80.クラスで勝利を
「これで、どう!」
サツキのスパイクがコートの隅に決まった。
ピピー
「15対7で2セット目3組」
「やったー!」
コートの中で集まりハイタッチをしあい、クラスで勝利を噛み締め合う。
整列して一礼。顔を上げた時、3組は笑顔で自然に肩を組んで笑顔になっていた。
「ゆいちゃんのスパイク最高だったよ!」
「そっちのもね!」
「それにさ、みんなもめっちゃ動きよかったよ」
ゆいちゃんとサツキがお互いに褒め合いながらチームを鼓舞する。
「でも、夜野さんが放課後とかみんなに教えてくれたからだよ」
「うん、あのレシーブ練習超参考になったよ」
みんなが口々にいうと、サツキは一瞬目を丸くしてその後にくしゃっと笑った。
「よかった〜」
「このまま優勝まで突っ走るよ!」
ゆいちゃんのその声に3組の女子のメンバーは声を合わせて"おーー"と叫んだ。全員が心の中に楽しさと勝てたという充実感に溢れていた。
「っと、次の試合の前に男子たちの応援いこう!あっ、でもでも水分補給はしっかりね!」
次のフェーズは男子の試合を挟むため試合のない3組の女子みんなは駆け足で男子の試合の方へと向かった。
「ぷはーっ」
自分のリュックからスポーツドリンクを取り出して飲むサツキ。
「ふふっ、お疲れサツキ」
「ナギもね、あのスライディングレシーブかっこよかったよ」
サツキがウインクしながらナギを褒める。ナギは嬉しそうに笑った。
「ほんと?ありがとう。私もあんな風に動けるなんて、自分でびっくりしたよ」
「ま、毎日霞ちゃん達と鍛錬頑張ってるもんね」
「そうそう!霞は鍛錬にはものすごーく真面目で厳しいところもあるから」
ナギは腕を組みながらうんうんと頷く。
♢♢♢
「いつ来たるかわからないもののけに備えて頑張りましょう。日々鍛錬、日々勉学を怠ってはいけませんから」
♢♢♢
霞はその信念のもと、基礎の練習を徹底的に行う。その結果ナギの体力は向上していっていた。
「ま、確かに。十六夜も普段は軽い感じなのに結構スパルタだからなぁ……」
サツキが思い出して、苦笑いをする。
「ふふふっ。私たち、運動量なら部活やってる子たちに負けてないかもね」
「そうだね」
二人は顔を合わせて笑い合う。ナギはもののけとの戦いのことを当たり前に誰かに話せるようになったことが嬉しかった。その相手が、サツキであることはなおのこと。
「さ、男子の応援いこっか」
「うん、いこいこ!」
飲み物をカバンに戻して二人は男子の応援へと向かった。
「いけぇーー!!負けるな3組!!」
「そこそこ、拾って拾って!!ナイスナイス!」
ゆいちゃんとサツキは、そこにいる誰よりも声を出して応援していた。
「わー、3組女子の応援やばい」
「私らも応援しよう」
それに感化されるように、他のクラスの男子も女子も大声で応援を始めた。会場が熱気の渦へと包まれる。
「盛り上がっててよかったぁ」
「うん、多分サツキちゃんたちのクラスから熱が伝播してる感じみたい」
少し遠くてスコアボードの整理や運営を円滑にするための仕事をしていたアリサとマオが話をしている。
「……私たちも負けてられないね!生徒会としてもっともっと盛り上げないと」
「うん、そうだね。せっかくの学校行事盛り上げられるように頑張ろう。……もちろん優勝も目指して」
マオとアリサは舞台の方へと走り、放送を担当している放送委員に音楽を流すようにお願いした。
会場には最新のアップテンポのヒット曲が流れ始めて、会場の盛り上がりを高めていったのだった。