1.新学期
始まりました。人と刀たちの優しい物語です。ゆっくりと見守ってくれると嬉しいです。
新学期。
今日からナギは高校2年生になる。1年着てすっかり慣れた制服に袖を通す。玄関のドアを開けると春らしい気持ちのいい風が吹いている。肩まであるナギの黒く長い髪がふわっと靡いた。
桜が舞う通学路をナギは歩く。
「ナギ〜!!おはよう!」
ナギにとって聞き慣れた明るい声が後ろから近づいてくる。
「サツキ!おはよう!」
ナギが名前を呼ぶとサツキも笑顔になり、横に並ぶと2人は並んで歩きだした。
「今日から新学期だね!クラス分けドキドキする!」
サツキが話を振ると、ナギは力強く頷いた。
「うん。またサツキと同じクラスになれたらいいな〜」
「そうだね。まぁ、なれなくてもお昼とか放課後とかは遊ぼうね!」
「うん!」
サツキはナギの幼馴染。活発で運動神経も良い女の子。どちらかといえばインドア派のナギとは逆のタイプで、いつもナギのことを引っ張ってくれる。ナギにとってかけがえのない親友だ。
2人は校門をくぐり、クラス発表が掲示されていてる廊下へと急いだ。
廊下の人だかりからぴょんぴょんと跳ねたり、背伸びをしながら自分のクラスを探す。サツキも青みがかった黒い髪を揺らしながら跳ねている。
「あっ、あったあった!えっと…私は3組!」
「私も3組だよ!サツキ一緒だね!」
「ほんとだ!よろしくね、ナギ!」
「うん!本当に嬉しい。よろしくね!」
ナギとサツキは手を取り合い、飛び跳ねて喜んだ。
ーーーーーーーー
クラスが決まった後は、体育館に集まり朝会が行われる。新しいクラスで並び、みんな思い思いに話をしていて少し騒がしい。
「続いては、生徒会長のマオさんの挨拶です」
「えっ、えっと、み、みなさん、しんがっきになりえっと………」
この学校では生徒会長は2年生が務めることになっている。進学校のため部活を含めて3年生は受験勉強モードへと切り替えることになっている。その代わり一定の成績を取っていれば学費は無料であり、さらに月毎に生活費が支給される。この学校は金銭面や様々な事情で進学を諦める学生のために設立された学校だ。サツキやナギも今は一人暮らしをしている。
「で、では、あ、挨拶をおわりまふ!」
生徒会長の挨拶が終わるとあちらこちらで笑いが起こっていた。
「ふふっ。おわりまふだって」
「五十嵐さんより絶対雪村さんの方が生徒会長に向いてると思うんだけどね…」
生徒会長の五十嵐マオは少し照れくさそうに顔を下げて舞台袖にはけていった。
「はぁ…失敗しちゃったな……」
ため息を吐きながら、マオは少し落ち込んでいた。
「お疲れ、マオ。緊張してたみたいだけど少しずつ慣れるよきっと。」
そんな様子を舞台袖で待っていた、副会長のアリサが慰める。
「あ、ありがとう。やっぱり絶対アリサの方が向いてると思うよ」
「ふふっ。そんなことないよ。マオの方が絶対できるから。これからも頑張って。副会長として私もしっかりと手伝うから」
「うん、ありがとう」
ーーーーーーー
初日ということもあり、学校自体は午前中で終業だった。
「ナギ、一緒に帰ろ!」
「うん!帰ろ帰ろ!」
二人は学校から帰り、いつも行くカフェでコーヒーとケーキを食べていた。
「いや〜。でもナギと本当に同じクラスだなんてね」
「ほんとだね!嬉しかったよ!」
「しかも先生も優しいってよく聞く人だから色々な意味で当たりだよ、私くじ運本当にあるな〜!」
サツキは何かを噛み締めるように目を閉じて頷いている。
「サツキは昔からくじ運よかったからね」
いつもこういうふうにカフェや帰りに和菓子喫茶で二人は他愛のない会話をして楽しんでいた。
「でも、まぁ勉強もまた頑張らないとね〜」
サツキがため息をつきながら言った。
「うん。また難しくなりそう……」
「うぅ。ナギまたテスト前はよろしく」
「そこは任せといて!」
ナギがポンと胸を叩いて言った。サツキは運動は得意だが、勉強はそこまで得意ではない。テスト前は2人でいつも勉強をするのが恒例行事だった。
ひとしきりカフェで話して二人はお店から出た。
「そういえば、知ってる?なんか最近この辺りで急に体調が悪くなったりする人たちが多いらしいよ。」
サツキがスマホを取り出し、一つのネットの投稿をナギに見せた。
「あ、なんか聞いたかも。あれでしょ?夕方に河川敷に近づくと〜みたいな動画」
「そうそう、だからあの辺にはしばらく近づかない方がいいと思うよ!」
「うん、そうする。サツキも気をつけてね……!」
「大丈夫大丈夫!心配しないで!じゃ、また明日ね〜!」
分かれ道で手を振ってサツキと別れた。
「あっ、そうだ。醤油だけ買って帰ろうかな?」
ナギは家に帰る途中でスーパーへ向かうことにした。
「ん?何、あれ……」
スーパーへ向かう途中、キラキラと光る淡いピンクの光があった。周りを見渡しても誰もその光を気に止めていないようだった。というより誰も気づいていないような感じだった。
「もしかして…私だけ?」
ナギは少し気味が悪く感じた。でも、なぜだかその光自体には恐ろしさや怖さはあまりなかった。むしろ優しく暖かく、誘っているようで……。
ぼーっと眺めているとその光はゆっくりと路地の奥へと消えていった。
「あっ、待って!!」
ナギはその光を夢中で追いかけていった。
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