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33.霞の新技開発

次の日は土曜日だったのでナギは家でのんびりとしていた。

「ナギ、昨日は仲直りできてよかったですね」

「うん。ほんとよかった。サツキとあのままだったらどうしようって思ってたから」

ナギはコップに入れた水を飲みながら答えた。昨日はサツキと久しぶりにいつも通りに話していた。今日も遊びに行きたかったが、とりあえずゆっくり休んでと言われ、家で過ごすことにした。

「霞も、昨日は心配させちゃってごめんね」

「いえ、ナギが元気になってくれてよかったです」

霞は柔らかい笑顔で、植木鉢に丁寧に水をかけている。その様子をナギは静かに目を細めながら見つめる。

(きっと、霞はもっと寂しいんだろうな。)

霞の仲間は、まだ現れていない。一人きりの世界での孤独感は、ナギが想像する以上に孤独で心細いはずだ。

「ふー。ご飯の時間はおしまいです。シロちゃん、ベニちゃん」

霞はジョウロをベランダの隅に置いて、部屋の中に戻ってきた。

「では、ナギ。私は道場で鍛錬をしてきますね」

「うん。私もお昼終わったら道場に行くね」

「はい。では、先に行ってますね」

霞は手にノートを持って、道場に入っていった。


ーーーーー

「ふっ、ふっ、ふっ」

霞は準備運動をして鍛錬に集中していた。

「……」


〜〜

昨日の出来事。

「霞さん」

「は、はい」

ナギがトイレに立った時に、サツキが霞に話しかけた。霞は少し緊張した声で返事をした。

「あの、ナギのことよろしくお願い致します」

そう言うと、サツキは頭を下げた。

「えっ?」

霞が戸惑うと、サツキは俯きながら小さく言葉を継いだ。

「ナギ、真面目で頑張り屋だから。たまに無理に色々抱え込んじゃうことがあって……」

サツキは目線を下に落として震えている。

「って、私がいうようなことじゃ……ないですよね。でも、その……できればあんまり無理をさせないであげてください。……何か頑張ってるみたいだけど、私が力になれることはなさそうみたいなので」

霞を見るその顔は、どこか寂しげで、それでも微笑んでいた。

「……はい。ナギには無理をさせません。ですから、サツキちゃんはナギのそばでいつも通りにいてあげてください。」

「……はい。その他のことは私がナギを助けます!」

サツキははっきりとした笑顔で答えた。二人ともナギを思う優しい気持ちは同じだった。

〜〜


「二人のためにも私が強くならなければ!」

ナギとサツキがなるべく一緒に過ごせるように霞は鍛錬により一層向き合う。

「お待たせー、霞」

道場にナギが姿を見せた。

「いえ、ちょうど準備運動が終わったところです」

霞は足を伸ばしたりしていた。

「じゃあ、今日もがんばろっか」

「はい!」

ナギは、ふと道場の隅に置かれているノートが気になった。

「最近よくノートを持ち込んでるけど、何か見てるの?」

ナギが聞くと、霞はパラパラとノートの中を見せてくれた。

「ナギと一緒に戦ったもののけの情報をまとめているんです。最近は種類も増えてきたので見ながらの方が頭の整理がしやすくて。対策も練らないといけませんし」

「あー、なるほど……」

「それと、実は……」

霞が少し照れくさそうに何かを書いたページを見せてくれた。

「これは?」

「新しい技を会得しようと色々と考えていまして……」

ノートのページを見ると、何かイラストのようなものとその横に色々とメモ書きが書いては消したようなあとがあった。

「……なかなか上手くいかなくて」

「そっか、まぁ新しいことを覚えるっていうのは難しいよね……」

「……はい」

霞は自信なさげに目線を逸らした。

「でも、どうして急に」

「……新しい技があれば色んな状況に対応しやすくなるので、その……ナギの負担が減るのではと思いまして」

霞は人差し指同士をつつき合わせながらもじもじと答えた。

「そうなんだ……。ありがとう霞」

ナギはそっと微笑んだ。

「私も一緒に考えるよ!どういうのを考えてるの?」

「はい!まずこれです」

霞はページの1箇所を指差しながら答えた。

「これは?」

「これは、魔力をしゅっと飛ばして遠くからもののけを攻撃する技です!遠距離からの攻撃ができれば、牽制にも使えて色々と便利だと思いまして」

「……そ、そうだね……じゃあこれは?」

ナギは次のページを指差した。

「それは相手から姿を見えづらくする技です。気配を消すことができれば、椿の舞のように溜めが必要なものも隙を見せずに繰り出せます」

「じゃあ、これは……?」

「これは、周りの敵を一気に片付ける技です。周りを囲まれた時や、数だけで押してくる弱いもののけをすぐに薙ぎ払えます」

「……」

なんとなく話してわかった。霞の新技はふわふわとしたイメージだけで、具体的なものは何もまだ浮かんでいない。というより、どうしていいのかわかっていないような気がした。

(ん?)

ナギはページをパラパラとめくりながら、あることに気づく。何度も消した文字の中にうっすら見える文字があった。

(いざよいの……ように…?)

他のページにも同じようなあてがきが消されていた。霞は、仲間の技を自分もなんとかできないかとメモをしていたようだった。

(きっと、足りないところを補おうとしてくれてるんだ。でも、専門外のことを一人でやるのって、やっぱり難しいよね。)

ナギは優しく言った。

「霞、私も一緒に考える。私じゃ、力不足だと思うけど少しでも霞の役に立ちたいから」

「はい!ありがとうございます。なかなか上手くできないので、誰かに相談したかったんです」

霞は心からの笑顔を浮かべた。

「よし、二人で頑張ろう!」

「絶対に完成させましょう!」

ナギと霞はお互いに意見を出し合い、試行錯誤しながら新しい技の開発に取り組んだ。未来に待ち受けるもののけとの戦いに備え、二人の絆はまた少し強くなっていくのだった。

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