第3話 フィーユ
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目を開けるとリリスがいた。
彼女は俺のベットに体を預けて眠っている様だ。
外を見ると朝日が登っているのが見えた。
昨日帰ってきたのが夕方であるして大分寝てしまっていたようだ。
俺は布団から出て窓を開けた。
その音に反応してリリスが起き、こちらを見る。
涙を浮かべる。俺に抱きつく。
昨日の力の影響で過去に何があったかを知った俺には彼女の思いが理解出来た。
俺は
「心配かけてごめんなさい」そういい彼女の頭を撫でた。
彼女は信頼に足りる人物だと思えた。だからこそは俺の正体について明かそうか迷った。
俺が難しそうな顔をしていたせいかそれに気づき
「レイド、なにかあったよね?」
神妙な顔つきになるリリス。
彼女は前の俺が死ぬ最後の最後まで良くしてくれていた。そして、おれが死んだことも…
「リリス姉さん、全てを話そうと思う。
これから僕が話す事は全て事実。そしてそれはまだ周りには言わないでほしい。」
それを聞き、唾を飲み込み頷くリリス。
「うん、そ、それに私も謝らなくちゃ。実はわたし、1週間前、あなたの部屋に入って息のない貴方をみたの。それで…」
涙を浮かべる。
「やはり知っていたんですね。では話は早いです。」
俺はそう答えて全て曝け出した。
俺が転生者である事。本物のレイドの魂がどこにいったかはわからない事。これにはヴァルヴェルドという奴が絡んでいるという事。俺の持つ祝福と力について。そして今のこの体には魔力がある事。
リリスは驚いた顔をするが俺のことを思い、時より俺の頭を撫でた。
「そうだったのね。最初の頃は貴方を避けるようにしてごめんなさい。でもあの現場にいた私ですら信じられないようなことだったし周りにはまだ話さない方がいいわね。」
そういうとリリスは姉の目をしていた。
彼女も思うところがあるだろう。あれだけ寄り添ったが結果的に弟を守る事が出来なかった後悔。今度は守るそういう目だ。そして、
「そういえば魔力があるって言ってたわよね!
使ってみましょう! 書庫に魔法書があるわ!」
そう言い、俺の手を取り階段を降り書庫に行き、外に出る。
「でも、お父様とお母様には見つからない方が良いわね。少し離れましょう。」
家を出て5分ほど離れた森に出る。
その際、門を出るのに門番がいたがシュタイン家の紋章をリリスが見せ、少し散歩に行くわと伝えてすぐに通してくれた。
「さぁ、森に着いたわ!ここなら人はこないわね。さっそく火魔法は危ないから水魔法を使ってみましょう!」
そう言われ、俺は魔法書を見て書いてある通りに唱える。
「ウォーター!」
右手からなにやら術式のようなものが現れ水が出た。威力はなく持続性もない。それでも
「やったわ、レイド!数年魔法が使えなかった貴方が魔法を使えたのよ!」俺に抱きつく。
どうも記憶を辿ると彼女からは姉弟以上の好意を感じるが気のせいだろう。弟を気遣ってくれているのだろう。
「はぁ次は土魔法よ!」
そう言われ俺はまた魔法書に目線を置く。
「サンド!」
水魔法と同じように右手から石の塊のようなものが出てきた。
と、同時に魔力を使い切ったのだろうか。足元が覚束ない。その姿を見てリリスは俺の肩を持つ。
「大丈夫?魔力はあるようだけど少なすぎるわね。それに魔力増幅は少ししか起きないわ。これから厳しいかもしれないわね。」
話を聞くと生まれながらに大体の魔力が決まっているらしい。だが俺はまだ魔力に目覚めて1週間ほどしか経っていないしまだどうなるかは分からないとリリスは言う。
その言葉を聞いてふと奴が最後に言ったことを思い出す。魔力が少しでもある限り諦めるんじゃないと。
もしかするとそれがリリスのいう少しの魔力増幅に関係があるのかも知らない。そう考えた。
意識が安定してきたので最後に風魔法を唱えた。
