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67話 王女開放戦 7 そして

昨日、投稿出来なかったので夜に投稿しようと思います

 レストに痛みが走る。

 自分が横になっているのは分かっている。ただ、この痛みがどうして、何故なのかそれが分かっていない。

 視界はまだ白く塗りつぶされ、徐々に回復しているがまだだ。

 

 立ち上がろうと足を動かそうにも動く感覚がなく、そこでやっと自分は腰を斬られたのだと理解した。

 このまますれば、すぐに出血多量で死ぬだろう。

 それは分かっている、しかし悔しかった。

 

 家族を殺した大臣を、そしてこの国を、憎くくてすぐに死ぬのだ。悔しくて悔しくて仕方がない。

 死ぬのか? このまま?

 悪魔の囁きが聞こえてくる。

 ああ、そうだ。死ぬ。このまま何もできずに。

 

 悔しくないのか? このまま無駄死にして。

 死ぬほど悔しいさ。だが、もうどうしようも出来ない。魔力も底を尽きた。何ができる?

 できるだろう? だから事前にアレを渡している。

 

 白く塗りつぶされた視界の中、手探りで懐からとある物を取り出す。

 それはケースに入っていた。なんとかケースを開け、中から取り出した物は注射器である。

 もし打てば、レストは変わる。さっきまでは注射を打つ勇気がなかった。

 しかし、今は違う。死が目前に迫り、何でもできるような、そんな気がしている。

 

「こんな世界、壊してやる。家族を殺した奴らも、そんな奴が王になる国なんかも、全て」


 目から涙が零れ落ちる。

 その顔は憎悪の歪んだ顔ではなく、悲痛な、過去を悲しむような顔をしていた。

 そして、注射を打つ。

 

 

 

 朝早い時間。誰もが起床し、仕事に行く準備をする時に貴族街の一部の建物が崩れ、それは現れた。

 まるで封印された化け物が出てくるように出てきたそれは、産声を上げる。

 幾つもの人が喋るようなその声は、無数にバラバラな言葉を喋っていた。

 ただ、喋っているのは全てこの世界を憎しむ怨嗟の声だ。

 

 腫瘍が巨大になったようなそれは小さな人の手が幾つもあり、表面に顔が無数に浮かび上がっている。

 悪魔のような化け物だ。それは城からでもよく見えた。

 

 アルブラウもそれが見えている。

 レストの指示で城へ潜入するように言われ、現在城に潜入中だ。

 ラディアント第一王子が動きだしたタイミングで、こちらも動こうとした。

 が、その予定は今日のはずだ。あまりにも早すぎる。

 イレギュラーか。なら、こちらも動くとしよう。

 

 

 

 肉の塊のような化け物が出てきた事に、ラディアント第一王子も動揺を見せていた。

 

「なんだ、あれは!? どこから現れた!?」


「分かりません1 突然地下から出てきたようで」


 報告しに来た貴族に思わず怒声を飛ばしてしまい、遅れてその事に気づく。

 貴族も何も知らない。彼はただそれが出てきて、判断を仰ぐために連絡に来ただけなのだ。

 なのに、自分が怒声を浴びせるのは間違っている。

 ラディアント第一王子は深呼吸して自分を落ち着かせ、情報を集めることにした。

 

「まず、あれは何か冒険者ギルドと連絡を取れ。あの化け物の事を知っているかもしれん」


「ハッ!」


「関係各所にも連絡だ。こんな時だ、混乱するだろうが落ち着いて行動するように。それで、あれの被害は?」


「それが、大臣の家から出てきた事で全壊しています」


「大臣の家が?」


 その言葉に、ラディアント第一王子の脳裏に一つの可能性が生まれた。

 

 

 

 アルブラウの目的は唯一つ、ラディアント第一王子を殺す事。

 大臣の命も狙うように指示されているが、それについては騎士がやってくれる手筈になっている。

 ラディアント第一王子を狙うが、殺す事は難しいだろう。

 

