……さて、頑張りますか。
「――ひとまず、一歩前進といったところでしょうか」
それから、数時間経た宵の頃。
自宅の部屋から、玲瓏たる月をぼんやり眺めながら呟く私。何のお話かと言うと、もちろん本日の放課後のこと――外崎先輩と、めでたく恋人となれたことについてです。……まあ、現段階の私達を恋人と呼んで良いのかについては、些か懐疑的ではありますが。
ところで、肝心の契約期間についてですが――ひとまず、三ヶ月ということになりました。繰り返しになりますが、この期間に達した際、いずれかが延長を望まなければ終了――そして、それ以降は互いに必要以上の関わりを持たないという取り決めになっています。
「……さて」
そう、ポツリと呟く。言わずもがな、大切なのはここから。そもそも、彼がこの話――彼の契約を受け入れてくださったのは、恐らく私のため。私の心中に一切の未練を残すことなく、彼に対する想いを断ち切るためにこの話を受け入れてくださったのでしょう。例え遠回りでも、この方が私にとって良い――きっと、そのように考えてくださったのでしょう。
そして、それは即ち――彼の中では、既に確固たる答えが出ているということ。私のことを好きになることはないという、確固たる答えが。それを覆すことは、恐らく――いえ、間違いなく並大抵のことではなく。……まあ、そもそも女性嫌いですし。本来なら、このお話を受けてくださっただけでも奇跡というものです。まあ、そういうわけで――
「……さて、頑張りますか」