部活見学です。
(……ねえ、あれって……)
(……うん、例の外崎先輩の……)
(……こんなとこまで来て、彼女アピールのつもり?)
それから、二週間ほど経過した六月下旬。
放課後にて、微かに届く女子生徒達の会話。まあ、微かにではあってもはっきりくっきり耳に入ってくるのですけど。そして、その理由は単純――彼女らが、きちんと私に聞こえるように話しているから。……うん、だったらもういっそはっきり言えば良いのにね。
ともあれ、私がいるのは柔らかな和の風情漂う素朴な一室――外崎先輩の所属先たる、茶道部が使用する一室で。
さて、今しがたあの会話を交わしていたのは同じく茶道部の部員達。どうやら、わざわざ部室まで来て彼女アピールをする私がたいそう気に入らないようで。……いや、関係ないか。そもそも、外崎先輩の恋人である時点で相当に気に入らないのでしょうし。
……あと、ついでに申すと――別に必要ないのですけどね、そんなアピール。そんな無駄なことせずとも、既に校内にて周知の事実なわけですし。
まあ、それはともあれ……ちらと、視線を移す。そこには、この柔らかな空間に溶け込むように穏やかな表情で茶道具を手入れする外崎先輩の姿。思わず息を呑むようなその美しい姿に、改めて見蕩れてしまいます。
すると、私の視線に気が付いたのか、少し心配そうな表情の外崎先輩。それでも、私が微笑みかけると、彼もまた穏やかな微笑を浮かべてくれて。……ふふっ、ほんとに役得ですね。