67.放課後の練習
「よっと」
「ほっ」
「うん。うまいうまい!」
放課後、部活のないメンバーで集まってサツキを中心にトスやレシーブを回して練習していた。
「うわっ……」
「大丈夫、私が拾うから」
クラスメイトのミスしたボールをサツキがレシーブしてつなぐ。
「基本的には、手はこうして、上手でやるのはなるべく少なく。まずは、位置に移動して……」
サツキがみんなにレシーブのコツを教える。ナギも真剣にフォームを確認していた。
「そそ、みんなうまいうまい!」
みんなも褒められて満足な顔だった。
(サツキ、盛り上げるの上手だな)
サツキは明るい性格で、クラスでもムードメーカー的な存在。そのため、あんまり運動が得意じゃないクラスメイトもなんとなく楽しく参加できる。
「おっ、やってるね!」
バスケのユニフォームを着た、ゆいちゃんがやってきた。ゆいちゃんは同じ3組でバスケ部。茶髪のショートヘアーでバスケ部ではポイントガードとしてレギュラーを務めている。
「ゆいちゃん!チームの戦力の底上げは私に任せて」
「おっ頼もしいね、サツキちゃんは」
活発的な性格なので、サツキとも結構波長が合う。
「私も明日の昼休みとかなら参加できそうだから、もしやるんだったら声かけて」
「うん!わかったよ」
「作戦とかは後で立てておくから、確認よろしく!」
「了解、キャプテン」
サツキが大袈裟に敬礼をするので、ゆいちゃんも他のクラスメイトもくすくす笑い始めた。ゆいちゃんはチームでも司令塔なので作戦を考えたりするのも得意。サツキは考えることは基本的に苦手なので、そこの相性もいい。
「じゃ、私は部活に戻るね」
「うん、じゃまた明日!」
駆けていくゆいちゃんを見送りまたみんなでトス練習が始まろうとしていた。
「よーし、みんな再開するよ」
「「「おぉーーー」」」
みんなが気合を入れて掛け声をあげる。
ーその時
「うっ……あっ、これって」
サツキが頭を抑えてナギの方を見る。ナギも同じように頭を抑えながら頷く。
「えっと……ごめん。私今日用事があるんだった」
「わ、私も」
二人はみんなにぎこちない笑いで言った。
「えーそーなんだ」
「でも、しょうがないね」
「私たちはもう少しトス合戦してから帰るね」
他のクラスメイトは二人を明るく見送ってくれた。
「ごめんね、また明日ね!」
「うん。じゃあね、二人とも。色々教えてくれてありがとう」
二人は校門の方へ歩き出す。後ろでは、残ったメンバーがトス合戦を再開していた。
「ねぇ、最悪なんだけど……。練習の邪魔するなんてさ」
「ほんとだね、ムカつくからすぐに倒しちゃおう」
ちょっと機嫌が悪くなったサツキだったが、ナギがにこっと笑うと表情が少し和らいだ。
「そうだね。私たちの青春の時間の邪魔するやつなんて速攻で片付けよう!」
二人は校門をくぐると、駆け足で気配のする方へと向かっていった。




