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【必殺技図鑑】ミニスカ巫女怪盗ワザ"聖拳突き"(『ミニスカ巫女怪盗タテハ・カンナギ』ep2より)

作者: ミニスカ巫女怪盗タテハ・カンナギ
掲載日:2026/01/20

『……魔宝物(まほうもつ)反応の接近を感知』


 耳をつんざくアラートの中、機械的な電子音声を怪盗聴覚(イヤー)が聞き取り、前髪のかかる目を見開いたカンナギは紫ミニスカ袴の裾を揺らして立ち止まった。

 魔宝物保管保護館の建物を出た先、夜闇の中に翼を広げた、角張った巨体が色濃く浮かぶ。正門との間にある庭園に堂々と踏ん張る姿は、少なくとも丁寧な見送りを意味するようには見えなかった。


「……! く……」


 見渡せば巨体の足元にも、いつの間にか背の高い警備ロボットや、獰猛な巡械猟犬型(マシナ・ドーベリー)までもがずらりと並んでいるではないか。

 どうやら、待ち伏せされていたようだ。カンナギは白手袋の細い指を力いっぱい握りしめる。


 彼女は今日も華麗に獲物を盗み出した……の、ではない。しっかり打たれた対策に気付きもせず、ノコノコと間抜けな勝利(ヅラ)を晒しに来たのだ。

 警備ロボットが腕のガトリングやサーベルを構え、ドーベリー達が一斉に顔の発射口を向ける。彼らに挟まれた、真ん中の巨大警備ロボ……AD101-ワイバーンの赤いセンサー(アイ)が揺らめいた。


『……魔宝物所持者の職員ID照合……失敗。怪盗人間の恐れがあります』

「……予告するわ。1分以内に、あんたらをボコす」

『……怪盗反応、検知。滅殺行動を開始します』


 冷や汗ながらも不敵な笑いを作ったカンナギが懐に宝玉石カピラリヤットを挟み込むのと、ワイバーンが起立したのは同時だった。

 天狗服に包まれた身体いっぱいに怪盗力を充填。即座に駆け出し、撃ち出された警備ビームの雨あられを潜り抜け、すり抜け、駆け抜ける。

 並び立つドーベリーの壁へと差し掛かる頃、カンナギは長い深紅のポニテ一房(ひとふさ)を翻し、背中から落ちる形に跳び上がった。


「ミニスカ巫女怪盗ワザ──"対門(たいもん)聖斧脚(せいふきゃく)"!」


 すかさず空中横ひねり。弧を描いて振り下ろされた巫女の足先はドーベリーの背をとらえ、鯖折り破損と激しいスパーク、衝撃による虹の輪発生を引き起こす。


「怪盗ワザ!」

『照準、再定──ガ、』


 転がって着地したカンナギは弾かれたように起き上がり、低い姿勢で這うように走り抜け、居並ぶドーべリーや警備ロボの胴体へと、さらに素早く手刀を滑らせる。


「──"錠前破(じょうまえやぶ)りの斬手刀(ざんしゅとう)"!」

『ピーガガガ……ピ──』


 遅れて続く、鋭い金属音と電子悲鳴。それらが何度も響き渡り、膝をついて停止したカンナギが手刀を振り抜くと、警備ロボとドーベリー隊は一斉に無数の虹と自らのスパークに沈んだ。


『目標、捕捉。排除』

「ぬあっ!? くっ!」


 警備ロボットの生き残り、長剣(サーベル)ロイドがソードアームを振り上げる。カンナギは前腕に怪盗力を集中、強引に片腕で受け止め、押し退けるように立ち上がる。


「おお……っ、おおおおぁあ~っ!」

『急激な怪盗力の上昇を確認。回避行──』

「ミニスカ巫女怪盗ワザ! "対壁・聖槍脚(せいそうきゃく)"!」


 スウェーも間に合わず、たたらを踏んだ長剣ロイドの首に、カンナギの腰ひねり横蹴りが突き刺さった。


『──ヴぁ』


 激しい痙攣とスパークを立てて虹の輪を残し、長剣ロイドが吹き飛ばされる。宙を舞う警備ロボットの残骸を巨体で砕き散らし、ついにワイバーンが躍りかかった。


『対象、接近。──近接排除に切り替えます』

「こい、デカブツゥ──ッ。殺人警備ロボが怖くて、怪盗人間やってられるかァ──ッ」

『機動セーフティ解除。攻撃します』


 カンナギが跳び退ると同時に、ワイバーンの鼻先が振り下ろされ、庭園の石畳を抉り飛ばす。

 赤いセンサーは瞬時に空の巫女をとらえ、さらなる警備ビームを翼から放つ。カンナギは宙空で身をよじり、手刀や蹴りでビームをいなし、弾き、跳ね踊るように切り抜けた。


 そのうち一筋のビームを踏み台にして、夜闇の空、月の真円に巫女が舞う。高く空に躍るカンナギの背後には、既に怪盗力で象られた糸が張り詰められている。


「ミニスカ巫女怪盗ワザ──」

『目標、捕捉。警備ビーム威力、再計算。最大出力』

「"対城侵入・聖弓脚(せいきゅうきゃく)"!」


 怪盗力のワイヤーから弾かれ、神の一射の如く、射放たれたカンナギの身体。その折り畳まれた足は次第に伸ばされ、その技は急降下キックの形をとる。

 ワイバーンは両翼を合わせ、おぞましい極太のビームを放った。


 中天にて神なる矢じりと太陽フレアが激突し、辺りが一瞬、真昼になる。凄まじい轟音と太陽風が吹き荒れて、館のサイレンも掻き消える。

 普通の怪盗人間なら瞬時に融け消える高熱出力。しかし、それさえもカンナギは押し退けた。


「──おお、おぉおぉぁあああッ!」

『怪盗力が高まっています。ただちに避難──』

「あああぁああぁあッ! ──ッ、ゥオラァ!」


 一際巨大な虹の円環(リング)が弾け飛び、カン高く重たい轟音が響き渡る。飛竜の翼がスパークを放ち、合体を解除させられ跳ね上がる。高出力の押し合いに、機体が限界を迎えたのだ。

 よろめき、後退するワイバーンに向けて、カンナギは落下しながら拳を腰へ引き、もう片手の平を照準に当てる。


「ミニスカ巫女怪盗ワザ。"聖・拳"──」

『計測不能』

「──"突き"ィ!」


 空中にいながら振り抜かれたカンナギの拳は、虹の円輪を跡に残して、ワイバーンの鋼鉄の身体を貫いた。


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