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26.弓を持つもののけ

ナギは回復魔法をかけたことで、体の痛みはある程度取れてはいるが完全には回復はしていない。ナギの回復魔法では完全に回復するまで時間がかかってしまう。目の前のもののけがいつ再び攻撃をしてくるか分からない状況では、そこに時間をかける訳にはいかない。

「矢が厄介ですね……」

「うん……そうだね。……霞、遠距離攻撃ってできないよね?」

ナギはダメ元で霞に聞いてみる。

「……すみません。遠距離攻撃は私には…。鳳仙花といばらくらいしか。」

霞は申し訳なさそうに答える。いばらは攻撃能力がなく、1箇所にしか発動できない。鳳仙花は霞の技の中では最大の射程を誇るが、それでも中距離程度。弓の攻撃範囲には遠く及ばない。霞の頭を冷たい絶望が覆い始めている。


ーー仲間がいれば、こんな状況でも柔軟に対応できるのに。


ないものねだりが何度も頭を回る。

「だよね……だったらその2つでなんとかしよう」

「ナギ……。そうですね……!」

痛みに耐えながら前を向き、今できることでなんとかしようとしているナギを見て、霞は自分の甘い考えを捨てる。

「ナギいきましょう。私の魔力も上手く使ってください。自分の魔力だけでは持ちません。」

「うん、ありがとう。まずは、弓矢をなんとかしないと、動きづらい。」

ナギはまずは弓を持つ鬼にターゲットを絞った。

「いくよ!"いばら"」

イバラで弓を持つ鬼を拘束する。弓を持つ鬼は身動きが取れなくなった。

「今です、ナギ!」

「うん!」

距離をとり、ナギは力を溜めて椿の舞の準備に入る。だが、1匹の鬼が物凄い勢いで突進をしたきた。ナギは横飛びで躱す。躱した先でまたもう1匹の鬼が棍棒を叩きつけてくる。

「……っ」

ナギはこれもギリギリのところで躱す。

その時、鋭く風を切る音が近づいてくる。いつのまにか拘束を解いた鬼から再び飛んできた矢がナギの腕を掠めた。

「もう。まだ……動かないで!"いばら"!」

再び弓を持つ鬼をイバラで拘束し、動きを封じる。

「霞、形態変化!"鳳仙花"」

ナギはぐるぐると薙刀を回し閃光で棍棒の鬼2匹を攻撃。そのまま一気に近づき1匹を切りつけようとする。だが、閃光の攻撃が外れた隙にもう1匹の棍棒を持った鬼が思い切り地面を叩き、砂埃を巻き上げる。

「うわっ」

砂ぼこりに視界を奪われたナギの動きが、一瞬止まる。その隙を狙っていたかのように鬼たちは再び動き出す。抑えていた鬼も、拘束を振りほどく。

矢が、また鋭く飛んできた。

「はぁ……はぁ……もう3対1なんてずるい」

「なんとか、数を減らさなくては」

「うん………」

もう一度鳳仙花、いばらで牽制しながらもののけ達へと攻撃を試みるものの何度やっても同じように返されてしまう。3匹がそれぞれを守りながら戦ってくるので突破口を見出せない。

「霞、大丈夫?」

「はい」

「別々に戦えたら、やりようもあるんだけど……」

「……」

霞も焦りが出てきていた。早く何か策を講じなければナギの体力、魔力が持たない。霞は再び不安に襲われる。


(このままでは……まずいです。)


その時霞に小刻みに震えが伝わってくる。霞を持つ手が震えていた。

「ナギ、大丈夫ですか……」

「う、うん。だ、大丈夫だよ。霞……し、心配しないで」

声にいつもの元気がなく、震えている。多勢に無勢、突破の糸口が見えずナギは孤独な戦いに恐怖を感じてしまっていた。

「はぁ、はぁ、ぁぁ…。」

その様子はまるで初めてもののけと戦った時のよう。戦いを通して成長をしてきてはいるもののまだ未熟で、脆い部分もあった。


(ナギ……私を励ますためにずっと無理を……なのに、私は……)


霞はグッと心を奮い立たせる。

「ナギ!!」

「な、何?」

霞は敢えて大きな声をあげた。自分に気合いを入れるため、そしてナギの不安を払うために。

「私がついています!!絶対に負けません。大丈夫です!!」

「霞……。………ふふっ、なんだか初めて霞と戦った時みたいだね。……うん、そうだね!霞と一緒なら負けない!」

「はい!!」

霞の一言でナギの震えは止まり、声にいつもの明るさが戻った。

「霞、花衣で一気に決めるよ」

「はい。鍛錬の成果、見せてやりましょう!」

2人は気合いを入れ直し、3匹の鬼へと対峙する。状況は何も変わっていない。それでも、今の2人は負ける気がしなかった。

「いくよ!"花衣三分咲き"!!」



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