41話 反省会をします
イリスイス第二王女との戦いは終わった。
ということで、何故負けたのかという事を話し合うのための反省会をすることにする。
木剣がぶつかった痛みがまだあるのか、頭を手で擦りながらイリスイス第二王女は女の子座りをしていた。
「まずはどうして負けたかですが、分かります?」
「木剣が頭から降って来たから」
「まあ、要因としてはそうですけど」
言ってほしい答えではないため、どのようにして引き出すか悩んだ結果最初の方からどのような考えで戦ったのか、説明をすることにした。
「まず始め、私が武器を選ぶ所だが何かしらの策を取ったのは分かるか?」
「えっと、武器を隠し持っていた事は分かった」
「そう。私は確かに隠し持っていた。どんな風に?」
「左半身を隠してた。左手に持っている物を見せないように」
確かに、左半身を隠していた。
それは色々理由があるのだが、その一つとしてわざとらしく左半身を隠す事だ。
「確かに隠していましたが、なら武器は何個持っていました?」
「剣と木剣。あとは……」
「投擲したナイフ。で、私は武器を三つ持っていたわけですが、どうやって隠し持っていたか分かるります? 勿論、武器は全てここから取ったものです」
悩むイリスイス第二王女。答えは既に見せている。それも戦う前にだ。
「もしかして、魔法?」
答えが出るまで、そう時間がかからなかった。
「そう、魔法です。一部の魔法で、物を収納できる魔法があるんです。私の場合は一度物を入れたら最後、何が出てくるか分からないというリスクもありますが」
「まさか、それで……」
戦う前、物を全部取り出した事を思い出したのだろう。
「ええ。何か使うか分かりませんが、一つの可能性として手を打たせてもらいました」
あの時は本当に影収納を使うとは思っていなかった。
もしかしたら使うかも? という可能性があったため、使ったまでの事。
「もしかして最初から?」
「いいえ。使うかも、という準備です。もしかしたら使わなかったかもしれませんよ」
最初から想定していたわけではない。
もし想定して動いていたら、それは策士だ。
軍師になることを強くお勧めする。
「戦術、というよりも戦いは準備したほうが勝ちます。何気に不要だと思った物が実際になったら必要になった、なんてことはありませんか?」
イリスイス第二王女は思い出すような素振りを見せた。少し経っても思い出そうとしていることから、なかったというのが推測できた。
これは、まだ実戦経験が足りないな。
考えれば、彼女は騎士見習い。
まだ未熟で騎士として見なされていない。従って、実戦経験は乏しいはずだ。
「まだないんでしょう。ただ、実戦を幾つかこなせば分かります。例を述べると、魔法です。使わない魔法、もしそれを相手が使い弱点を知っていたら?」
そこまでのヒントを教えると、イリスイス第二王女はハッとした顔をする。
理解してくれて何よりだ。
「知識は武器になります。まだ学生の身、時間がある内に勉強して知識を蓄えることをお勧めします」
この辺りは、頭で分かっていても本質的に分からなかったりする。
だからこうして第三者が実戦を交えて教えることで、より深く理解してくれるのだ。
「で次に進みますが、武器選びから進んで私がナイフを投擲した時、弾いた後私を見失いましたよね。その後に探さずには迎撃しようとしたのは良かったです」
褒められて、イリスイス第二王女は少しばかり頬を赤らめさせて喜びを見せる。
「どうしてあんな事を?」
「えっと、もし戦ったらという脳内シミュレーションをしていてそのおかげです」
なるほど。憎しむ故にそういうことを考えていたか。
近づく暗殺者に対して全方位は脅威だ。だが、
「気をつける点として、私のように近づく暗殺者であればあの魔法は脅威になりますが、遠距離手段を持つ暗殺者からすればただの的になります。使う場合は、相手を見極める必要があります」
「なるほど」
魔法というのは相手よって相性というものがある。
別の相手には有利を取れるものが、他の相手には不利になってしまうなんてことがあるのは当たり前。
今回のイリスイス様の魔法は全方位で近づく相手には有利だが、魔法の関係上逆に逃げ場をなくしているため、遠距離の相手には不利だということだ。
「もし遠距離の相手に使う場合は、自分の姿を隠せるほどに伸ばせばいい。さらに、自分の姿を隠せば後ろから逃げることもできる。要は使い用だということです」
魔法は似た魔法でも、使い手によって戦法が全く違う。
それが面白いし、勉強になる。
よくあるポピュラーな魔法は対策がしやすい、と思うかもしれないがそれは間違いだ。
使い手の数ほど魔法の技が増える。それだけ戦えば戦法が増え、厄介になる。
ただ、それは違う魔法でも似たような感じで利用はできるため、魔法は厄介なのだ。
だからこの国は魔法を教育する騎士というものは厄介極まりない。
謂わばエリートだ。
「あと教えることといったら……」
剣の魔法で近づくのを拒否した後、イリスイス様の魔法を見て特性を理解。逃げ場がないと分かって影収納から木剣を上に投擲。
近くに落ちて注意を引けばいい、と思っていたらまさか頭に当たるとは思っていなかった。
運が良かったと、今でも思う。
「あとは特にないですが、今回のようにルールを決めて戦う場合、騎士のように正々堂々と戦う相手ならいいですが勝つことに関して貪欲な者ならルールの隙間を突いてくるのがいるので注意してください」
注意すること、といったらそういった所だろう。
今日の教育としてはこんな感じでいいはずだ。
「教育はこんな感じで大丈夫ですか?」
本音を言えば、もう終わりにしたい。
護衛の騎士だっていつ戻ってくるか分からないのだ。戻ってきていちゃもんを付けられるぐらいなら、早めにやめたい所。
ただ、本音があるとはいえそれを口にすることはできず言葉を隠して笑顔の仮面を被るが、イリスイス様にはそれが見抜けなかった。
「もう少し、お願いしてもいいですか? 時間はまだあります。戦えば何か掴めるような気がするんです」
そんなことを言われれば断ることなど出来る訳がなく、
「はい、喜んで」
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