51話 狂信者達は
ティシアは特に何もないと言った。
騎士である彼女が言ったのだ。なら、そうなのだろう。
しかし、この胸騒ぎはなんだ?
忘れようとしても頭の片隅でざわざわと異物があるかのように、考えさせられてしまう。
だからそれを消すために、今は見回りをしている。
十分ぐらい見回りしているのだが、侵入経路はやはりない。
それは最初に確認済みだ。
となると、外からではなく中から、ということになる。
一番怪しい、といったら騎士だろうか。
いまいち信じきれないのだ。
だから騎士は警戒するが、それでも防ぎきれるか怪しい。
見回りも終わりにしていいか、と思い始めて帰ろうとした所で来訪者が訪れる。
「カイン様、すみませんがラディアント様がお呼びです」
「ラディアント王子が? それなら少し待ってもらっていいですか、姫様に伝えないといけませんので」
「すみませんが可及的速やかにk手欲しいのです。連絡については私の方でしておきますので」
「……分かりました。では、今から行かせてもらいます」
可及的速やかに、というのはそれほど緊急の案件なのだろう。
今まで、そんな風に呼ばれたことがない。
ラディアント王子の部屋は一度行った。つい最近なので、まだ忘れていなかった。
部屋に訪れると、ラディアント第一王子は仕事をしている最中だ。
こちらの存在に気づき、手を止める。
「呼び出してすまない。少し困った事あって、情報の共有をしたいんだ」
「何が起きたんですか?」
「騎士が動きだした」
その一言で大体察してしまった。
察したのだが、顔が優れていない。
「どんな風に動いているんですか?」
それが分かれば、こちらも対応しやすい。
「そこまでは分からん。ただ、騎士が動き出したということが分かった、ということだ」
「そういうことですか」
騎士が既に動いている、ということではなく今から動くという事。
事前に動くと分かっているのはかなり大きい。
「分かりました。主に伝えたいので戻らせてもらいますね」
「ああ、フィラルシアによろしく頼む」
部屋から出て、フィラルシア様に伝えようとするがふと考えてしまった。
ラディアント第一王子は騎士が動く、と事前に分かっていた。なら、何故その場で伝えなかったのだろうか?
分かっていれば、教えてくれてもいいだろうに。
そしたら、戻るというこの移動の時間もいらない。
悪魔的な発想が、頭を過ぎる。
呼ぶ、という行為がいるのだとしたら?
フィラルシア様の元を離れる。
そうすれば護衛が一人。
胸騒ぎがより酷く、顕著になる。
疾走した。
注意されるだろう。怒られるだろう。だが、今はそんなこといい。
早く戻りたいのだ。この胸騒ぎを治めるために。
そんな焦っている時、目の前に寡黙な騎士がまるで立ちはだかるように道の真ん中を立っていた。
邪魔だ、と言いたい所だが言う事すら面倒だ。
無視して通り過ぎようとする。通り過ぎようとした時、寡黙な騎士が言葉を漏らす。
その衝撃に思わず身体を止めて振り向く。
寡黙な騎士は用がなくなったのか、歩いていく後ろ姿が見える。
問いただしたい。しかし、時間が余りにも無さすぎるのだ。
苦渋の決断だが、彼を無視してフィラルシア様の元に向かう。
しかし、あれはなんだ? 早く行かないと手遅れになるっていうのは。
「そういう訳ですので、カイン様はラディアント王子と面会をすることになりました。なので戻ってくるのに時間がかかります」
「分かりました」
ラディアント第一王子の側使えからの伝言を聞いた。
彼一人いなくても、仕事に関しては特に問題もない。
「フィラルシア様、勉強中の所申し訳ありません。カインがラディアント王子の所に行っているそうなので、戻ってくるのに時間がかかるそうです。その間は護衛が私一人になります」
「そう、分かったわ」
フィラルシアは勉強に集中し、それに目を離さない。
今は勉強の時間。まだ幼いながらも、この離宮のほとんどは勉強だ。
勿論、休憩の時間もあるし彼女は優秀であるため時間にある程度融通が利く。
「カインが戻ってくるまでの間、誰も入れないで。勿論、ティシアも離れないでね」
「分かりました」
主からの命令を守らない訳にはいかない。
それに、イリスイス様との特訓で似たような事があった。
離れられない。
カインが戻ってくるまでの間、扉の前に立っていること数分、扉がノックされた。
「すみません」
男の声だ。自分の事を騎士だと名乗った。
扉を開けると、そこには六人ほどの騎士がいる。
ここまで大勢がいるのは非常に珍しい。何かあったのだろうか?
「どうしました?」
「騎士団長が呼んでいます。一緒に来てもらいますか?」
「騎士団長が?」
今は一人。カインが戻っていない現状で、離れるのは不可能だ。
「すみません。今は護衛が私一人だけなので、離れる訳にはいきません」
「なら、代わりに護衛は私がやります」
提案された。
確かにそれなら離れられるかもしれない。
しかし、それは護衛の意味がない。主に任命された。
だから誰かに護衛を任せる気にはなれない。
それに、この騎士は何か焦っているような気がした。
「いえ、それでは護衛を任された私が許せません。なのでカインが戻った後に伺わせてもらいます」
頑なに断る。その反応に焦っていた騎士は苛立ち故か身体を震わせ、顔が歪む。
「もう我慢できん!!」
本性を現にした。
その声にティシアは一瞬で警戒レベルを引き上げる。
フィラルシアも反応し、勉強をやめてこちらを注視していた。
「すんなり従えば良かったものの」
火の魔法で剣を生み出した。
明らかな敵意、そして殺意。
六対一。数の差では不利。
早く帰ってきて、とカインが戻ってくるのを願うのであった。
ブックマークの登録や評価の方、よろしくお願いします。
感想も貰えると、励みになりますので何卒よろしくお願いします




