25.また河川敷
ナギと霞が気を感じる方へと着いた。
そこは、霞と初めて常世の世界へと入った河川敷だった。
「また、ここなの?」
「そうですね。ここが、もののけたちにとって干渉しやすい場所になっているのかもしれません」
「そういうこともあるの?」
「はい。以前も同じ場所をよく狙って来てましたから」
「じゃあ、変な噂がまた立つ前に片付けないと!」
ナギは小さく息を吐き、常世の世界へと足を踏み入れていった。
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相変わらずおどろおどろしい木々が並んでいる。
「ナギ、気配が近づいてきています。準備を……」
「うん。"魔装"!」
ナギは薄紫色の魔法装束に身を包み、奥へと一歩ずつ歩みを進める。
「来ました……」
「うん!霞、力を貸してね」
ナギは霞を構えてたくさんの群衆のように迫ってくる小さなもののけに立ち向かう。
「霞、形態変化!」
霞を薙刀に持ち替えて一気に薙ぎ払う。その時、以前倒した蛾のようなもののけが飛んできた。
「練習通りにいくよ。"鳳仙花"!」
ナギはぐるぐると薙刀を回して閃光を飛ばす。その閃光にたくさんの蛾やもののけが打ち倒されていく。閃光だけでは倒れないもののけは、薙刀の鋭い刃で切り裂いていった。
「ふぅ。全部片付いたね」
「はい。やはりあのように数だけでくる相手には鳳仙花が有効ですね」
「うん。これが1番消耗が少なくてすむね」
ナギは一度刀を鞘に戻し、息を整えてさらに奥へと進む。
「いた。3匹……」
そこには目が一つの鬼が3匹。いつもよりサイズは大きくなかったが、それでも2mほどはある。1匹は何も持っておらず、残り2匹は棍棒を持ち1匹を守っているようだった。
「まずは、周りの2匹を。1匹ずつ確実に打ち倒しましょう」
「うん。難しそうだけど、なんとか頑張る!」
ナギは刀を構えて鬼へと立ち向かう。
「がぶぉーー」
棍棒を持った鬼は咆哮をあげ、2匹同時にこちらへ向かってくる。
「ナギ!!」
「うん、"いばら"!」
地面から刺々しいイバラが伸びる。2匹のうち1匹がイバラによって拘束されて、身動きが取れなくなった。もう1匹の鬼は一瞥し、動きが一瞬硬直した。
「1対1なら、いける!」
ナギは刀を鞘に戻し、力を溜めて椿の舞の構えに入る。
「えっ!?」
その時奥から、風を切る鋭い音が迫る。反射的に身を翻したナギのすぐ横を、何かが突き抜けていく。
「今のはまさか……矢?」
「うん。そうみたいだね」
ナギは奥にいたもう1匹の鬼が弓をつがえているのを確認した。鬼は、次の矢をすでにこめている。
「すぐにきます!」
矢はすぐにこちらへ飛んでくる。ナギは同じように横へ飛び回避するが、今度はそこに棍棒を持った鬼が目の前にいた。
「嘘っ……」
棍棒で鬼が叩きつける。これもギリギリで躱したが、イバラで拘束していた鬼がこちらに突進をしてきていた。
「きゃっ」
これは避けきれず、直撃して弾き飛ばされ、おどろおどろしい木に体を打ちつけた。
「うぅ……」
「ナギ!しっかりしてください」
ナギは全身に痛みが走りうまく動けない。
「すぐに回復を!」
「わかっ……てる」
ナギは自分に回復魔法をかけてなんとか立ち上がる。
目の前には3匹の鬼がこちらを睨み咆哮をあげている。
対してこちらは1人。
「くっ……どうすれば」
「はぁ、はぁ、大分……ピンチ、かな」
痛む体を引きずりながらナギはふらふらと立ち上がり、刀を握り直した。