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44話 共同特訓 2

 共同特訓が始まり、ゲイルバッハに部屋を招待された。

 そこはフィラルシア様のいる部屋から少しばかり離れた場所で、歩いて五分ほど場所だ。

 客人が住むような豪華な部屋で、元暗殺者である自分がこの部屋にいるという行為自体が精神的な拒否反応を起こし、遠慮したい。

 しかし、そういう感情を貴族であるゲイルバッハはないようだ。

 

 部屋に連れて行ってもらった後、ゲイルバッハは失礼しますと頭を下げて出て行ってしまった。

 こんな場所に一人にしないでくれ。

 出て行く直前、そんな言葉が出そうになるのを飲み込んだ。

 

 ポツンと一人置いて行かれ、こんな豪華な部屋で何かしようという気が出ない。

 逆に何かして汚す、壊してしまえば、かなりの高額な賠償金を支払う事になる。

 王族の護衛、暗殺対策の教育もして他の仕事よりも給料が良いがまだ支払われた訳ではなく、それにその金で買える家具や雑貨レベルではないはず。

 

 何もしないために部屋の隅っこで座った。

 ここに来て早々、何かする訳ではない。

 現在、フィラルシア様を警護する二人のイリスイス様とティシア。

 彼女達の警護の隙を突いてフィラルシア様に触れないといけないが、これがちと難しい。

 

 正直、騎士二人を正面から戦って勝てるかと言えば否だ。

 普通に考えても難しい。相手の裏を掻く必要がある。

 そのためには今仕掛けるの事はやってはいけない。

 今は始まったばかり、相手は警戒しているはずだ。

 

 そんな状態で突っ込めば普通に負ける。

 それに、警戒しているという事は相手はかなり注意しているという事。後で休息が必要になるはず。

 そこを突けばいい。

 そのためにも今はこっちが休息を取るほうが大事だ。

 決戦はまだ先。今は休もう。

 

 

 

 人が近づく気配を感じた。

 昔からの習慣か、すぐに目を覚ます。

 顔を上げるとそこには一人の貴族の少女がいた。

 ゆるやかなウェーブの赤い髪でおどおどとした様子で、こちらを見下ろしている。

 

 見下ろしている、というには威圧的に感じてしまうがそうは感じなかった。

 気の弱そうな少女だ。

 今しがた来たのだろう。来て、寝ていたためにどうすればいいのだろう、と悩んでいる。

 

「すまない。眠っていた」


 座って眠っていたせいか、首が痛い。

 右手を首の後ろに抑えながら、グリグリと首を動かして立ち上がる。

 立ち上がると見下ろしていた視線から見上げる視線に変わった。

 

「それで君がアンシュリーさん?」


「はい、アンシュリーと申します。フィラルシア様からのお願いで今日一日カインさんのお側にいます。よろしくお願いします」


 彼女の言葉に少し棘があるように聞こえたが、悪意を感じない。

 隠しているようにも思えななかった。

 

「こちらこそ、よろしく頼みます。一先ず、昼にパン一つと飲み物を貰えればあとは十分。昼過ぎに一つお願い事をするぐらいなのであとは自由で」


「は、はあ」


 何かする、と思い込んでいたアンシュリーだったが指示されたことは難しくなく簡単な部類である。

 元暗殺者の元につくというのは未体験であり、何かしらの難しい仕事をするかもと意気込んでいたため、簡単な仕事に要領の得ない声を出してしまう。

 

「それまで俺は眠ってるから、昼になったら起こしてほしい」


 そう言ってまた眠りに着く。

 たった一人、取り残されたアンシュリーはまた仕事を始めた。

 昼、起きたカインはアンシュリーはパンを飲み水で胃に流し込む。

 堅い、というよりもパサついたパンを食べながら、どうやって攻略するかを考える。

 

 その側にはアンシュリーがいて、指示を待っていた。

 ぶっちゃけていえば、攻略方法は決まっている。問題はそれが通用するかどうか、という話だ。

 

 礼儀正しい彼女達の事だ。通用するだろう。

 しかし、万が一の可能性もある。だから、その可能性を潰したい。となると、

 

「アンシュリー、君にお願いがある」


 この作戦が通用するかどうか、それはアンシュリーにかかっている。

 

 

 

 昼が過ぎ、イリスイスは少しばかりが気が抜けていた。

 教師であるカインが襲って来る、という話で朝を警戒していたが全く来る気配がなくそして今は昼。

 来る可能性があるのは後は最後の夕刻だ。

 

 もう一人の護衛、ティシアは昼時であっても警戒を解く様子は見せなかった。

 それが護衛として正しいのだろう。しかし常に気を張り巡らさせる、というのは疲労が溜まる。

 

 このまま来ない、というのはありえない。

 最後の夕刻に来るだろうか? もしかしたら昼時に来るのかも。そう思わせて夕刻に……。

 疑心暗鬼に陥り、内心髪の毛をグシャーと掻き毟っている。

 

 そんな時だ。コンコン、と扉をノックされた。

 

「ティシア様、申し訳ありません」


 使用人の女性が扉の外からノックした。ティシアの方を見ると彼女は頷き、扉を開けた。


「騎士団長がお呼びです。ついて来てもらってもいいですか?」


 ふむ、と声を漏らし少しばかり悩む様子を見せるティシア。

 どこに悩む必要がある。

 

「ティシア、行っても構いせません」


「しかし」


 背を押しても尚、ティシアは悩んでいた。

 その理由が分からなかった。

 

「騎士団長が呼んでいるということは、重要な用件があるということじゃないですか?」


「……分かりました、行って参ります」


 後は頼みましたよ、と言い残してティシアは使用人と一緒に向かって行った。

 ティシアがいなくなり護衛が一人になった。しかし、イリスイスにはカインに負ける気がしなかった。

 

 この部屋は扉が一つと反対側に窓があるだけ。

 窓から入るには外から見られるし、この扉を警戒すればいい。

 

 その時だ、また扉がノックされる。

 

「すみません、ティシア殿はいらっしゃいますか?」


 若い男の声だ。


「ティシアなら既に騎士団長の元に向かいましたよ」


「ああ、そうなんですね」


 扉が開かれた。開けた先には、騎士がいる。

 優男だ。騎士にはまるっきり似合わないが、騎士が身に纏う鎧を着ているから騎士なのだろう。

 

「なんですか!! 無礼ですよ!!」


 無断で扉を開けた騎士を叱りつけた。

 この行為自体がマナーという点から悪い、怒られて当然の事だ。

 

「無礼? 分かってますよ。一先ず、挨拶に来ました」


 そう言って、騎士は部屋の中へ侵入した。

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