不思議な男の子
-Rio-
男子寮と女子寮は反対方向だ。
校門前で蓮くんと別れ、私は結衣ちゃんと2人で帰路についた。
「そういえば、何サークルにするか決めないとね。部長さん」
「・・・私が、部長?」
「何を今更。発案は莉桜なんでしょ?」
「・・・そうだけど、でも」
「異論は認めないよ。大丈夫、部長っていってもそんな大きな肩書きじゃないんだから、ね」
「結衣ちゃん、それ横暴」
「あーあー聞こえない聞こえなーい」
「・・・・・・はぁ」
私は溜め息をつく。
結衣ちゃんのこういう強引なところは、出会ったときから何も変わっていない。
それでも憎めないのは、ひとえに彼女の人望だと思う。
私にとって、結衣ちゃんのその性格は、羨ましくもあり、妬ましくもあった。
しばらく歩くと、小学生たちが遊ぶような小さな公園が見えた。
「ねえ莉桜。まだ門限まで時間、ある?」
「えっと・・・あと30分くらいなら」
「それじゃあ、ちょっと公園に寄っていこ?」
結衣ちゃんはブランコに座った。
私もその隣のブランコに座る。
「久しぶりだよね。こうして2人で話すのって」
「・・・そうだね」
蓮くんが来てからは、常に3人一緒だったから、こうして2人だけで話すのは2週間ぶりくらいだ。
「私ね、1年の時クラス委員やってたから、最初は義務みたいな感じで蓮くんに接してたんだ」
「・・・そうなの?」
「うん。・・・ねえ莉桜、初めて屋上で話た時に言ったこと、覚えてる?」
「・・・うん」
今でもはっきりと覚えている。だって、私もそうだったから。
『私は友達を作れない』
この人は、私と似ている、けれど似ていない。
あの時の私は、結衣ちゃんにそう感じたんだ。
「莉桜は、そんな私を友達にさせた。そして、蓮くんもまた、私を友達にさせた」
「・・・私も、2人とは自然に友達になれた」
今、結衣ちゃんも私と同じことを考えてる。
さっきの言葉は、何も結衣ちゃんだけの言葉じゃない。
私もあの時、全く同じ言葉を結衣ちゃんに言ったのだから。
「ねえ、莉桜。蓮くんって、一体どういう人なんだろうね?」
「・・・」
「簡単に私を友達にさせて、簡単に莉桜が友達になれた。すっごく不思議だと思わない?」
お互いに同じ疑問を持っていて、だけどお互いにそれに対する明確な答えを持っていなかった。
だけど・・・それでも私には、1つだけ確かな気持ちがあった。
―――私は、2人が大好き。
恋とか、そういうのじゃない。ただ純粋に、結衣ちゃんと蓮くんのことが好きになっていた。
だって今まで、こんなに嬉しい気持ちになったことなんて、一度もなかったのだから。
だから―――
「結衣ちゃん」
「なに?」
私は笑顔で言った。
「これからは、楽しいこと、いっぱいしようね・・・3人で」
「・・・もちろん!」
私はきっと変わっていける
今はまだ無理かもしれないけど
結衣ちゃんや蓮くんと一緒なら、きっと―――
ここで、しぇあメモ!のプロローグ部分は終了です。次話からは莉桜を焦点に当てた第一章に入っていきます。