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54.二人での戦い

しばらく歩いているとサツキの顔色が少し悪くなり、進む足取りも重くなっていた。

「サツキ、大丈夫?」

「うん……なんか気分が悪い。」

サツキはおでこを押さえていた。溌剌としていないサツキの様子を見てナギは心配していた。

「ナギ、おそらく時間酔いをしているのでは?」

「あっ、そっか。サツキは回復魔法できないんだ。」

ナギが慌ててサツキに回復魔法をかける。するとサツキの顔色はたちまちによくなり、表情も明るくなっていった。

「ふー。スッキリした!ありがとうナギ。」

「ごめんね、気づかなくて。」

ナギが申し訳なさそうにいう。

「大丈夫大丈夫。ってか、ナギは自分で治せるんだね?」

「うん。霞に習って回復魔法もある程度は使えるようになったんだよ。」

刀の方を見て笑いかける。霞は刀の状態なのでナギには表情が見えないが、同じように笑っている。

「そっか、便利だね。十六夜、私も使えるようにならないの?」

サツキは視線を背中に背負った刀へと向けた。

「まぁ、簡単なものであればいずれは。回復魔法は私の専門外だから、あまり期待はするんじゃないよ。」

「はーい。」

サツキがまるで子どもがするような返事をしたので十六夜も笑ってしまった。


「……!来ます。」


和やかなムードを切り裂くように、小さなもののけの群れが押し寄せてきた。

「よし、いつも通り"鳳仙花"で……。」

ナギが霞に形態変化の指示を出そうとする。

「待ってください、ナギ。」

「へっ?」

霞がそれを察してナギを言葉で静止した。ナギはきょとんとしている。

「今はサツキちゃんと十六夜がいるんです。"鳳仙花"で魔力を消費しなくても大丈夫です。」

霞が少し声を弾ませて言った。ナギはサツキの方を見る。


「そっか……。」


そこに確かにサツキはいる。サツキは足を伸ばすようなストレッチをしていた。サツキはナギの視線に気づくとニカッと笑った。

「あんな奴ら2人でやっちゃおう。」

グッと親指を立てるサツキを見て、ナギも思わず笑った。もう、今は自分だけで背負う必要がない。協力できる仲間がいる。

「うん、一気にやっちゃおう!」

2人は鞘から刀を抜き、真剣な眼差しで構える。

「先に私たちが飛び出して牽制、と頭数を減らす。」

十六夜が指示を飛ばす。

「わかった。」

ナギは十六夜の指示に同意し頷いた。


「さて、先鋒は私らだ。いけるね?サツキ。」

サツキはストレッチを終えてぴょんぴょんと軽くジャンプをする。そして息を吐いた。

「……うん。いけるよ!」

「ふふっ、じゃあ……いくよ!」

十六夜の言葉と同時にサツキは目にも止まらぬ速さで飛び出した。

「速い……。」

ナギは間近で初めて見るサツキの動きにあっけにとらていた。

「サツキちゃんしっかりと十六夜の力を使いこなせていますね。……すごいです。」

霞も同じように感心している。


サツキはその速度で翻弄しつつ、手裏剣を使い小さなもののけたちを確実に片付けていく。

「いくよ!」

高速で移動しながら連続で切りつける。もののけたちは動くことができない。

「歯応えがないね……術を使うまでもない。」

十六夜はがっかりというような口ぶりだった。


ぶぇーーー


「……!」

イノシシのようなもののけが勢いよく突進してくる。サツキはすぐさま反応しひらりと宙に飛びかわす。そしてすぐさま手裏剣を投げて動きを止める。

「ナギ、お願い!」

サツキが空中で後ろにいるナギの方を見る。が、もうすでにナギは目を閉じ、鞘に刀を納めて力を溜め始めていた。ナギの足元に光が渦巻き、周囲には花びらが舞い上がる。目を開き止まったイノシシを捉える。

「私たちもいいところを見せましょう!」

「うん。いくよ、霞。」


「「"椿の舞"」」


ナギが一気に力を放ち、素早い居合い抜きでもののけは打ち払われて、消えていった。

サツキが空中から地面につく。


再び常世の世界に静寂がおとずれる。


「ふぅ…。」

ナギが息を吐き、霞は人の姿に戻った。サツキの方を振り返り走って近づいていく。

「やったね!サツキ!」

「ま、私たちにかかればこんなもんよ!」

2人はハイタッチして喜び合っていた。

「サツキがいてくれるとすごく戦闘が楽だったよ!一人でいっぱい倒してくれるし、足止めもしてくれて。とっても動きやすい!」

「ほんと?でも、ちょっと無理そうなやつはナギが倒してくれるから、私もよかった!」

「あの技溜めるのに時間がかかるからさ、サツキのおかげで……。」

お互いが褒めあっている。2人にとって初めて協力しての戦闘だった。相手が弱いもののけの群れだったとはいえ自信に繋がった。


「連携の方は、私たちがやらなくても大丈夫そうですね?」

「……そうだね。自分たちで連携までしていた。」

少し後ろの方で霞と、いつの間にか人の姿に戻っていた十六夜は話していた。

「あの2人なら、安心してもののけ退治を任せられそうです。」

「ま、期待よりはできそうって感じだね。」

「素直じゃないですね。サツキちゃんに指示を出さずにのびのびと動かしたのは、指示をせずともいけると判断したからですよね?」

「……まぁ、あれくらいの相手ならあの子は自由に動かした方が良さそうと思っただけさ。」

十六夜がいつも通りの揶揄うような笑みを浮かべている。霞はその表情を見てくすりと笑った。

「……やはり、仲間がいるのは心強いですね。」

十六夜は一瞬目を丸くして、何も言わずにまた笑っていた。


「それでは帰りましょうか。」

「そうだね、もうもののけの気配は感じないからね。」

2人はゆっくりとナギとサツキの方へ歩み、常世の世界を後にした。

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