「ウィンド!」風が出て木を切った。
とりあえず3度魔法が使える事が分かった。
リリスは笑顔で
「魔法が使えるようになるなんて思いもしなかったわ!貴方が何者であれ私の弟には違いないわ!」そろそろお父さまに怒られると言い素早く動かし、自宅へ向かう。
家の前には母がいた。
「もうこんな朝からどこにいっていたの?」
ぷくっと頬を膨らませるリーシャ。
可愛らしいとなんというか違う違う。
彼女は俺たちを心配していたのだった。
俺たちは頭を下げて謝った。
「しょうがない子たちね!まぁ2人が仲直りしたんのなら良かったわ!」リーシャは俺たちの頭をそれぞれ撫でた。
玄関からメイドが朝食の準備が出来ました。という声が聞こえてきた。俺たちははーいと答え食堂へ向かうのだった。
食べ終え、自室に戻る。そういえば魔力に気を取られていたが左眼の力が俺以外に使えるのか試していないことを思い出す。
とりあえずリリスでも呼ぶか。
そう思い部屋を出る。
するとリリスも廊下にいた。しかしいつもと服装が違う。そう、制服だ。嫌なことを思い出してしまう。
「あら、レイド。何か用だった?ごめんねわたしはこれから学校なの。何かあるのなら帰ってきてからね。またね。」
そう言い階段を降りて行った。
と同時にリーシャが上がってきた。
「あら、レイド。どうしたの?貴方も2年後、魔法学校に行くかもしれないのよ?」
話を聞くに12歳から学校に通う事になるらしい。
「貴方も10歳になった事だし家庭教師を付けてそこから学校に行くか判断するつもりよ。」
そうリーシャは答えた。
彼女も色々とアレスと考えたのだろう。
「わかりました。それでその家庭教師の方はいつから来るのでしょうか?」
すると誰かが階段を上がってきた。
「えっ。」俺は思わず声を出してしまった。
目の前にエルフがいた。耳の尖ったエルフが。
ルシア母さんの耳はもう少し丸かっただろうか。
ぽかーんとした顔を見て目の前の女が言う。
「リーシャ様。この子がわたしが教えるレイド様でしょうか?」
リーシャは頷く。驚いた顔をするエルフ。すると
「以前、家庭教師のお話を頂いた時はレイド様は魔力を…」あ、不味い。俺が魔力を持っている事がバレている。祝福の力だろうか。そんな事よりリーシャにはまだバレるわけにはいかない。
咄嗟に俺は
「あーエルフさんこんにちは!貴方が私の家庭教師の方でしょうか?お名前を頂戴してもよろしいですか??」と頭を下げる。
エルフは戸惑いつつリーシャに話しかけるのをやめて俺の方を見て
「お初にお目にかかります。私、フィーユと申します。今後2年間レイド様が魔法学校に行くまでの間家庭教師をさせていただく事になっております。」気品を感じる身のこなしに俺はこの人が身分の高い人なのだと悟った。
とりあえずおれの魔力についてはなんとかなった。まずはフィーユさんと母さんを引き離さなければいけない。そう思い
「お母様!早速フィーユさんに色々教わりたいと思います!それでは失礼します。」少し強引だったろうか。フィーユの手を取り俺の部屋に連れ込む。リーリャはなにか言いかけていたが諦めたようだ。
それにしても困った。この人に俺の事情を説明しても大丈夫なのだろうか。しかし、彼女の祝福か何かで魔力がある事がバレているのだろう。それならば。
「フィーユさん、僕が魔力がある事がわかりますか?」
彼女は答える。
「はい、私の祝福の力であなたには僅かながらに魔力を感じます。」
やはりか。ならば、
「僕も魔力がある事に今日気がつきました。今後どうなっていくかはわかりませんが生まれ持った魔力がこれから莫大に増えるのはほとんどないと聞きます。なので父や母が過度に期待を持つ事を僕は望んでいません。なので自分の魔力がどこまで増えるのかそれを見極めるまでこの事は伏せて頂けませんか?」
するとコンコンとドアを叩き、誰かが入ってきた。メリッサだ。もしや、立ち聞きしていたのでは?まずい。バレたか?
