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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

感染

作者: ネッしー
掲載日:2025/12/18

 朝七時九分。横浜駅。

 通勤ラッシュに差し掛かる薄暗さ、それでも働きに出る者で溢れていた。電車はすし詰めもいいところ、もはや人を乗せる気はなく、どうやって生きて乗り続けられるだろうか。中年女は少しばかりためらいながら乗る。駅を出発し、一駅、一駅と人が降り、降り、そしてまぁまぁ空いてくる。

「痴漢! 痴漢です!」

 中年の女が叫ぶ。指をさす方向に若い男がいる。その男は「え」と言い、自分の心臓の鼓動が何倍も大きくなることを実感する。男は「違います!」と言いながら車内を見るが、全員の目が刺さってくる。誰も味方はいない。痴漢は悪だと。そう言っている。

「お尻触られました! 証拠もあります!」

 中年女性が涙目で叫ぶ。やれ、若い男は冷や汗か脂汗か、じわりと体のどこかがおかしくなりそうになる。誰も何も信じてはくれない。全員が見ている。若い男を。

 付き合ってられないと、車両を変えようと歩くと、同じぐらいの若い男が、バッと飛びかかってくる。痴漢男は押さえつけられ、暴れる。「違う、なんで」と暴れる男を、中年女性は蔑んだ目で見ている。その中年女性に「大丈夫ですか」と語り掛ける、社内の優しい、優しい人たち。痴漢男を押さえつける、勇敢で、素晴らしい男。

 一駅着く。騒ぎを聞いた駅員が、痴漢男を押さえる。

 男は暴れる。顔を蹴られ「暴れるな」「犯罪者だ」「暴れるな」さ、どうしたものか、駅はだんだん騒がしくなっていき、次第に痴漢男の声もなくなるが、中年女性は人々に取りかこまれる程、その涙ぐましい顔で訴える。訴え、訴え、泣く。

 痴漢男もかしこみ訴え、声を出さず、血が流れ、気を失い、そして散る。

 朝七時四十九分、どこかの駅。痴漢男はすでに、不眠症になっていた。


事実に基づいたとか、そういうのじゃないです。単純に。単純にね。

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