84.試合終了
クラスは互いに円陣を組んでいた。
「3組、最後ぜっったい勝つよ!」
サツキとゆいちゃんを中心に掛け声と共に声が上がる。
「6組、最後まで冷静に優勝目指していこう!」
マオの掛け声でみんなが一体となる6組。どちらのクラスも気迫十分だ。
3組はスタメンを決めていた。
「まず、私とサツキとそれから佐藤さんと……」
ゆいちゃんがメンバーを決めて行く。
「そして、あと一人はどうしようかな……」
ゆいちゃんが最後の一人に悩んでいると、クラスの一人が手を挙げた。
「あと一人は、佐倉さんがいいと思う!」
「私も」
「へっ!?」
そう言われて、一番ナギ自身が変な声を上げた。
「……そうだね、さっきの一点なかったら負けてたし。佐倉さん、いける?」
ゆいちゃんやみんなの視線がナギへと集まる。ナギは決心して、頷く。
「うん。できる限り頑張る」
「その意気だよ、ナギ〜!」
サツキがナギと強く肩を組んだ。
試合が始まる。
一進一退の攻防が続く。片方が取れば片方が取り返す。
「来た、みんな気つけて!」
マオから真っ直ぐにアリサがトスを出す直前、ゆいちゃんが声を出す。アリサの変幻自在のトスに1セット目は負けてしまったからだ。
「……」
アリサは冷静に3組のコートを見る。
(ここは左からかな)
アリサは右へフェイクを入れて左にトスをあげる。3組のメンバーはまんまと釣られてしまった。
「よっし!」
6組のスパイクが決まる。
「まだまだ、負けてないよ!」
サツキがコートの脇で盛り立てる。3組の全員が心は折れてなどいなかった。
「あのトスなんとかしないと」
3組全体が焦っていた。そして、再びアリサの元へボールが。
「今度はどっち?」
アリサはなんのフェイントもなく、素早く左サイドへとトスをあげる。フェイントを警戒していたため、全員の反応が遅れる。
誰もが決まったと思っていた。
「させないよ!!!!」
そこには、サツキが気迫全開で、ブロックへ飛んでいた。
サツキは考えてもわからないと直感に委ねて動いていた。ブロックへ当たり、ボールが後方へと飛ぶ。
「絶対拾うから!!」
ナギがジャンプレシーブで前へと打ち上げる。
「サツキ、お願い!」
ゆいちゃんがサツキへとトスをあげる。サツキのスパイクには2枚のブロック。
「絶対、ぜっったい!決めるもんね」
サツキはブロックの間を縫ってスパイクを打つ。全員の期待を乗せたそのボールは真っ直ぐにコートの隅へと向かって行った。
ピピーー
だが、無情にもわずかにズレてアウトに。3セット目も6組が取り3組は惜しくも準優勝に終わった。会場は歓声に包まれる
「やったーー!」
「すごいよ、アリサ」
6組はコートにみんなが集まり輪になり喜びあっている。
その様子を呆然と見ているサツキ。
「サツキ……」
みんながサツキの元に集まる。サツキはポツリと小さな声でつぶやいた。
「ごめん、みんな」
サツキは顔を伏せ、拳を握りきりきりと歯を食いしばっている。自分のミスで負けてしまった。そう思っている。
「……何言ってんの?サツキ。みんなで繋いだ結果だよ」
「そうだよ!夜野さんのせいじゃないよ!」
みんなが励ましの声をかけると、とサツキは顔を上げた。
「それにさ、夜野さんが放課後とか昼とかにみんなで練習してなかったら、私たちも男子みたいに予選落ちだったんじゃない?」
「俺らいじってんのかー?」
和気藹々とクラスは盛り上がっている。
「そういうことだよ、サツキ。負けたのは悔しいけどみんなで頑張れて私は楽しかった。前よりも活躍できたし」
ナギは満面の笑顔でサツキに声をかける。サツキはナギを含めてクラスのみんながその表情が堂々と充実感に満ちていることがなんだか嬉しかった。
「……うん。そうだね。負けちゃったけどみんなありがとう!めっちゃ楽しかったよ!!」
サツキはようやく笑顔になりみんなの方を見た。
「それじゃ、整列しよう!」
「うん」
2つのクラスが並んで、一礼をする。その瞬間体育館には万雷の拍手に包まれたのだった。