「メリッサさんもしかして聞いちゃいましたか?」引き攣った顔で
「はい。」
やはりか。これはまずい。
引き攣った顔が涙を堪えるような顔になり俺の方は歩み寄る。
「レイド様。やっと魔力が…」
彼女はメイドの中で1番俺と仲が良かった。それにより俺との関係は深かった。
彼女も思うところがあったのだろう。
「メリッサさんこの事はもう少し黙っていてもらえますか?」
ニヤリと笑いながらメリッサがいう。
「わかりました。その代わり私には敬語はそろそろやめていただけますか?」
尻尾をふりふりしている。彼女は獣人の中でも猫人族だ。
「それくらいでよければ!恩にきるよ。メリッサさん!」
「さんは余計ですよ。今回は許してあげます。それでは失礼致します。」頭を下げて部屋を出る
尻尾を見ると先程より尻尾が凄かった。
きっと嬉しかったのだろう。
話を戻そうとすると未だにフィーユは困った顔をしていた。当然だろう。雇ったのは父と母だしきっとこの祝福を持つ人を狙って選んだのだろうと察しがつく。
「分かりました。とりあえず私の口からは伏せておきます。それでその事を知っているのは先ほどのメイドの方だけですか?」
「いえ、あと1人、リリス姉様が。」
フィーユは頬を緩め話す。
「女性の方ばかりですのね。」
え、まぁ今まで深く話す事があったのがたまたま女の人ばかりだったから。
まぁ記憶を辿ればラルス兄様やルルと遊んでいる記憶の方が多いが、魔力がない事を知るとラルス兄様は俺とほとんど話していない。
ん?話していない?なのに、俺が初めて転生してきた日なぜあんなに気さくに声をかけてきたんだ。それにレイドは何故死ぬ事になったんだ。明確な理由が記憶から抜け落ちている。
まだまだ闇が隠れているのだろうか。
難しい顔をしている俺に
「ごめんなさい。気を悪くさせてしまったでしょうか?」彼女は悲しい顔を浮かべている。
「いえいえ!ちょっと考え事をしていただけです!それにフィーユさんの方が年上なんですから僕に敬語なんて使わないでください!」
でも、と言いかける彼女にこれは命令です。と言い彼女は出来るだけ頑張ります。と答えた。
「それじゃあまず自己紹介をお願いします。僕はフィーユさんの事を知らないので。」
「私、フィーユ・クリステラと申します。クリステラ家はエルフの国の王族に当たります。ですが私は四女ですのでほとんど関係ありません。なのでその辺はお気にせず。私は魔法学校を卒業して帝国の騎士団に入りました。レイド様もご存知だと思いますが、騎士団と言っても7割が魔法師です。その中で今回、アレス様にお話を頂きました。エルフは魔力が多く、変わった祝福を受ける事が多いです。そして私の祝福は見た相手の魔力を感知する事が出来る祝福です。その力で息子をどうにか出来ないかとアレス団長に懇願され、家庭教師として参りました。」
「そうだったんですね。それにしても王族の方なんて。なおさら僕なんかに敬語はやめてください。」その後に記憶を辿っておれは自己紹介をした。
よろしくお願いします。お互い頭を下げた。
それにしてもフィーユさんは王族だけあって綺麗だ。金色の長い髪が揺れ慎ましい胸が…
おっと前世の俺ならこんな事気にしなかったのにレイドの記憶を辿ってからちょっとそういう気分になっている。初めてリーリャを見た時も思えばそうだった。前のレイドは少しスケベなところがあったのだろうか。しかし、案ずる事なかれ。俺の体はまだ10歳だ。大丈夫。難しい顔をしている俺にフィーユは
「大丈夫ですか?そろそろ魔法の授業を始めましょう。」
おっと俺の視線がバレたか?まずい集中しよう。
「よろしくお願いします!」
そういうとフィーユの授業が始まった。
感想お待ちしてます。
次回は表裏一体の裏の世界のお話です。