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34.ナギの長い一日

日曜日の朝、ナギはのんびりと朝ごはんを食べている。休みの日はゆったりと朝ごはんが食べられるので気持ちがいい。

「ふぅーー。落ち着くな」

伸びをしながらベランダを見ると霞が朝の日課の水やりをしている。水やりをしている霞の顔はいつも笑顔で、まるで大切な子どもを育てているような優しさが滲んでいる。

「ベニちゃん、シロちゃん今日も元気に頑張りましょう」

水を上げ終えてジョウロを片付けて部屋の中に戻ってくる。

「ベニちゃんの調子はどう?」

「はい、少しずつ大きくなってきてるんですよ!きっと綺麗な花を咲かせます」

「ふふっ、楽しみだね!」

「はい!早く元気に咲く姿がみたいです。」

霞は花が咲いている様子を想像して口元を綻ばせている。霞はベニちゃんとシロちゃんの話になると一気に表情が明るくなる。暇さえあればベニちゃんとシロちゃんに話しかけていた。

「さて、元気ももらいましたし私は鍛錬をしてきますね」

「うん。私は午前中に残りの課題を終わらせてから道場に行くね!」

「はい。ですが、無理はしてはいけませんからね」

ナギは無理をしすぎる癖があるので念を押して言った。

「うん。大丈夫だよ!昨日も今日もゆっくり眠れて、大分元気になったから」

ナギはわざとらしく腕を上下に動かして元気をアピールする。明るい表情を見て、霞も安心した。

「そうですか、それならよかったです。では、私は先に」

霞は丁寧に一礼をして道場の中に入っていった。

「私も早く道場にいかないと!」

ナギは机に向かい、プリントを広げて課題に1つずつ丁寧に取り掛かった。


ーーーーー

霞は一人で竹刀を振り鍛錬をしていた。今日は刀としての自分の動きを確認するために自ら刀を持って鍛錬していた。

「ふっ、ふっ、ふっ!」

静寂を切り裂くように鋭く竹刀を振る。

「お待たせっ。遅くなってごめんね!」

ナギが息を弾ませながら道場へ入ってきた。

「大丈夫ですよ。勉強の方は終わりましたか?」

「うん、バッチリ。課題も終わったし、明日の予習もオッケーだよ。さ、一緒に鍛錬頑張ろう!」

「はい。では、まず基礎の動きの確認をしましょう!」

「うん」

ナギも竹刀を取り足さばきや振りの確認を始める。基礎の積み重ねは、もののけと戦う時に落ち着いた動きをすることができる軸となる。ナギも鍛錬を重ねることで少しずつだが自信を持てるようになってきていた。心のゆとりは戦いにおいては大きなアドバンテージになる。

「ふぅ……」

30分ほど休まず鍛錬を続けたナギは、持ってきたタオルでかいた汗を拭きながら一息をついた。

「少し休憩にしましょう」

「うん。休憩が終わったらまた新しい技の特訓だね」

「……はい」

霞は自信なさそうに呟いた。昨日ナギと色々と考えたが、なかなかイメージが固まらず心はざわつく。

(早く会得しなければ……。)

強くなるもののけたち。今のままでは勝てないかもしれない。一人で戦わなければならない今、霞はみんなの分まで自分がなんとかしなければと、焦りを募らせていた。

強く握った拳が、微かに震えている。

「……霞?」

その様子を、ナギは見ていた。

「大丈夫?」

「えっ?はい!だ、大丈夫ですよ。技を頭の中で組み立てていただけです」

無理に笑顔を作る霞。だがその表情には、どこか不安の影があった。

「……よし、休憩終わり!鍛錬再開しよう」

ナギも薄々霞の焦りに気づいていた。だからこそこうして霞の新技の練習にアイディアを出したりしていた。

「まずは、一つに絞った方がいいと思うからどれにしようか?」

「そうですね……」

霞はパラパラとノートをめくりながらどれにしようか考えていた。

「これにしましょう!」

霞が開いているページは乱戦で使える舞のようなものだった。

「成る程……」

「これならば、今の私の技に近いものがあるので、少しは形にできる気がします」

ナギも同じように、この方が姿を消したり攻撃を飛ばすよりも現実的な気がしていた。

「では、早速始めましょう……!」

ナギと霞は動き回りながらあぁでもない、こうでもないというように何度も試行錯誤を繰り返した。だが、やはりなかなか上手くいかなかった。

「んー。なかなか難しいね」

「そうですね……」

霞の表情が沈む。声も少し暗い。ナギもまだ未熟な自分では良いアドバイスはなかなかできず、胸が苦しくなった。

(霞の仲間がいたらきっと……)

霞の孤独や苦しみを思いナギの胸が締めつけられる思いだった。

(……いけません。私が不安な顔をしてはナギがまた心配をしてしまいます!)

霞は首を横に振り不安な気持ちを振り払った。

「……落ち込んではいられません、ナギもう少し手伝っていただけますか?」

「うん!」

ナギは力強く頷く。二人ならやれる、今はそんな気がしていた。


その時。


ナギの頭に嫌な気が流れた。

「うっ……。霞、もののけがでたみたい」

「そのようですね。ナギ、いけますか?」

「うん、急いで向かおう!」

二人は道場をすぐに出た。ナギは部屋へ戻るとコップに水を入れて一気に飲み干して部屋から急いで飛び出した。

次の戦いはすぐそこまで迫っていた。

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― 新着の感想 ―
霞さん……焦るのも分かるけど、しっかり自分を大切にして欲しい……( ノД`)シクシク…
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