Another world I
Another world I
「お目覚めですか?」
誰だ。聞いたことのない声が聞こえる。
目を開けると空の上のような空間が広がっていた。
「私の名前はヴェルヴァルド。貴方は死にました。なので次頑張って下さい。以上です。」
何も聞けないまま意識が薄れていった。
起きろ!おい!そう言った声がそばで聞こえてきた。
目を開けると見知らぬ男がいた。
「やっと起きたか。ブレイド。お前学校には行かないのか?」
ん?学校?それにここはどこだ。分からない。だが俺はさっきの奴に死んだと言われた。と言う事は転移魔法か転生魔法でも使ったのか。そんな事できる奴なんているのか。確か昔読んだ本ではそんな伝説も聞いた事はあるが…
「なーにぼけっとしてんだ。んでどうするんだ?
」
そう言えばこの人は誰なのだろう。周りには誰も居ないし聞いてみよう。
「あなたは誰ですか?おそらく僕は貴方の知る方ではありません。」
そう言うと、男は
「なーにおかしなこと言ってんだ。寝ぼけてんのか?そんな子に育てた覚えはないぞ?」
だめだ。話が通用しない。だがこの人しか頼らないならなんとかするしかない。
「本当にわかりません。僕は前世でレイド・シュタインと名乗っておりました。僕が住む世界では魔法というものがあり、それによってその人の価値が問われます。ですが僕は魔力がないという欠陥を持ち、自分で自分の命を経ちました。するとこの体になっていたのです。なので信じてもらえないでしょうが私はこの体の過去の記憶がありません。なので教えていただきたいのです。」
男は一気に真剣な顔になった。
「それが本当なら俺の息子は死んだって言うのか?」
威圧感のある声に体が震えるがこちらも引けない。
「それは分かりません。ですが今確実に言える事はこの体に貴方の息子さんの魂はありません。」
神妙な面持ちをする男。幾許か時が経ち、
俯き暗い顔で
「そうか…俺のせいかもしれないな。」
意外な言葉だった。過去に何かあったのだろうか。これは空気を変えなくてはいけない。
「あの、お互いきっと何も知らないと思うので自己紹介をしませんか?僕の事気に食わないと思いますが…」
男は顔をあげて少し笑って
「俺はフェルツ。悪魔狩りをして名を得て、リアス・フェルツなんて言われているがただのフェルツと呼んでくれ。俺は以前まで冒険者として色々なダンジョンを周り強くなっていった。その中で悪魔大戦に巻き込まれ悪魔を狩った。英雄と呼ばれちやほやされる生活にうんざりして妻と結婚してブレイドを育てていた。妻は10年前に…」
ああ、また暗い雰囲気になる。変えないと!
「僕はレイド・シュタインと申します。
シュタイン家は伯爵の位でした。年は九歳です。先程も説明しましたが魔法の世界で魔法を使えない自分に嫌気が差して…」あ、暗い雰囲気させちゃった。
フェルツは、
「きっとブレイドも君と似ていたのだろう。この世界にあるのは己の力だけだ。その中でブレイドは剣を扱えなかった。いくら努力しても凡人程度。いつも比較されるのは英雄である俺。周りからの批判を浴びていくうちに君と同じ末路を迎えたのだと思う。」
悲しい顔だ。何を言えばいいのか分からなかった。ふと、以前読んだ書物を思い出す。
転生に纏わる書物だ。
「フェルツさん、もしかするとブレイドさんは僕の体に魂を宿しているのかもしれません。」
フェルツの目つきが変わった。
「レイド、それ本気で言っているのかい?」
「僕は魔法が使えない分、知識を得ようとして色々な本を読み漁りました。その中で転生魔法についての書物がありました。そこには『対象の願いと異なる次元の対象の願いが重なり命を散らす時お互いに新たな道が開かれる。』と書いてありました。これが本当なら辻褄が合います。この世界には魔法がなく僕がいた世界には魔法がある。まだ可能性のレベルですが信憑性は高いと思います。」
フェルツは顎に手を添え考える。
「違う次元と言われてもどうやっていくのだろうか。というかそんな簡単に次元を超えることは出来るのか?」
「現にこの世界には魔法がないではないですか?それに僕が次元を超えたということは何かをすれば次元を超えられるのでは?」
「にわかには信じ難いが実際その通りだしな。とりあえず俺は城に行って本とか色々探してみる。お前はどうする?」
「お供させていただきます。」
「その前に飯でも食うか。ちょっとまってろ。
」
少ししてスープとパン、サラダが並んだ。
伯爵位の家では出ないだろう食べ物ばかりだがこの位の方が居心地が良かった。
「ありがとうございます。いただきます。」
行儀なんて気にせずバクバクと勢いよく食べる。時に喉にパンを詰まらせるがスープで流し込む。
「ふう、ご馳走様です。それでは向かいましょうか」
「本当に大丈夫か?前のお前は少し外に出るのを怖がっていた気があった。」
「僕は大丈夫です。僕も知りたい事があるのでいきましょう!」そういい、家にあったブレイドさんのおさがりに着替えて城へと向かう。
城に向かう間、街の人のほとんどがフェルツさんに頭を下げる。本当に英雄なのだと改めて認識する。
「フェルツさん、本当に凄い人なんですね。これなら僕も精神的に参ってしまうかもしれません。」ちょっと困った顔をするフェルツをみて冗談です。と答えちゃっと和やかな雰囲気になっていく。そうこうしている内に城についた。
門番がこちらをみる。
「フェルツ様!今日は何のようでしょうか。」
フェルツは答える
「城の書庫、本を探しにきた。いるならあいつにも会わせてくれ。」
門番は
「承知いたしました!国王は玉座にいらっしゃると思われます。開門!!」
目の前の門が開き、城の壁が開いて中が見える。
「行こうか。」
フェルツの声を聞き
頷き、玉座へと向かった。