桜が舞い散る夜に
「なあ、桜って好きか?」
俺達は今日、高校三年生になる。
校門をまたぎ、花びら散らせる桜の木を見上げながら幼馴染の桜は、そう俺に問いた。
「あぁ、好きだよ。綺麗だし」
俺も同じく桜を見上げながら答えた。
「俺はどうしても好きになれないんだよ」
「年一に、短い期間の中咲いて散るだけなのに、こんな大勢に好かれてさ。――それも綺麗だからなのかな」
「綺麗なものを嫌う奴なんていないだろ」
愚痴をこぼす桜を置いてせこせこ歩き始める。それに気づいた桜は「そうだけどよ~」なんて言いながら小走りで後をついてきた。
「――同族嫌悪」思ったことをしまい切れず、ボソッと呟く。
「……お前なあ!」
一度立ち止まり俺の言ったことを再確認した後、状況整理の出来た桜が怒りながらもう一度横に並んだ。
外に張り出されたクラス分けを見に歩く俺達だが、特に会話もない。そっぽを向く桜と、下を向く俺とで、周りから見たら気まずそうな二人に映るだろう。だが、幼稚園の時からの幼馴染な俺らは、今になって特にする会話もなく、気まずさも一ミリだって覚えない。
そうしてついたクラス分けの紙の前。人だかりが出来ていてなかなか見えない。
「おい椿、なんてかいてある?」
「なんで俺なんだよ、自分で見ろよ」
「だってお前眼鏡じゃん、良く見えるだろ?」
少しの苛立ちを感じながらも、減るものでもないからと、人だかりの後ろから目を凝らした。
「俺もお前も一年一組」
「まあそうだろうな」
なんでこいつがこんな言い方するかというと、こいつと知り合って数年、一度足りたってクラスが別々になったことがないのだ。人数の少なく一クラスしか無かった幼稚園を除き、小学校、中学校とあって一度も。今更驚くことではないのもお互い様。驚くことはないにしろ「またか」という呆れがあるのもまた今更である。
口笛を鳴らす桜を隣に、俺は見慣れた校舎に足を踏み入れた。




