コント『人がスマホに見える男と若返った婆ちゃん』
B…ボケ T…ツッコミ
B「なんかオレ人がスマホに見えるようになっちゃってさ」
T「はあ? 人がスマホに見えるってどういうこと?」
B「じっと見てると頭のあたりに残り充電量のアイコンとか見えてくるんだよ」
T「そりゃスマホの見すぎじゃね?」
B「うちの婆ちゃん急に元気がなくなってきてさ。心配してたら充電量のアイコンが見えたんだけど、残り1%になっててさ」
T「めっちゃ少ないじゃん!?」
B「それで不安になって婆ちゃんの様子を見てたんだけど、なんか仏壇に話しかけててさ。なにしてるのって聞いたら、死んだ爺さんと話してるって言うんだよ」
T「ああ、それは亡くなった相手を偲んで会話しちゃうやつだな。よくあるよ」
B「それがホントに会話してるようなんで気になったんだ。そしたら婆ちゃんの頭にWi-Fi接続中のアイコンが見えてきてさ」
T「Wi-Fi!?」
B「しかも接続先が天国なんだ」
T「あの世と回線繋がってるじゃん!」
B「婆ちゃん、『はいはい、すぐそちらに行きますからね』って仏壇に話してるんで、これはいよいよヤバイと思ってさ」
T「爺さんが迎えに来てるって! 婆ちゃんヤバイって!」
B「婆ちゃんにはもっと生きてて欲しかったんだけど、それから三日くらいして充電が0%になっちゃって……」
T「おいおい、まさか!?」
B「うん。婆ちゃんぽっくり亡くなっちゃったんだ。本当に悲しかったよ」
T「うわ~、やっぱりか! それは御愁傷様だったな……」
B「いや、まだ続きがあるんだ。それでお通夜に棺の中に入った婆ちゃん見てたら、頭の中に『充電しますか?』って表示が浮かんできてさ……」
T「充電って、婆ちゃんを!?」
B「うん。少し迷ったけど、『充電する』って念じたら充電中って表示が出てさ」
T「そ、それでどうなったん?」
B「充電始めてから一分くらいかな? 婆ちゃん再起動したよ」
T「再起動! 生き返ったんか!?」
B「うん。それから辺りは大騒ぎ。婆ちゃん棺にある小さな窓から無理やり這い出てこようとしてさ。まだそんなに血の気が戻ってなくて、必死な形相だったから恐かったよ」
T「そりゃ恐いわ!」
B「でも婆ちゃんが再起動してくれて嬉しかった!」
T「再起動とかスマホみたいに言うな!」
B「まあそうなんだけど、甦るまでずっと再起動中って表示されてたからさ」
T「そ、そうか……ならしゃあないな。そういや婆ちゃんの充電量、それからどうなったん?」
B「もちろん100%まで充電したよ」
T「100%!? そらきっと長生きするわ!」
B「長生きしてくれるのはいいんだけど、婆ちゃん腰が曲がって半分しか開かないガラケーみたいになってたからさ。ついでになんとかしてやりたいって思ったんだ」
T「半分しか開かないガラケーっておまえ……。いや言いたいことは分かるけど」
B「だから婆ちゃんの衰えた体や腰、なんとかならないかな~って思いながら見てたら、頭の中に『機種変しますか?』って文字が浮かんできて」
T「機種変~ッ!?」
B「調べたら婆ちゃんの機種ってガラケーだったんだよ。通りで腰が曲がってると思った」
T「それは単に歳のせいだろ!」
B「それで最新のやつに機種変しますって念じてたら、表示がガラケーからスマホに変わったんだ。その途端、バキッて音がしてさ、婆ちゃんの曲がってた腰がまっすぐに伸びたんだよ」
T「恐っ! それ腰の骨折れてね!?」
B「いや、むしろ凄くスッキリしたって言ってた。ついでにシワが消えて、お肌もしっとりスベスベになってたし」
T「なんか確実に若返ってね!?」
B「確かに若返ったように見えるけど、それが外見だけだと恐いだろ? だから今度は契約内容を見たいと念じてみたんだ」
T「契約内容なんてあったんだ!?」
B「そりゃあスマホなんだからあるだろ」
T「いや人間だからな? 人間!」
B「それで婆ちゃんの契約見たら、お年寄りがスマホデビューする時に勧められる軽いプランになってたんだよ。だからそれも変更した」
T「聞くのが恐いようだけど、どんなプランに変更したん?」
B「寿命無制限、長生きし放題!」
T「妖怪か! おまえの婆ちゃん妖怪になったんか!?」
B「人の婆ちゃんのこと妖怪とか失礼なヤツだな! 少し人より長生きなだけだろ!」
T「そ、それで婆ちゃんは喜んでくれたん?」
B「そりゃあ若返って喜ばない女の人なんていないだろ。婆ちゃん七十くらい若返ったってだいぶ喜んでたよ」
T「若返りすぎッ! 七十も若返ったら誰だかわからんレベルッ!」
B「だいぶ綺麗になったんで、近頃は近所の爺さんたちがナンパしにきてさ」
T「七十も若返ってたら無理ないわ!」
B「ただな、困ったことにオレにも天国からWi-Fiが繋がっちゃって。死んだ爺さんになんてことしてくれたんだって愚痴られるんだよ。どうしたもんかな?」
T「知るか! もうええわ!」