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53.二人で常世の世界へ

「お待たせ!」

ナギとサツキが息を切らしながら2人の元へやってきた。商店街の路地の行き止まりだった。


「それでは、行きましょう。」

霞の声にナギとサツキは顔を合わせて頷きあった。そして、指輪を気配のする方に翳すと禍々しい渦が現れた。

「行くよ、サツキ。」

「……うん。行こうナギ。」

2人は真剣な面持ちで渦へと足を踏み入れた。


ーーーーー

2人は常世の世界へとたどり着いた。暗く、捩れた不気味な木々に気持ちの悪い風。何度来ても異様なものだった。

「改めてくると、気味が悪いねここ。」

「私も慣れない。」

2人は辺りを見回しながらつぶやいた。ナギはちらっとサツキを見て、横にいることに頼もしさを感じていた。


「さて、2人ともそろそろ準備をするよ。」

霞と十六夜が後ろからゆっくりと歩いてくる。十六夜も霞も気合いは十分な表情だ。

「よし、じゃあ行くよ!ナギ。」

「うん!」

2人は顔を合わせて頷きあい、高らかに指輪を掲げた。

「「"魔装"」」

2人の力強い声が静かな常世の世界に響く。光に包まれて、それぞれが魔法装束へと変わった。

「おぉ、すごいすごい!」

サツキは自分の装束をくるくると見回している。まだ2回目なので気持ちも新鮮なようだ。

「サツキの衣装、ちゃんと見るの初めて。動きやすそうでかっこいいね!」

この間は倒れていて遠巻きにしかサツキのことを見ていなかったので、ナギにとってもサツキの魔法装束姿はほとんど初めてだった。

「ありがとう!ナギも似合ってるよ。」

「ふふっ。ほんと?嬉しい。」

2人はまるでブティックで試着しあっているかのような和やかな雰囲気で話している。

「はぁ………、全く。これからもののけ退治なので少しは緊張感を持ちなよ、2人とも。」

肩をすくめながら、十六夜がサツキに近づく。

「「ご、ごめんなさい。」」

2人はしゅんとし、頭を下げる。

「ま、まぁいいじゃないですか。2人とも初めて2人で常世の世界にきたんですから、多少なら安心感はあるはずです。」

霞が慌ててフォローをする。

「ま、緊張しすぎているよりはいいか。」

そう言いながら、十六夜は刀の姿になった。サツキは十六夜を背中に背負う鞘へと納めた。

その様子を見てナギは霞の方へ目を向ける。

「今日もよろしくね!霞。」

「はい。頑張りましょう。」

霞は笑顔で応え、刀へと姿を変えた。いつもよりも霞も笑顔だった。霞にとっても十六夜が一緒にいるのはとても心強いことなんだとナギは嬉しくなった。


ーーーーー

2人は奥へと歩き始める。

「なかなか、もののけ現れないね。」

「このまま現れなきゃいいのにな〜。」

サツキが手を頭の後ろに回しながら呟いた。

「そしたら、なんで私たちここ歩いてるの。」

「……確かに。」

2人は思わず笑った。霞も和やかなおしゃべりに笑ってしまった。


(ナギはとてもリラックスして臨めているようでよかったです。)


今までの常世の世界でのナギは霞を心配させないように気丈に振る舞ってはいたが、いつも手や足は少し震えて顔もこわばっていた。だが、今は顔も安心していて手や足も震えはない。霞もナギの様子を見て仲間がいる安心感を感じていた。

「おしゃべりしてるところ悪いけど、そろそろもののけの気配が近い。まぁ、小さいもののけたちだけどね。」

十六夜の一言で2人はすぐに和やかなムードから真剣な眼差しへと変わった。


(おや、意外と切り替えは早いみたいだね。)


十六夜は密かに感心をしていた。

「さて、結局のところ2人での戦いは本番勝負になっちまった。がんばりなよ。」

十六夜が淡々と2人に指示を出す。

「わかった!」

「頑張る!」

サツキもナギも力強く頷く。

「とはいえ、連携は最初は難しいだろうから私らも"伝心"で補助するから安心しな。」

さっきとは変わって十六夜が優しい口調で語る。

「伝心?」

ナギは聞き覚えのない単語に疑問を持ち、霞に聞いた。

「私たち刀は、言葉を口で発さずともお互いで意思疎通を取ることができるんですよ!」

「へぇーすごい!」

「テレパシーみたいな感じかな?」

霞は少し得意げな口調だった。

「ですので、私と十六夜が伝心で連携の指示を出しますから、安心して戦闘に臨んでください。」

「「わかった。」」

「ふふふっ。」

息のあった返事を見せる2人に霞は思わず笑ってしまった。

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