66.球技大会へ向けて
ナギとサツキはお昼を食べていた。
「うわっ、サツキ弁当いつもより多いね」
「うん。放課後も練習とかしたりするかもだから多めに食べて元気つけないと」
いつもよりも一段多いお弁当を食べるサツキ。スポーツということで、運動の好きなサツキは張り切っていた。
「うちらのクラス結構女子陣は強いメンツ多いから優勝狙えるよ」
「あはは。足引っ張らないように頑張るよ……」
ナギはサツキの勢いに圧倒されて苦笑いになる。ナギは運動に自信がないので、心の中では不安である。
「何言ってるの?ナギだって大事な戦力だよ」
「いや、私は運動そんなに得意じゃないから」
「あんなに身軽にいつも動いてるじゃん」
「だから、あれは指輪の力というかなんというか……」
昨日霞としたやり取りと全く同じ内容だった。
「まぁ、そうだけどさ。でもでも、ほとんど毎日あんなに飛び回ったりしてるんだから、ナギだって多少は身体能力成長してると思うよ」
サツキが口に米粒をつけながら笑顔で言った。
「そう、だといいな」
「大丈夫、放課後みんなで頑張ろう!そもそも行事なんだし楽しまなきゃ!」
「それもそっか」
「でね、ライバルになりそうなのは私の睨みだと6組だと思うんだよね」
サツキが顎に手を置き、分析官にでもなったような口ぶりで言う。その姿がなんだか面白かった。
「ふふっ。そうなんだ。6組っていうと生徒会長の五十嵐さんと副会長の雪村さんがいるクラスだよね」
「そ。雪村さんは運動も頭もいいし、五十嵐さんだってそこそこ動ける。何よりさ、運動部の子が多いんだよね、あのクラス」
サツキが頭を抱えている。一応バレーボールの大会ではあるが、学年行事ということでバレー部はスパイクが禁止とされている。つまり、その他のメンバーのスパイク力にかかっている。
「でも、うちのチームはサツキがいるでしょ?」
「そだね。あと、ゆいちゃんとか木村さんとかも結構できると思うあとは……」
サツキは指を折りながら、チームの戦力を数えている。そこにナギが含まれているのかはわからない。
「私はレシーブ頑張ってみる!そっちの方がまだ少しは頑張れそう、かな?」
「……うん、任せたよ!ナギが拾ってくれたら私が思いっきり決めちゃうから」
サツキがスパイクの素振りをして見せる。膝に乗せた弁当の蓋が落ちて慌ててサツキは拾った。
「ふふっ。じゃあ、任せた!うちのエース様」
「うん。どーんと大船に乗ったつもりでいてよ」
サツキは得意気に胸を叩いた。