恋の執行猶予5年
小説家になろうラジオ大賞5 参加作品。
テーマは「5年」です。
「執行猶予5年」
これが彼女が下した、俺からの告白の返事だった。
美人だがクールで無口な彼女。
その容姿から多くの生徒から好意を寄せられるも、冷淡とも言える性格で全て却下してきた。そのため次第に誰も近付かなくなってしまう。
だが俺は知っている。
彼女が努力家なのを。
近所に住んでいた彼女一家。
しかし幼い頃、交通事故で両親を失い孤独の身に。
よく俺の両親が夕食に誘ったりと、世話をしてあげていた。
「私、将来弁護士になる」
事故を起こした人間は、思いのほか軽い罪にしかならなかった。
それからは、彼女は取り憑かれたかのように必死に勉強する毎日。
そんな彼女の過去や態度で、周りから避けられ学校でも孤立するように。
そこで高校生の時、俺は意を決して彼女に告白する。
だが彼女は
「受験があるから」
という理由で正式なお付き合いは5年保留となった。
彼女はこれから法科大学への受験が控え、その先の司法試験を目指さなくてはならない。
確かに俺なんかと付き合っている暇はなかった。
だが俺も彼女の支えになりたかった。
だから常に一緒にいて励ましたり、愚痴を聞いたり。
そしてなんとか2人同じ大学に進学できて、時は流れ告白から5年たった日……
彼女の家に呼び出された俺は、保留だった返事を聞かされる。
「判決を言い渡します」
「おう」
「有罪」
「は?」
「被告は無垢な女性に度重なる性的接触を試みようとし」
「……おい?」
「寝ている隙にキスを迫り」
「いやぁ……つい」
「勉強中に後ろから抱きつこうとし」
「つい出来心で……」
「歩いている時に手を握ろうとし」
「いいだろそれくらい!」
「髪を撫でる、匂いを嗅ぐ、服を触るなどの行為を繰り返し」
「そ、それは!」
「更には私の大事なものまで盗み取るという、悪質極まりない行為をし……」
「まてまてまて!
なにも盗んでないだろ!」
「被告は強盗・強制性交等の罪により」
「なんもしてないっての!」
「無期懲役を言い渡す」
「お前! いい加減に……
……って、なに顔を赤くしてんだよ」
プィって、顔をそむけるんじゃない。
「恥ずかしいのは分かるけどさぁ、俺、真剣なんだからさ、真面目に答えてくれよ」
「あの……
その……
私、
つまらないし、
可愛くないけど、
本当に私なんかで……
いいの?」
「ああ、それ含めて全部好き」
ようやくこの場で俺は彼女を抱きしめることができたのだった。
「ところで俺、なに盗んだの?」
「私の心」
「無期懲役って?」
「一生、償って」
なるほどね。