再会
バスに乗る事約三十分、市民ホールに着いた。会場に行けば、もう、皆んなが揃っていた。待ち時間をスマホを使って時間を潰す。周りの奴らは、自分と契約している精霊と話すか、その精霊を自慢し合っている。
羨ましい。
そうこうしている内に時間になった。
「お時間となりましたので、これより精霊王様との謁見を始めます。」
アナウンスが流れると、全員が壇上に目を向けた。
すると、壇上が光り輝いた。光が消えるとそこには、もの凄く綺麗な女性がいた。あれが精霊王なのだろうか?
どこかで見た事があると思いながら見ていると、精霊王と目が合った気がした。
すると、精霊王がもの凄く驚いた顏をして、
「主人?主人ですか?」
とか言い始めた。
どゆコト?と驚いている俺の事など全く気にせず、壇上から浮いてこっちに向かって来る。
おい、誰だよ?精霊王の主人って。
と思っていたが、なんとその精霊王が俺の目の前に止まった。
というより、周りの人達は…なんか、固まってる?動いてない?
俺、こんな美人なんか知り合いにいないぞ。
とか思っていたがふと、夢の中の人物と目の前の精霊が重なった。
「ノエル…なのか?」
俺がその名前を呟くと、精霊王が泣きながら抱きついてきた。
「主人、今までどこへ行っていたのですか。もう離しませんよ。これからはずっと一緒です。」
んんん?いや、ちょっとタンマ。この人、精霊王だよね?多くの人に恐れられる精霊王様だよね?
しかも主人って?しかもノエルって夢の中の俺の嫁の名前。…ウソ、ノエルって精霊王なの⁈じゃあ凪乃は?
「ちょ、ちょっと待ってくれ。主人ってなんなんだ?後、お前が俺の知っているノエルなら凪乃って?それに、なんで周りの人は動いてないんだよ?!」
プチパニックになりながらも、なんとか質問が出来た。
「主人、私の知る限り、主人の知り合いには私以外のノエルという名前の人物はいなかった筈です。また、私は主人と契約した精霊です。後、凪乃は私達の子供です。そして、凪乃は今、我が家にいます。周りの人たちは、というより、少し時間を止めさせていただきました。」
「ソ、ソウデスカ。」
俺が呆然としていると、
「では主人、そろそろ帰りましょうか。」
ノエルが俺の腕を取り、そう言った。
「帰るって、どこへ?」
「勿論、我が家にです。」
ノエルが笑顔でそう言った。
「えっと、実は俺、ノエル達といた時の記憶がないんだよ。後、お前の我が家ってどこにあるか知らんけど、もし、俺が一緒に行くとしても俺は今の家を借りている状態だから、今すぐになんで無理。」
そうなのだ。俺には、二年前の記憶が無いのだ。更に言えば、俺は行方不明になっていたのだ。
そして、ある日の朝、家のベッドで寝ていた所を発見された。
正直に記憶がない事を言うと、ノエルは驚いた後、悲しそうな顔をした。
「そうですか。主人には当時の記憶がないのですか。分かりました。では、私が主人の記憶を戻します。上手く出来るか分かりませんが。」
とか、言った後に小声でブツブツ呟き始めた。
いや、そんな簡単に魔法で解決出来る問題じゃあないと思うんですけど。
なんて思っていたら、頭の中で何かが弾ける感じがして、ノエルと凪乃との記憶が戻ってきた。
そうだ、俺はこの世界とは別の世界に行っていて、そこでノエルと契約して、凪乃と三人で過ごしていたんだ。
「そうか。そうだったな。ノエル、ありがとな。でも、俺はそっちに行けないんだ。」
そうなのだ。精霊が、世界を渡れても人は渡れない。
「何故ですか!主人がいないと、」
「分かってる。だから、二人がこっちに来ればいい。そうすれば、また一緒に暮らせる。」
「ですが、前のようにはもう暮らせないじゃないですか。」
ノエルが悲しそうな顔をする。しかし俺は、ノエルが忘れているであろう事を口にする。
「忘れたのかノエル。この世界では、契約した精霊は人間と同じ権利を持っているんだぞ?」
俺の言葉にノエルは一気に笑顔になった。
「そうでした。という事はまた、三人で暮らせるんですね?」
「そういうことだ。とりあえず、部屋の片付けとか、こっちも色々用意しないといけないし、ノエルも凪乃もそんなすぐに引っ越しは無理だろ?」
「そうですね。では一週間後にここでまたお会いしましょう。」
いや、その日学校なんだよなー。
「一週間後だと平日だし、来週末にしないか?」
「いえ、平日のほうが人も少ないので色々と楽なのではと思ったのですが。それに、できるだけ早く一緒に暮らしたいではないですか。」
ノエルさん、可愛すぎませんかね?
まあ、そういうことなら仕方ない。それに、引っ越し業者さんも平日なら急な予約も受けてくれるだろう。
「分かった。じゃあ、一週間後な。」
「はい。楽しみにしています。」
そう言って俺らは別れた。
明日は午後からサイクリングを
最近太ってしまったので。
明日、次話を投稿します。
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