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70.推測

道場で霞と十六夜は竹刀を交えて鍛錬をしていた。

「ふっ!」

「遅い!」

霞の渾身の一太刀を十六夜は宙返りで簡単に躱す。そしてすぐさま突きを繰り出した。

「うっっ」

霞は体勢を崩した。

「今日のところは私の勝ちのようだね」

「悔しいです……。まだまだ鍛錬しなければ」

十六夜が得意げににやりと笑い、霞は悔しそうな顔をしている。

「さて、休憩がてらにもののけの対策でも練ろうか」

「そうですね、色々と気になることもありますし」

二人は真剣な面持ちで道場の隅に腰をおろした。

「気になるのは、やはりあのもののけですよね」

「あぁ、あんな小さなもののけが穢れを起こさせるほどの邪気を纏っているのはおかしい」

「ですよね……」

霞は目線を下に落とす。霞は、そのもののけに会ってから不安でしかなかった。穢れを起こすほどの邪気を纏った小さなもののけは、以前の戦いでは存在していなかったからだ。

「それと、現れる鬼もいくらなんでも大きすぎる。あんな大きさ、前なら邪鬼の側近くらいのやつだ」

「……あんなに邪気の強いもののけがこれからも現れ続けるとなると、今の二人の力では」

霞がきゅっと袖を握りしめる。ナギもサツキも少しずつ成長はしてきている。それでも、成長速度を上回るほどに、現れるもののけがどんどん強くなってきてるのを感じていた。

連携技を急いで覚えさせようとしていたのはそのため。ただ、ナギとサツキをいたずらに不安にさせないようにそのことは黙っていた。

「……早くみんなが来てくれないと、このままでは」

霞の声は震えている。もののけに恐怖しているのではなく、ナギが傷つく姿を見ることが怖かった。十六夜はそんな様子を静かに見ていた。

「……まぁ、不安になる気持ちも分かるけど今は全力でやるだけだ」

「……それもそうですね。みんなが揃うまでは私たちがなんとか持ち堪えるしかないんですから」

霞は顔を上げて拳を固く握りしめた。必ず守るという使命が霞を奮い立たせる。

「そうと決まれば、十六夜。鍛錬を再開しましょう!」

「そうだね。またさっきみたいに簡単に負けるんじゃ練習にならないから、しっかり頼むよ」

「バカにしないでください。同じ負けは繰り返しませんから」

二人は竹刀を再び握り、道場の真ん中に立つ。お互いが構えて激しく竹刀と竹刀がぶつかり合う。

(不安なことはたくさんあります。でも、今は十六夜がいる。きっと、大丈夫です。)

今目の前には、霞が最も頼りにしている十六夜がいる。それだけで、重くのしかかる不安は少しだけ軽くなっていった。


きっとみんなで乗り越えられると信じて、今は霞は鍛錬を続けるのだった。

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