プロローグ
諸事情により、再投稿となります。
ゆっくりと更新していきます。
体を揺さぶられながら、彼女の声が聞こえてくる。
「主人、起きて下さい。もう朝ですよ。」
「ん〜後少しだけー。」
「いけません。起きて下さい。」
「じゃあもっと近くに来て。」
起きたく無いので、とある企みを胸に秘め悪あがきをする。
「分かりました。なんて、言うと思いましたか?もう、主人が何をしようとしているのかは分かっています。そんな事より、そろそろ起きないと大変な事になりますよ。」
彼女の凍えるような声を聞き、一瞬でベッドから出る。
「起きました。今起きました。いいよね⁈セーフだよね⁈」
かなり焦りながら彼女の顔を見るが、何故かそこには誰もい…
「おい蓼川たてかわ!いい加減に起きんか。それだからお前はロクに精霊とも契約出来んのだ!このままだと、留年だぞ!」
という怒声と共にチョークが飛んで来た。
痛!おい、それは体罰だろうが。
周りを見れば、皆がこっちを見て笑っている。
まぁ、そうだろうな。どうせ、最下位の精霊とも契約出来ない俺なんか笑い者にしかならんのだろう。
今時、精霊と契約出来ないと就職出来るかどうかも怪しい時代だ。
五十年程前にこの世界に精霊と言われる存在が現れた。
人は、精霊に魔力を与える代わりに契約して、精霊を使役する。
これにより、様々な仕事が効率化され、精霊の価値が認められた。
そして、人間と契約した精霊には人権が認められ、一人の人間として扱われる。
また、人間と契約した精霊は一部の高位精霊のみだが、実体化が出来るようになる。
そして、精霊と契約する為には、まずは精霊を呼ぶ。この時、呼ぶ精霊は選べない。精霊が自らの意思で現れる。そして、毎月、もしくは毎日どれだけの魔力を精霊に与えるかを精霊に告げ、それに精霊が納得したら、契約が出来る。
しかし、俺の場合はまず、精霊を呼んでも全く現れない。
なので、契約したくても出来る精霊が姿を現せないので、契約が出来ないのだ。
しかも、精霊との契約はしようと思えば誰でも出来る。
それなのに、何故か俺は出来ない。
よって、周りからは軽蔑の目を向けられる毎日だ。
はぁ、何でもいいから、俺と契約してくれる精霊はいないのかね。
そんな事をおもいながら、その日の残りの授業を消化し、下校の時間。
「おい、明日って確か精霊王様に謁見の日だろ?」
「あぁ。だから、学校ないだよな。でも、他校と一緒に市民ホールに行かないといけないやろ。」
「あー、でも俺は明日じゃないんだよな。」
そうなのだ。明日は、精霊王に謁見して、契約している精霊の契約状況を確かめるのだ。なので、一定の地区に住むの高校生以上の国民は必ず近くのホールやスタジアムに行かないといけない。
それに、一定の地区ごとに謁見と言ったが年齢別にも別れ、俺らの住む市だけで十日はかかる。
明日の謁見が終われば次は何年後か分からないが大分先になる。
それに、指定された市に住んでいる人が対象なので、隣の市から通っている同級生はまた別の日になるのだ。
その場合、明日はまるまる休みになる。
そして、自分の住んでいる市が対象の日は学校が公欠扱いになる。
いいなぁ。
なんで俺行かないと行けないんだろう。
俺、精霊と契約してないのに。
移動費は、国が負担してくれるからいいものの、ただただ面倒臭い時間を過ごさないといけない。
そんな事を思いながら、家に帰り、明日に備えて早めに布団に入る。
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その日はまた変な夢を見た。俺には、嫁と娘がいて三人で、ピクニックに行く夢だ。彼女は俺の事を主人と呼び、俺は彼女の事をノエルと呼ぶ。娘の名前は凪乃というらしい。しかし、俺が、夢で見ている場所は日本ではない。さらに言うならば、この世界では無い。何故ならば、そこには魔法があり、誰もが使っていたのだから。しかし、俺は大切な筈の嫁と娘の顏を見る事は出来ない。何故か顔だけが見えないのだ。
そして、その夢は突然に終わる。目の前が真っ暗になって眼が覚める。
もう少しだけ、あの続きを見たいのだが仕方がない。
時計を見ると、もう朝の六時だった。バスの時間は七時。支度をして、家を出れば丁度いい時間だ。
俺はノロノロと支度を始めた。
本日はもう一話投稿します。