82.強敵・6組
試合が始まった。2セット目のメンバーの予定のサツキとナギはベンチで応援。
「いけぇー!ゆいちゃん決めちゃえ」
「そこだよ!ナイス!」
二人とも気合十分に盛り上げる。
先制点は3組が取り、このまま流れに乗っていけるように思えていた。
だが、
「よっ」
「………そこ!」
マオがレシーブをして、アリサがブロックの逆をつくトスをあげてブロックをいとも簡単ににかわす。
「嘘でしょ!?」
コートでゆいちゃんが驚きの声をあげる。さらに6組は時間差攻撃など、連携も決めてくる。
「ねぇ、やっぱ強いよ6組」
「うぅ。やばいやばい。……でもでも負けてないよ!まだまだーー!一本一本」
サツキが鼓舞して、クラスのみんなも続けて応援する。会場も試合の熱で大盛り上がりだ。
じわりじわりと点数が開いていく。6組のマッチポイント。
再びアリサが絶好の位置でトスの体勢に入る。
「動きよく見て!」
サツキが声を飛ばす。ゆいちゃんは冷静に左右を見回す。
(どっち、左、右……?)
その時、一瞬だけのアリサの視線の動きをゆいちゃんは捉えた。バスケで磨いた敵の視線の動きを読む能力だった。
「よし、こっち」
ゆいちゃんの声で前衛が左へと動いた。
「ふふっ、残念」
アリサはトスを上げるのではなく、そのままちょこんと前へとボールを落とした。ゆいちゃんにはそのボールが落ちる速度が倍遅く映った。
ピピー
ホイッスルが鳴り響き1セット目が終了した。
「15-7……」
ナギがポツリとつぶやいた。1セット目にコートに立っていたメンバー達は悔しそうな顔で脇へと歩いてくる。
「ごめん、負けちゃったよ」
ゆいちゃんが小さく呟く。珍しく、暗い顔だ。最後の自分の判断のミスで落としたことを悔いているようだった。
「……ドンマイドンマイ!大丈夫だよみんな。そんな暗い顔しないで」
サツキが大袈裟に手を叩いてみんなに声をかける。みんなの視線が一斉にサツキへと集まった。
「まだ負けたわけじゃないよ!2セット目絶対絶対とるからさ。3セット目でまた大暴れして、そんでもってみんなで優勝するよ!」
サツキの明るく無邪気な言葉に、暗いムードになりかけていたチームの雰囲気が明るくなった。
「よっし、じゃあ2セット目絶対とってね!」
「うん、任せて」
サツキがグッドサインでゆいちゃんに答える。クラスメイトも手拍子をしてチームを盛り上げる。
「1セット目、取れたけど油断は全然できないよね」
「うん、だってあのクラスの雰囲気最高だもんね」
タオルで汗を拭きながらアリサとマオが3組を見つめる。
「でも、うちのクラスだってみんな最高だもん」
「うん。そうだね」
今度はクラスメイトへと視線をやる。運動部も多く、仲もみんないい。自分たちのクラスは負ける気がしないと思う二人なのだった。