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68話 肉の化け物

今日二回目の投稿です

「こんな世界、壊してやる。家族を殺した奴らも、そんな奴が王になる国なんかも、全て」

 

 そう言って、レストが注射を打った。

 直後だ。

 肉体が膨れ上がる。まるで風船のように。

 ただ、普通の風船であれば膨れ上がって限界にまで膨れ上がればいずれ割れる。

 しかし、それは割れる事なく無限に膨らんでいく。

 カインは膨れ上がるレストに驚きを隠せなかった。

 

「なんだ、あれは……」


 膨れ上がる肉の塊に、混乱していた。そして、先にやるべきことはまずは主であるフィラルシアを救う事。

 肉の塊がこの部屋を覆いつくす前に、フィラルシアを回収する。

 

「姫様、口の中を閉じてくださいよ!」


 ここで喋られれば、気が散る。

 フィラルシアを抱き上げると、キャッという短い悲鳴を上げた。

 帰りの扉はもう分かっている。そこに向かって走っていると、レストもとい肉の塊はカインが動き出すと、膨れ上がるだけだったが違う動きを見せる。

 

 カインを獲物と定めたのか、膨れ上がっていく肉の塊から触手のような人と同じほど太い物が伸びた。

 その速度は大きいから遅い、と判断したが意外に俊敏。

 暗殺者で身軽のカインが一人の少女を担いでいる、そんな状態であれ追いつこうとしていた。

 

 いずれ追いつく、その事実が頭の中に過りカインは内心舌打ちをする。

 目の前にある扉はもう少し、背後には肉の触手がジリジリと詰めてきていた。

 さらに数も三つに増え、掴まれれば最後、袋叩きに会うのは目に見える。

 

 間に合えー!!

 目の前まで近づく扉をカインは蹴り飛ばした。

 開ける、という動作すらする時間が惜しい。

 そのまま飛び込むと、肉の触手は壁にぶつかって進めずにいた。

 

 地下の造りは頑丈らしく、ぶつかってびくともしない。

 だが、カインは見えていないが肉の塊に動きがあった。

 近くにいた獲物が逃げ出した事で肉の触手はさらに膨れ上がろうとしている。

 ただし、風船のように膨れ上がるのではなくそれは濁流のように体積を増やしていく。

 

 膨れ上がるに肉の塊に頑丈な壁にヒビが入る。

 それ以上に、この部屋はかなりきつい物があった。

 死体の山に腐臭。

 吐き気を催すほどの悪臭にフィラルシアはん! と目と鼻、口を塞いだ。

 

「これは、やばいな」


 ミシ、ミシとヒビが入る壁にカインはすぐに走り出した。

 部屋を抜けた時、壁は崩壊した。なだれ込む肉の濁流に急いでを階段を上っていく。

 肉の塊は死体の山を吸収し、さらに膨れ上がる。

 表面に無数の顔、手が浮かび憎しみの籠った声を漏らし続けていた。

 

 お化け、と言われても納得するレベルの怨霊になっている肉の塊に、カインはすぐに逃げ出す。

 それからはあまり記憶がなく、全力で走り続けた。

 屋内には人がいたが、自分の命を優先する。

 

 外に出た時には家から肉の塊が火山が噴火するように生まれ、体積が先程よりも倍以上に増やしていた。

 城と同じくらいの高さまで成長すると、肉の塊の成長は止まる。

 その時点でも見上げるほどの大きさであり、もう人の手ではどうしようもできないほどの大きさになった。

 

「これ、どうするんだ?」


 人なら、殺すことはできる。それが暗殺者だ。しかし、これほど成長すれば、カインでも手の付けようがなかった。

 まずは自分の出来る事をしようと、カインはフィラルシアを安全な所に連れて行くために城へ向かう。

 

 それとは別、カインの知らぬ所で二つの勢力が化け物を目にしていた。

 

 

 

 肉の塊が出て、すぐに事だ。ラディアント第一王子が指示を出して城の中はてんてこ舞いになっていた。

 それを余所に、一人の男がラディアント第一王子の元に向かっている。

 その男の名はファリシア。騎士であり、大臣派だ。

 彼の人生は悲惨なものだ。

 

 ラディアント第一王子と同級生であり、彼はいつか死ぬと両親がよく話していたことを耳にしていたため、よく馬鹿にしていた。

 その結果、謀反は失敗して毎年多額の税金を支払う羽目になる。その税金のせいで生活は苦しくなり、結婚しようとした貴族の女性から断られ、誰も彼の事を見る者はいなくなった。

 髪もやつれ、皮膚は栄養がいっていないのかボロボロ。身体は騎士故に屈強ではあるが、まるで病人のようである。

 目が狂人のようにどこか視点が定まらず、ぶつぶつと呟ていた。

 

 それも全てラディアント第一王子のせいだ、と。

 彼がいなければ、ファリシアの人生はもっと良い物になった、そう信じて疑わなかった。

 元々は謀反を考える方が悪いのだが、彼にはそんな常識は通用しない。

 

 たった一人なら、彼はこの機に動きはしなかった。

 彼は最後の最後まで周りの空気に流れやすい性格なのだ。

 ファリシアに集うように、途中で仲間が徐々に増えていきそれは一つの塊となる。

 

 ラディアント第一王子がいる部屋の目前に迫ると、部屋の前に立っていた護衛騎士も異常だと気づく。

 彼ら全員が騎士なのだ。それがこの部屋に向かって来ていることなど、理由は一つしかない。

 

「お前達、止まれ!」


 だが、ファリシア達は止まらない。逆に勢いづく。

 魔法で剣を呼び出した騎士達が護衛騎士に襲い掛かった。

 護衛騎士も応戦するが、数は一人。質で言えば護衛騎士の方が強いのだが、量で明らかに負けている。

 すぐに突破された。

 

「ラディアント第一王子! 覚悟!!」


 部屋に突入した騎士達が雪崩込み、ラディアント第一王子に襲い掛かる。部屋の中は護衛騎士が一人、そしてラディアント第一王子だけだ。

 ラディアント第一王子は座っていて、その前に護衛騎士が立ちはだかっているがそれも数の前には完全に防ぎきることは不可能である。

 

 ファリシアはなんとか護衛騎士から掻い潜り、ラディアント第一王子の首を刎ねようと斬りかかる。

 

「死ね!!」


 騎士達の殺意を前にして、ラディアント第一王子は怖がる様子を見せず逆に堂々としていた。

 後ろに行けば窓があり、この場から逃げ出すこともできる。なのに逃げる様子もなく、待ち受けている。今も、彼は首を刎ねられようとしているのに逃げる素振りは見せていない。

 ただ、一言。そろそろ頃合いだろうととある男の名を呟く。

 

「やれ、リンジャオ」


 ラディアント第一王子の後ろの窓から、矢が当たらないように弧を描いてファリシアに直撃する。

 魔法の矢のため、一撃で殺すことはない。だが、毒により動くことはできなくなった。

 

 ラディアント第一王子よりはるか後方、屋根の上で片足だけ膝をついた態勢で構えていたリンジャオはため息を吐く。

 

「こういう危ない橋はもう嫌なんですけど」


 それでも彼は言われた通りの仕事をする。

 入って来た騎士を遠距離から弓魔法で潰していき、完全に制圧するのであった。

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