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4.戦うということ

週末ということで2本投稿!

「いきましょう!」


霞の掛け声に合わせて、ナギがもののけ達に斬りかかる。


「はぁぁぁ!」


ナギが叫びながら近づき斬りつけた。もののけは光に包まれ消滅した。普段の力なら刀なんて振れるはずもないが、魔法の力を帯びているナギは鋭く動けていた。


「やった!」


ナギは思わず小さくガッツポーズをした。


「油断は禁物です。まだきます!」


今度は獰猛な、目を光らせた猪のようなもののけが地面を削りながら、こちらへ突進してくる。さっきのもののけよりも少し足が速い。止まることなくナギへまっすぐ突っ込む。ナギは足がすくんでしまい動けなかった。


「主人!」

「きゃっ!」


ナギは勢いそのままに後ろへ吹き飛ばされ、地面を転がった。


「ううっ」


ナギは刀を杖のようにしながら、よろよろと立ち上がった。


「主人。ああいう相手はまず足を狙ってください。指南を頭に送ります」


すると、ナギの頭に自分の知らないはずの映像が流れてくる。霞が何か魔法のようなもの使っている、そんな映像だった。


「これは…?」

「私の使える魔法の一つです。これであのもののけの足元を狙ってください」

「うん、わかった!」


ナギはもう一度足の速いもののけに対峙する。もののけは再び相変わらずの勢いで突進してくる。ナギはその動きを見極めて力強く技の名前を叫んだ。


「"いばら"!!」


指輪が淡く光り、足元に小さなイバラの輪っかが現れて猪のようなもののけはわずかによろけ、体勢を崩した。


「今です!」

「うん!」


体勢を崩した猪のようなもののけに素早く斬りかかる。遠吠えにも似た断末魔と共に、もののけは霧散していった。


「やった……倒せた」


ナギ肩で息をしながらその場に座りこんだ。


「お疲れ様です。主人」


霞は人の姿に戻り、座り込むナギへと声をかける。


「う、うん霞もお疲れ様」

「先ほど受けた攻撃でどこか怪我をしていませんか?回復致しますので」


ナギの左足にはいくつか傷がついていた。霞はしゃがんでナギの足に手をかざし魔法をかける。優しい光が傷をつつみ、みるみるうちに傷は治っていった。


「なんだか気持ちいい……。ありがとう……霞」

「いえ、これくらいは。主人も鍛錬すればできるようになるはずです。いずれは戦闘の中でも上手く扱えるように」


霞は変わらずに淡々と話を終えると、立ち上がり奥へと進もうとする。ナギは立ち上がらずに下を向きながら顔を曇らせた。


「………。霞は怖くないの?」


ナギがひどく弱々しい声でポツリと呟いた。


「私は大丈夫なので心配なさらず。主人のためにもののけと戦うことが使命です」


霞は相変わらずの無表情だったけど、その目は決意が宿っている。だが、やっぱりどこか不安で寂しそうな目をしていた。


「これより先にもっと強いもののけの反応を感じます。おそらくそれを打ち倒せばこの辺りの邪気は一度消えるでしょう。ですから主人、この後も頑張……」


霞はナギが小刻みに震えていることに気がついた。


「主人……?どうしましたか?」

「へっ?ううん、大丈夫だよ!すぐに向かおう」


ナギは立ち上がりぎこちない笑顔を見せる。霞は少し気になりはしたが、それ以上は深く考えないようにした。


「……わかりました。それではいきましょう」


二人は並んで、より奥へと歩いていった。


「基本的には今のように刀を振るってください。主人は今、私の魔力も扱うことができます。まだ主人は魔力は少ないはずなので、基本的には私の魔力をお使いください」

「うん……分かった……」


ナギは明らかにここに来た時よりも元気がなくなっていた。霞も一瞥しつつ、そのまま奥へと歩いていく。


「なんだか変な感じがする」


ナギはさっきから車酔いのような気持ちの悪い感覚に襲われていた。不安と緊張も入り混じり視界さえも揺らいでいる。


「常世の世界では時間の感覚が少しおかしくなりますのでお気をつけて」

「そうなんだ……。不気味だね」


霞が再び簡単な回復魔法をかけると、ナギの気分はすっきりとした。


「あ、ありがとう。だいぶ良くなったよ」

「いえ、私の方も気が回らずに申し訳ありません」


それだけいうと霞はまた歩みを始める。ナギは重たい足取りでその後ろをついていく。




しばらく歩くと霞が突然足を止めた。


「いました。あれです」


一歩歩く度に、大地を震わすほどの大きな足音を立てる何かがこちらへと少しずつ近づいてくる。


「あれと……戦うの?」


そこにはナギの身長の2倍ほどで長い腕を振り回す一つ目の鬼のような生物がいた。長いツノも牙もその恐ろしさをより際立たせる。ナギはさっきよりも強く震えていた。


「主人……どうされましたか?」

「はぁ、はぁ……ぁぁはぁ」


恐怖からか呼吸がだんだんと乱れ、手の震えも止まらない。


「主人、落ち着いてください。私の力を使えばあの程度のもののけには負けません」

「で、でも……わたし……」


ナギの声は上擦っている。

鬼のもののけは、ナギに気づきゆっくりと歩いてくる。一歩ずつ確実に。


「主人。もののけがきます。私を構えてください。私が主人を必ず守り抜きます」

「霞……」

「この身が滅びようとも主人を守ることが私の使命です。私のことを思いっきり振るってください」


ナギは霞の力強い言葉に、僅かながらも落ち着きを取り戻した。


「……わかった。ありがとう」


霞の言葉で恐怖は和らぎ、大きく深呼吸をして呼吸を整える。


「絶対負けない!行くよ、霞!」

「はい。お任せください!」


鬼が咆哮をあげ、また一歩また一歩と大きな歩幅で近づいてくる。ナギは霞を構えて神経を集中させる。二人と鬼との戦いが幕を開けた。


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