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36.地を駆ける鳥のもののけ

鳥のもののけは繰り返し突進を仕掛けてくる。ナギはギリギリのところでなんとか避け続けていた。

「考える時間がない……!」

ナギは考えてから動く方が得意だった。だが、ひっきりなしに突進してくるせいでわずかの思考を巡らせる時間さえもない。

「びぇーーあ」

「また来ます!」

霞の声と同時に、鳥のもののけが砂煙をあげながら突進してくる。

「一か八か……"いばら"!」

イバラで鳥のもののけを拘束する。鳥のもののけは動きを止められ、がさごそと体を揺らしている。

「止まりました!」

「……ううん。ダメっぽい」

鳥のもののけが身体から火を放ちイバラを焼き尽くした。

「……やっぱり火と相性が悪いね」

再び、飢えた獣のように足を踏み鳴らして迫ってくる鳥のもののけ。ナギは素早く横に跳び避けるが、その羽先がかすかに左腕をかすめた。

「うっ……」

「ナギ!大丈夫ですか?」

「……うん。これくらい平気」

ナギは左腕に少し傷がついている。急いで回復魔法をかけて傷を治す。

「次は……これならどう?」

鳥のもののけはまた突進してくる。冷静にナギはその様子を観察する。

「今!"いばら"!」

走る鳥のもののけの足元にイバラの輪を作り躓かせる。

「今です!ナギ一気に決めましょう!」

「うん!」

ナギは一気に速度をあげて近づき、鳥のもののけを渾身の力で斬りかかった。

「ひぇあーー!」」

「えっ!?」

もののけは雄叫びをあげながら、全身を炎で包み込んだ。その瞬間、霞の刃は弾かれ、ナギは反射的に後方へ宙返りで距離を取る。熱が肌を焦がすように感じられ、額にはじっとりと汗がにじんでいた。

「霞、怪我してない?」

霞を真っ先に心配する。

「はい、これくらいでは傷つきません!」

幸い刀をみる限り傷もついていなかった。

「ですが、やっかいですね」

「うん。刀が届かない」

(速さだけじゃなくて火も……。)

霞の魔力では火を打ち破るには強力な一撃が必要だ。だが、それにはどうしても溜めが必要で、その隙を今の状況では作ることができない。そうなると、取れる選択肢は一つだけだった。

「霞、花衣いくよ!」

「……はい」

ナギの声は、迷いを振り払ったように澄んでいた。だが、霞の心にはほんのわずかなためらいがあった。

もしも効果切れで動けなくなった時、仲間がいない現状では反動を回復する隙がない。今までは効果切れの前になんとか倒せていたため最悪の事態は避けてこれていた。

「ナギ……危なくなれば花衣が切れる前に退きましょう」

「うん。でも、大丈夫!一気に決めるから」

ナギは力強く言い放った。霞はその声を信じることにした。

「では、行きましょう!」

「いくよ!!"花衣三分咲き"!」

ナギは光に包まれ、装束は薄桜色になる。描かれた蕾は少しだけ開きナギの能力は一時的に強化される。

「はぁぁあ!」

ナギは一気に距離を詰めて刀で斬りかかる。鳥のもののけは発達した足を蹴り上げて攻撃を弾き返した。

「くっ……でも、いける!」

ナギは再び駆け寄り鳥のもののけへ接近する。

「ひぇあ……?」

鳥のもののけは不利と察したか、ひらりと向きを変え逃げ始める。

「逃さないよ!"いばら"!」

イバラで拘束する。鳥のもののけはすぐに火を出して引きちぎったが、最高速を出す妨害にはなっていた。

「これなら届く!くらえ!」

鳥のもののけは今度は火を放ちそれを防ぐ。だが、防ぎ切れずに後ろへ飛ばされた。

「よし、もう少し」

ナギは少しずつ勝ちに近づいていることに声が明るくなってきていた。

「……びぇあーーびー!」

怒りの咆哮と共に、もののけの全身からさらに激しい炎が噴き上がる。燃え盛る熱気に、ナギも霞も一瞬、動きを止めた。

「……」

「霞大丈夫?」

「は、はい」

炎に対しては霞の魔法は威力も半減してしまう。霞は勢いを増していく火に少し不安を覚えているようだった。

「大丈夫……絶対勝てるよ」

ナギは霞の不安をかき消すようにつぶやいた。

(私も、弱気ではいられません。)

「ナギ、足りない分は手数で攻めましょう」

「うん!なら、霞"形態変化"!」

刀から薙刀へ持ち替えて再び鳥のもののけへと対峙する。

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