幕間.閉会式
閉会式の準備中、それぞれの生徒達は整列して座っている。ざわざわと今日の思い出を語ったり、明日からまた勉強頑張らないとなーというような声が聞こえる。
そして、舞台の横では生徒会たちがバタバタと準備をしていた。マオは挨拶の台本の読み込み、アリサはパソコンを打ち、賞状の準備をしている。
「お疲れー!いやぁ、6組女子強かったなぁ」
るいが調子の良い声でアリサに話しかける。
「みんなが頑張ってたからね」
ちらっと青山の方を見てアリサは笑った。
「いやいや、雪村のトスワークまじやばかったって」
「大袈裟だよ。でも、ありがとう。それに、さっき作業も変わってもらって」
その静かな表情から繰り出された笑顔に、るいは少しだけ頬を赤くした。
「いいってことよ」
アリサはまた画面に目を戻す。そして、思い出したようにマオを呼ぶ。
「何?アリサ」
「最後、生徒会長賞はどこにする?」
「あっ、そっか」
マオは挨拶の準備と決勝戦ですっかり忘れていた。
「全く五十嵐は……」
「えへへ。でも、決まってるよ。だって一番盛り上げてくれたもんね」
マオは軽くウインクする。アリサはマオの答えを聞く前に入力を始めた。るいはその画面を覗き込む。
「あぁ、なるほどね」
ーーーーー
閉会式は順調に進み、優勝した6組へ校長先生から賞状が手渡された。マオとアリサは他の仕事もあるため、別の生徒が代表で受け取った。
「みんな、やったね!」
代表して受け取った、6組の生徒が賞状を掲げると座っていた6組は大盛り上がり。会場も拍手や歓声が起こった。
「いいなぁ……」
サツキが少しだけ悔しそうにつぶやいた。
「サツキ……仕方ないよ!次何か行事で頑張ろう」
ナギが声をかけるとサツキは笑顔になった。
「そうだね、こんなにみんなと頑張れて楽しかったし」
サツキの言葉にナギは安心した。サツキのおかげだと、クラスのみんなが心から思っている。この状況がナギにとっても嬉しかった。
「えー、続いては生徒会長賞の授与です。五十嵐マオさんお願いします」
マオが教壇の前に上がり、マイクをチェックしている。
「あーあー。今回の生徒会長賞を発表します。この賞は大会を通して最もチームワークを見せたチームに与えられます」
マオはそこまでいうと、少しわざとらしく咳払いをした。
「それでは、発表します………生徒会長賞は3組女子です」
その言葉に3組は大きく盛り上がった。
「サツキ、やったね!」
「えっ、やった!」
生徒会長賞という、勝利には何も関係のない賞。それでもチームワークが一番という言葉が3組のみんなは嬉しかった。
「代表者1名壇上へお願いします」
マオからの呼びかけに、一斉にサツキへ視線が集まる。ゆいちゃんが一番に口を開いた。
「サツキ、行ってきなよ!」
「えっ!?私でいいの?」
サツキが少し驚いた顔をすると、みんながニヤニヤと笑う。
「逆に他誰がいる?」
「みんな夜野さんのおかげだもん」
「みんな……」
「ほーら、早く早く!」
ナギがサツキの手を引っ張り立ち上がらせて、ゆいちゃんやみんなが背中を押す。サツキは嬉しかった。チームでこんなにも何かを成し遂げたことが。
"今回は"
壇上に上がったサツキは大袈裟なくらいにピシッと立っている。クラスのみんなからはぽつぽつ笑い声が聞こえる。
「今大会で、3組女子のメンバーは大いに盛り上げることに貢献して、チームワークを遺憾無く発揮したことを証して、この賞を授与します」
マオが両手でサツキに賞状を渡す。サツキはそれを受け取るとニッと笑った。
「みんなーー!やったよ!!」
いつもの明るく、溌剌としたサツキらしい声と表情。
3組は立ち上がり大きな歓声を上げた。
かくして、球技大会の幕が降りたのだった。
球技大会が終わりました……