 今、化け物の出現でこの国も動揺している。

 その指示をしているのだから近づくことは容易でも、そこから殺すというのは周りが許すかどうか。

 混乱しているから殺せそうだが、護衛というものはよりピリつかせる。

 

 変な行動をしてしまえば、怪しまれてしまう。

 それに、見たことない相手が近づいても注意するはずだ。

 だから人の皮を剥いだ。潜入で城に努める貴族の皮を剥ぎ、それを着て行動に移す。

 

 まずは仲間だと思わせるために、肉の塊のような化け物が出てきたという情報を伝えた。

 冒険者ギルドとの状況共有を言われたが、誰がやるものか。

 混乱しろ。そして、死ね。

 

「そこの人、少し良いですか?」


「なんでしょう?」


 振り向くと、そこには騎士がいた。

 女性、だが凛々しく男装が似合うほど整った顔つきをしている騎士だ。

 彼女を見て、アルブラウは一度戦った事を思い出す。

 たしか彼女はフィラルシアの護衛の一人か、どうして呼び止めた?

 変装していることがばれたか? という不安が彼の中で過る。

 

「ここ最近、騎士の中でも不信な動きをする者がいるらしいので、気をつけて下さい」


 ただの注意喚起か、とホッと安堵したアルブラウは笑顔で答える。

 

「気をつけましょう、では」


 早くこんな所からおさらばしようと、お辞儀をして踵を返し歩いていく。

 彼の心は早く離れたい、という感情しかなかった。故に、自分が不審な行動を取っていることに気づかなかった。

 

「ちょっと待ってもらっていいですか?」


 再び呼び止められ、アルブラウはムッとするがそれを顔に出す訳にはいかない。

 笑顔を取り繕って振り向くと、ティシアが目の前まで近づいていた。

 顔が目の前に思わずたじろぎ、顔を背けようとした所顔を掴まれてしまう。

 

 剥いだ皮膚を被っているため、顔を掴まれてしまうとそこの部分だけが伸びる。

 伸びた顔の皮膚に掴まれた事に気づき、そしてバレたとアルブラウが理解する。

 だが、それは少しばかり遅かった。皮膚を掴まれた時点で行動に移せば良かったのだ。

 

「やっぱり暗殺者でしたか」


 アルブラウが行動する前に、ティシアは既に魔法を発動し終えていた後だった。

 彼女の周りから湧き出る水がアルブラウを拘束し、身体が水の球体に取り込まれる。

 身動きできない身体に、アルブラウは声を張り上げる事しかできなかった。

 

「糞ッ!! なんでだ!! 俺の変装を見破った!! 俺の変装は完璧のはずだッ!」


「ええ、完璧でした。私はあなたを前にして、二度も見破ることはできなかった」


 アルブラウは変装は確かに完璧だ。

 十人全員が見破る事はできないだろう、それほどまでに似ていて、声をコピーできるほど。知人でも変装している、と疑わないほど。

 

「なら、何故だ? 何故変装していると思った?」


「癖ですよ」


「癖?」


「あなたは私の知り合いと同じように足音を消す癖を持っている」


 それはティシアが短い付き合いではあるが、とある男を見て来た証だ。

 一緒に行動してきたからこそ、無意識で足音を消す癖があるという事を知っていた。

 それは暗殺者がまず習うものであり、アルブラウもまた同じ事をしていたのだ。

 

 ティシアから早く離れよう、と振り向いて数歩歩いた時でだ。

 

「そんな、馬鹿な……」


 彼女の言葉にアルブラウは自信喪失する。

 今までバレる事はなかった。故に自信はあった、

 だが、彼女と出会って歩いて見せたのは十歩もないだろう。たったそれだけでバレた、という事は暗殺者の自信を砕くのは容易だ。

 

 この状況を打破することも不可能。アルブラウの魔法は匂い魔法であり、相手が嗅いだ匂いで異常を起こしたりするのだが、下半身が既に捕らわれた今、どうしようもできない。

 諦めるしかなかった。

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