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79.練習の成果

球技大会が始まる。Aブロックは1組、2組、3組。Bブロックは4組、5組、6組で行われる。

「私たちは早速第一試合からだよ!」

「うん頑張ろーね」

サツキとナギは目を合わせて頷きあう。

「第一試合Aコートにて、1組の女子の試合を行います」

両チームが整列して、ゲームが始まる。


ーーーーー

「ふっ、ふっ、はぁ!」

その頃、霞は道場で素振りをしていた。

「ふぁ〜〜」

ひと足先に素振りを終えて欠伸をしながら十六夜は道場の隅に座っていた。

「十六夜、緊張感がなさすぎです。常世の世界でナギ達に注意していたではないですか」

「別に、適当にやってるわけじゃないからいいだろ?」

相変わらず腕を頭の後ろで組んでいる十六夜。霞はため息をついた。

「それより、そろそろサツキ達は球技大会とやらが始まっているころじゃないかい?」

「そうですね……」

霞も竹刀を下ろし、ゆっくりと壁の方まできて座った。

「サツキは張り切ってたからね、昨日から」

「ふふっ、サツキちゃんらしいですね」

「勝つと思うかい?」

十六夜が軽い調子で聞く。霞は当然とばかりに頷き

「はい。絶対に勝つに決まっています。あんなに二人とも頑張っていたんですから!」

霞の一言に、十六夜もふっと笑った。

「さて、それじゃあ私たちも少し手合わせでもするかい?」

「はい!やりましょう、十六夜」

二人は立ち上がり刀をまじ合わせた。真剣でありながら穏やかで温かな時間が流れていた。


ーーーーー

「サツキ!決めて」

「うん、任せて!」

ゆいちゃんのトスでサツキがスパイクを決める。

ピピー

「やった!1セット先取だ」

コートのメンバーたちは中央へと集まり喜び合う。コート脇で待機しているナギを含めたクラスメイトたちも手を合わせて喜び合っていた。

「次のセットも取りに行くよ!まず、先発は……」

ゆいちゃんが中心で、次のセットのスターティングメンバーを発表していく。

「……そして、サツキとナギ!」

「う、うん頑張るね」

ナギは少し緊張した様子で返事をした。

「大丈夫大丈夫、私たちは一応1セット取ってるんだから気楽に気楽に〜!」

サツキがぽんっとナギの肩を叩き揶揄うようにいう。

「そうだね、いっぱい拾って拾いまくるから」

「お、その意気だよ!」

二人の会話の様子をゆいちゃんは笑いながら見ていた。

この球技大会、ほとんどのクラスが運動神経のいいメンバーがほとんどコートに立ち他のメンバーは応援に回るというのが基本的なセオリー。しかし、ゆいちゃんとサツキはせっかくのクラス対抗球技大会、クラスのみんなが活躍して楽しめるものにしたいと、ゆいちゃんを中心にチーム編成を考えていた。


♢♢♢♢

ゆいちゃんとサツキは休み時間二人でチーム編成を考えていた。

「藤野さんと、木村さんはスパイカー的なの任せたいよね」

「うんうん。体育の時とかも結構動いてるイメージだし」

サツキはシャーペンで鼻と口の間をとんとんと叩きながらノートと向き合う。勉強の時よりもどこか真剣だ。

「あとは、運動があんまり得意じゃない子たちの配列だよね」

「そう。できれば、みんなで優勝したいもんね」

優勝だけ考えれば、運動神経のいいメンバーで固めればいい。だが、それでは学校行事である意味がないような気がしていた。

「みんなにも訊いてみたけど、出たいけど足引っ張りそうだからって言う子が多かった」

「だよね、だったらみんなが思い切って楽しめるように私たちが考えなきゃね」

サツキが拳を突き上げるとゆいちゃんは口を押さえて笑った。そして、チームのメンバーを配置していく中で、ナギの名前にゆいちゃんが目を止めた。

「佐倉さんは、運動は苦手な方だよね?」

「うん、本人もそう思ってるみたい」

サツキは苦笑いを浮かべる。

「だったら、私かサツキのどっちかが入ってる方がフォローできるか」

「なら、私に任せて!ナギの動きだったら私が一番フォローできると思うから」

サツキが自信満々にいうのでゆいちゃんはナギはなるべくサツキとチームを組ませることにした

♢♢♢♢


相手のチームのサーブ。アンダーサーブでありながら、コースがいいところに入った。

「あっ、ごめん」

運動が得意ではないクラスの子が変な方向へとボールを打ち上げてしまった。みんなが、すぐにフォローへと向かおうとする。その時、

「私に任せて!」

大きな声を出したのはナギだった。ナギは走って滑り込みながらボールを上へと打ち上げた。

「ナイスじゃん、ナギ!」

決して綺麗なトスではなかった。だが、サツキはそれをフェイントのように前へと落として得点した。

「やったー!」

「ありがとう。佐倉さん」

「大丈夫、私も失敗よくしちゃうからその時はよろしくね」

ナギがミスをしてしまった子に向けて笑顔を向けると、その子も笑顔になった。

「佐倉さん結構動けるじゃん!これは嬉しい誤算」

コート脇で見ていたゆいちゃんは、予想外に動いたナギを見て目を丸くして驚いた。

(これでも、毎日霞と鍛錬してるんだから)

ナギの毎日の鍛錬が思わぬところで発揮されたのだった。

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