっきの悲鳴は……?」
「ふふ、君がビルの入り口で渋っていたのが見えたから私が食べてきた女の声を真似してここに来てもらったのサ。そういえばまだ声音が女の……ままだったな。んぁーあ。よし地声に戻ったカ」
不審者は僕に背中を向けながら話した。
……信じなれない、さっきまで不審者の声は女の人だったのに途中から男の人の声になった。
あと私が食べてきた女? 何を言ってるんだ。
人が人を食べるなんて聞いたことないぞ。
不審者は振り向いて僕を見定める。
「その顔は人が人を食べるなんてあり得ないと言いたげな顔だネ。まあ人間同士の共食いは俺も見たことはないな。あと君が思っているのは人間同士の話だ。私たち化け物から見たらこんなの普通だヨ。所詮君たち人間は僕たち化け物の餌でしかないんだかラ」
………………は? 化け物? 何それ? この人大丈夫なの?
僕はその不審者の異常に気付いた。
両腕が異常に長い。人間のそれを完全に逸脱してる。
不審者は狂気的に愉悦的に笑みをこぼしている。
なんで笑っているのか僕には全く分からない。
コレはやばい。早く逃げないと殺されると僕の第六感がそう告げている。
しかし、逃げることが出来ない。あまりの驚きと恐怖に足がすくんで動かない。
「んふぅ。そろそろ人の皮を被るのが面倒くなってきたナ。脱ぐカ。お腹も減ってきたから人のままだと食べにくいからナー」
そう言って不審者は僕の目の前で姿形を変えた。
人皮が伸びて破れる音、骨格を変えるために無理矢理骨の位置を変える、バキっゴキュ! という音。
男の全身骨格が急激変わってゆく。僕の頭はこの状況が理解出来ずショート寸前。
けどソレの変化は終わらない。
背骨が隆起し、顔面はまるで犬のよう。
皮膚からは深い体毛が生えている。
「グルル……グルァ‼︎」
ソレはさっきまで人の形を捨て完全に化け物になっている。
「あ、ああ……」
僕は後悔した。なんで尾行なんてしたんだろうと。
そして一つの事を理解してしまった。
それは僕がこの場で殺される事、僕が明日のニュースに乗るんだろうな。惨殺されたって。
「グルルゥ。恐怖で身体が動かないのか。ふん所詮は人間か。今から食われる事を理解した顔だ。やはり人間は弱者。おとなしく食われろ」
ソレが僕を食らうために近付いてくる。
逃げたいのに、食べられたくないのに怖くて身体が動いてくれない。
声を上げて助けを呼びたいのに声も出ない。
死にたくないのに。
僕は何も出来ない
僕の人生はここで終わるんだ。
まだ生きていたいけど、僕には何も出来ない。
もし僕に力があれば別だったけど。
そして、化け物が僕を喰らおうとする。
僕は目を瞑って待った。
しかし喰われる寸前のところで僕の後ろから誰かの声がした。
「おいおい、もう諦めるのか少年?」
若い男の人の声。
僕に優しく語りかける。
「まだ少年は若いんだからどうにかこの状況を打開できるように工夫したらどうなんだ?まあ、無理だなっ。すまん忘れてくれ」
なんだこの人はと気になって首を後ろに動かす。
……あれ? 首が動いた。まあ首が動くのは当たり前で動かない方がおかしいんだけど、さっきまでは恐怖で動かなかったのに……なんで?
後ろを向くと男がいた。
短い逆立った黒髪に口に咥えてるタバコ。
顔は兄貴肌むんむんのイケメン。
赤と青のカラーリングが施されたロングジャケットを着ている。
「誰だあんたは」
化け物が男に問う。
僕も知りたいですと男に目線を送る。
「今から死ぬやつに名乗るなんてやだね」
とあっけらかんに質問を一蹴。
「だが少年には答えてやろう。俺は六王機関所属の隊員さ。まあ簡単に言うと、少年を助けにきたお兄さんって思えばいい」
男は僕に笑顔で答えてくれた。
なんとなくこの人の顔を見ると安心出来た。
そしていつの間にか恐怖の気持ちも薄らいでいた。
でもまあ、六王機関とかこの目の前にいる化け物は理解出来ないけどね。
化け物は六王機関というフレーズを聞いて、一気に男の人へと襲いかかった。
「グルァ‼︎」
男の人の手には何もない。
唯一何かあるとしたら首から下げてる銀のロザリオ程度。
男の人は化け物を回し蹴りで吹き飛ばす。
男は僕を部屋の隅へ行けと言うと化け物へと向き直る。
僕は言われた通りに部屋の隅へと隠れる。
目の前で起こってることは理解し難いけど分かるのはこの人が僕を救ってくれていること。
「おいシズハ、聞こえてるか?」
突然男が喋り出した。
「えっとだな。警戒パト中に化け物と遭遇、ならびに少年を保護。……はっ? 名前? おい少年! 少年の名前はなんだ! フルネームでお願いな!」
どうやら誰かと話しているらしい、僕の名前なんて聞いてどうするんだろ?
「僕は伊庭! 伊庭当麻って名前!」
そう名乗ると男は目を見開いて僕を見る。
なんか変なこと言ったかな?
「ああ、ありがとう。んとだなシズハ少年の名前は伊庭当麻だ。……ああそうだ。あの人の息子さんだ。まあそんなことより今は目の前の狼男だ。心象武具を使うぞ、顕現率は?九十八パーセント? ならいいな。つうわけで通信切るぞ。あ、なんかいいギャグ閃いたかも! ってあいつ切りやがったな!」
と男は僕の前で一人喋っている。
なんか変な人だ。
「グルァ‼︎ 貴様よくも邪魔してくれたな‼︎」
化け物はやっと目を覚ましたようで色々吠えている。
男はポケットから白で真ん中に黄色のラインが入った棒状の物を取り出した。
「心象武具発動」
そう男が呟くと白い棒状のような物が光り出して機械音で喋った。
『発動コール認証、顕現率……九十八パーセント。問題無し。使用者声帯認証から雨川惇弥と判断。心象武具顕現します』
無機質な機械音が部屋に響く。
輝きが止むと男の右手には一振りの剣が握られていた。
第一印象は焔。猛々しく燃え上がる焔。
形状は焔を縦長に伸ばしたような剣。
燃えるような紅蓮の刃は触れただけで僕の指が切れそうだった。
「狼男さんよぉ。運が悪かったな。俺は強いぜ?あと少年今起こってる事を頭のメモリに焼き付けておけ、これが世界の真実だってな!」
言ってる意味が全く理解出来ないんだけど……。
けど目の前で起きている事は全て現実。
僕の知らない世界がそこにはあった。
男は目下狼男と交戦中。僕はそれを見ている。そして見る限りでは男が圧倒的に有利。
壁を使って蹴ったり、狼男の攻撃を全て避けたり余裕な顔で皮を切ったりと随分と余裕なご様子。
僕はこんなに人間って動けたっけ? と思った。
うん、これを見てそう思わない方がおかしいと思う。
男は息切れ一つなく、対して狼男は微妙に息切れをしている。
普通逆だよねと心の中でツッコミを入れた。
「これで終いだ」
そう言うと男はさらに剣速を上げていき、僕が気付いた時にはもう絶命していた。
「解除」
『解除コール認証」
剣が消えてまた白い棒に戻った。
男は僕の前に来てこう言った。
「大丈夫か?」
にこやかに笑う男。そして僕に手を差し伸べてくれた。
僕もこんな風になりたいな。
不定期更新です。
でも一週間以内には上げたいです