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閑話 語られない真実

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 妹のフィラルシアが過去を聞きに来た。

 護衛のカインがが襲われたかららしい。

 それで伝えた、我が国の歴史を。

 悲惨だ。地獄ともいえた生活を簡単に簡潔に。

 

 ただ、伝えていない事があった。

 それは、友であるリンジャオがどうして冒険者になることになったのか、貴族を辞める必要があったのか、その理由が関わってくるからだ。

 あの時、まだ学生だった頃は魔法学院でも王国の力関係がハッキリとしていた。

 

 王族の派閥に属する貴族達は弱く、大臣の派閥に属する貴族達は強者のように振る舞っている。

 ラディアント第一王子も息苦しい毎日を送っていた。

 

 

 

「はあ……」


 余りにもくだらない事にため息を吐く。

 それは先程の事だ。

 

 図書室で勉強中、厄介な奴らが関わって来た。

 

「これはラディアント様ではないですか」


 まるで芝居がかったような言い方、悪意に満ち溢れている。

 その男は上級貴族ではあるのだが小物。周りを見ないとでしゃばる事ができない。

 見た目もそれ相応。意地汚いような悪い目つきのある、それだけしか特徴のない男。

 

「ファリシアか、どうした?」


「いえ、こんな所で呑気に勉強していいのかな、と思いまして。城で大変な事が起きているというのに、行かなくてよろしいので?」


「そんな事か。私は王族ではあるが学生の身、本分は勉学だ。勉強して何が悪い? そこまで言うならファリシアは私よりも成績がいいと?」


 痛い所を突かれ、ファリシアは毒虫を噛み潰したような、皺だらけの顔をする。

 

「いえ、それは……」


「なら、そんな事言わずに勉強したらどうだ? 私よりも成績が悪いのだ。こんな所で無駄口を叩かずに」


「そ、そうですね。そうします」


 絞り出したような声を出し、ファリシアは去って行った。

 それを傍目に見ながら、ラディアントは再び勉強に戻る。

 

「ふん、三下が。この程度で引き下がるなら近寄ってくるな」


 ぼそり、と誰にも聞こえないような声で漏らす。

 勉強を邪魔された恨み、そして忘れかけた嫌な事を思い出させられた不満の為だ。

 ラディアントの成績は優秀、最優秀といってもいい。

 常にトップであり、誰にも撒けたことはない。それなら勉強しなくてもいいのだが、他に忘れることができる事がないのだ。

 だから勉強をするしかない。

 

「私も一緒に勉強してもいいですか?」


 その声に覚えがあった。顔を見なくても分かる。

 だから構わず勉強を続けた。


「勉強するのに許可はいらない」


「それもそうですね」


 少しの間、もくもくと勉強を続ける。

 カリカリと筆の走る音だけが響く。

 

「リンジャオ」


「はい? どうしました」


「そっちは大丈夫か?」


 彼は今、大変な状況にある。

 王族の命が狙われているが、ラディアントは魔法学院にいるため守られている。

 それ故か他の貴族、大人から比べられているのだ。

 この学院には二人の王族がいる。

 一人はラディアント第一王子。そしてもう一人はイリスイスの姉、リーフェレールだ。

 リーフェレールはラディアントからいえば妹ではあるのだが、彼女もまた辛い状況ではある。

 

「大丈夫、といえば大丈夫ですけど早くこんな現状を解決したいですね」


 ラディアントが比べられている相手、それはリンジャオであった。

 同じ学年であり、リンジャオの家は上級貴族。大臣の派閥に属する家であり、王族とは完全に敵対している。

 リンジャオは親から期待され、ラディアント第一王子と比べられていた。

 成績はラディアント第一王子に劣り、万年二位。一位はラディアントだ。

 

 だからリンジャオは勉強をしている、という訳ではない。

 彼は今が嫌いだった。

 親から必要以上の圧をかけられ、同級生からは期待される今が息苦しい。

 その事をラディアントは知っていた。

 

 それを王族故にラディアントは申し訳なく思い、一早くこの現状を解決したいのだが、学生の身ではどうするにもできない。

 特に今、王族だからという理由で権力を振るうこともできないのである。

 

「そうだな。今をどうにかしたいが、どうするべきか……」


 一先ずの優先として、城で働いて出来ることを増やすべきだろう。

 謀反が決行されるよりも先に。

 

「そっちもやはり大変そうですね」


「まあな。リンジャオはやりたい事とかないのか?」


 このままいけば暗い話ばかり続く。

 それは悲しい気持ちになるため、話を変えようとする。


「やりたい事ですか? そうですね、彼女と今を忘れてどこか旅行にでも行きたいですね」


 彼女、とはリンジャオの幼馴染だ。

 その子も境遇がリンジャオと全く同じ。上級貴族であり、王族と比べられている。

 比べられているのはラディアントの妹、リーフェレールだ。

 彼女は騎士を目指しており、同じ騎士を目指すリンジャオの幼馴染も騎士を目指していた。それ故に比べられている。

 

「彼女も私と同じように今が嫌いですからね」


「俺もだ。早く解決しないと、お前は告白できないものな」


 ニヤリと笑みが零れてしまい、リンジャオの顔が赤くなると思ったが悲壮感に包まれていた。

 

「告白、そうですね。告白したいですね。ただ、本当に結婚できるか怪しいものですけど。もし今の未来が続くなら、勢力を増やすために政略結婚をするでしょう。それはあっちも同じ」


 リンジャオの未来が簡単に予測できた。

 大臣の派閥が謀反を決行しない理由、それは中立派が多い事と包囲網がまだ完全に出来上がっていないからだ。

 文官である大臣、そして現騎士団長の大臣の親族。文官の方は完全に大臣派で固まっているのだが、武官である騎士の方はまだ騎士団長になったばかりということもあって、完全に包囲できていない。

 

 ただそれも時間の問題。包囲網が出来上がり、そして中立派が政略結婚によって取り込まれれば謀反が決行される。

 だから、時間がないともいえた。

 

「早く今を解決したいな」


「そうですね」


 二人は筆を走らせる間、悲壮感を漂わす。

 現実は目に見えていた。ゆっくりと終わっていく未来のカウントダウンをただただラディアントは感じ取っていた。

 そう思っていた。

 

 転機が訪れたのは騎士団長のフォードルが死んだ事。

 それにより大臣派が少数であった武官は崩壊し、大臣の包囲網が崩れてしまった。

 それにより今までの責任を取るために大臣は責を負う、ことにはならない。

 大臣は影ながら支援していただけ、自分が関与していた事を隠し、全ての責を負ったのは乗せられた上級貴族であった。

 

 

 

 過去の話が終わり、フィラルシアとその護衛達が部屋から既に去っていた。

 部屋にはお茶会の名残が残り、少しばかり昔の事を考えてしまう。

 

「あいつは今のほうが幸せなんだな」


 貴族ではなくなった。

 しかし、好きな女と一緒にいる。それが彼にとっての幸せなのだろうと理解する。

 時々話をしても不満気な所は感じられなかった。

 そうなると、やはり思ってしまう。

 

「早く結婚しないかな……」


「どうしました?」


 独り言を片付け中の側使えに聞かれてしまった。

 

「いや、何でもない。気にしないでくれ」


 手を振り、何でもないと意思表示をする。

 言葉を飲み込み、側使えは片付けを始めた。

 それを見ながら心の中に残ったのは悲壮感、そして復讐心である。

なんとか来週? に終わる目途が見えてきました。もう少し待っていてください


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