さもんないと
河川敷で正座させられるファイサルとククル。
恐らくこれは「査問」、「査問夜」。いや、夜ではないが。
ファイサルの罪状は確定的に明らか。
しかしククルはなぜ?
いや、それより、まず今回の戦争の協力者たちがモノ申したいようだ。
「ファイサル殿! 鉄血宰相ガラン・ジャイスの後を継いで下され!」
飛んでもない事を言い出した。
ファイサルは即答する。
「ならん! 俺はこの拳で父に頼らずアビーを食わせると決めた! 邪魔はさせん!」
爆弾プロポーズ。
いちゃつくな、馬鹿者!
だが男達は真剣そのものだ。
「『買い占め』が横行しております。それ故の『個数制限』。このままではブラックサンダーを食べれなくなりますぞ」
「おのれ! 『買い占め屋』! 許さん!」
ファイサルは天にこぶしを突き上げた。
アビーが彼に寄り添い、男たちが円陣を組む。
「全ての買い占め屋を消す! 取り戻せ! 自由を! ブラックサンダーを腹いっぱい食える自由を! 告げる! 俺達は『黒龍の一族』!! こんな下らない戦いをしたくない!」
仕掛人アビーは大歓喜!
彼ら全員が右拳を天に!
黒龍の一族誕生!
それは買い占め屋、最大の誤算となるのである!
そして最後の審判が始まる。
ククルは自分の罪状が分からない。ピンと思い当たらない。
だが当の姉ミハルは怒っている。
「さて問い詰めようか。ククル。女の子の好きなものってなんだ」
にっこり微笑むミハル。
目が、全く笑っていない。
「ヒント。今回のブラックサンダー戦争と少し関係あるなぁ。あんたは私の重大な秘密を知ってしまったのだぞ」
張りついた微笑みは変わらない。
怖すぎだ。姉の笑顔が怖すぎて震える!
「秘密……、年齢!? いやそんなの僕の三つ上じゃん。知らないほうがおかしい、うん数字!?」
「少し思い当たったようだね。偶然お風呂でバッティング。あんたは本能で下を向いた。正解。けれど、私は何に乗っていたでしょう」
「体重計!!」
瞬間、この世界の時間が止まった。
ククルの背中に冷たいものが這う。
「その数字は暗証番号よりも重大な秘密!!」
罪悪感がククルの身体を焼いていく。
ああここで終わりかと観念した刹那のことだった。
「はい、チョコレート。手作りの。何で元旦なの? 訳分かんない。事情は知ってるけど。女の子は甘党! 全員その数字と闘ってるんだ。故意じゃないから今回は許す。あー下らない」
ククルは己の姉の有難さに感謝した。
彼女の力作を頬張りながら、幸せそうだ。
それが緊張の糸を切ってしまった。
「家族のチョコはノーカンなんだよねぇ……」
「ああん?」
そこに般若がいた。
姉だったモノは、獰猛な勢いで馬乗りなると、腕ひしぎ十字固めで、ギリギリと関節を絞っていく。
「ギブ! ギブ! ギブアップ! ギブミーチョコレート!」
河川敷に轟く勇者のようなククルの咆哮。
遠のく意識の中で、彼は己の失言を後悔するのであった。




