優の楓の出会い
俺と楓さんが初めて話したのは、入学から一日たった次の日だった。
学級委員長を決めるための投票の後、早速仕事、というところで彼女から話しかけられた。
「ねえ?優君はどうしてクマ、そんなにあるの?」
俺が彼女に対して思った印象は、二つある。
一つは、バカなんじゃないかと思った。クマの前に、眼のクマとか、主語がないと思う。もちろん町中に動物の熊なんか普通出ない。それに自分でも目元の印象は酷いと思ってたから、何となく分かることは出来た。
そして二つ目は、……可愛いと思った。当然だろう。紅毛碧眼。ショートヘア。背は百五十九センチ位だろうか。こんな可愛い人なんか、中々見かけないと思う。
蛇足だが、俺も世間一般で言う、イケメンの一歩手前だと思う。俺は黒髪紅眼で、少し長めの髪。背は百六十八センチ。町中で他人に話しかけられることもある。今となってはこの顔が憎い。男子のお嫉妬の対象になったり、金目当ての女子に絡まれたりもする。本当に、神様は不公平だ。
「……寝てないからだよ。それがどうかした?」
俺は、誰に対しても、心を開けない、俗に言う疑心暗鬼だった。だから不満を隠さずに言う。
「駄目だよ。ちゃんと寝ないと、イライラしたままだよ?」
「んなの知ってるよ。俺は人を信用できないんだよ」
「じゃあ、何で今生きてるの?」
「その手の質問は飽きるほど聞いた。人間は嫌いだけど、生命体としてなら何とも思わない」
俺の率直な返答に、彼女は「生命体?」と驚いてた。
「そう、生命体。俺は家族のことが好きだから、『神崎優の両親』『神崎優の姉』と言う生命体は好きってこと。分かった?」
「……じゃあ、君は私のことが好きなの?」
「……は?」
彼女は驚くべきことを言った。何故その理論になる?
「だってこんなに私に理由を話してくれるんだよ?私のこと嫌ってないじゃん」
「謎理論だな。だからって俺がお前のこと好きと決まったわけじゃないだろ」
「じゃあ、嫌いじゃないんでしょ?」
「それはお前の性格次第だな。仕事しようぜ」
そう言って俺は話を無理やり終わらせた。
「えー?待ってよー!」
―――もしかしたら、こいつなら心を許せるかもしれない。
そう思っていた俺がその時いた。