39話 出会いたくない人間からは逃れられない
少し、追加で書きたかったので昨日は投稿できませんでした
幾日か日が経ち、今は昼過ぎ。
フィラルシア第三王女、フィルは母君とお茶会を開いている。
その間の護衛はフィルの母君の騎士が護衛をしていて、フィルの護衛騎士はというと騎士団所属の騎士達と鍛錬に励んでいる所だろう。
なら俺はというと、雇い主であるラディアント第一王子の所にいた。
朝、王城へ来た時に昼過ぎに来てほしいという連絡を貰った。
来れるなら、ということもあったが王子である人間からそんな指示が出されればそれは強制に等しい。
昼過ぎにラディアント第一王子の側使えが迎えに来て、部屋まで案内してもらう。
部屋の中にはラディアント第一王子がお茶を飲んでいて、近くに初老の女性の側使えが一人。壁際には線の細い男性の騎士が後ろで腕を組んで立っている。
ラディアント第一王子から強い視線を向けられ、すぐに外す。その強い視線が近くに寄れ、という意思があった。
呼ばれた理由が分からず、事前に教えてもらってもいないため怖いな~、と思いながらもそれは顔に出さずに近づく。
「教育はどんな感じだ?」
定期報告か。
呼ばれた理由が分かり、内心ホッと安堵しながらも答える。
「現在は暗殺者の心得と言うべきですか、暗殺者の視点を教えました。それにより暗殺者の対策もある程度は分かったんじゃないでしょうか。後は本人の能力の問題なので、地力を上げることが最優先だと思います」
「なるほど。順調ということだな」
「ええ、まあ」
何やら考え込むラディアント第一王子に頷き、彼が答えるのを待つ。
その答え次第で、こちらに負担が来るんだろうな。
「追加の仕事をしてもらいたい。大丈夫か?」
それは強制なんだよな、と思いながら頷く。
「問題ありません。それで、追加の仕事とは?」
「私のもう一人の妹にも暗殺対策の教育をしてほしい」
それって……。
頭の中で一人の少女の名が浮かぶ。
どんな人間か、顔を見ていないため思い浮かばず、脳裏に浮かぶのは名前だけ。
しかし、その名前のせいで胃がむかむかする。
理由はストレスで。
名はきっとイリスイス。第二王女で前騎士団長のフォードルに懐いていた少女のはずだ。
ああ、最悪だな。
名前を聞かずとも分かった。
ラディアント第一王子からもう一人の妹、という時点で大体は察することができる。
胃が痛い。
これから起こる事を考えると吐き気すら催してくる。
お腹の中に何も入っていないのだが。
顔を青くしながら胃の辺りを擦りながら歩いていると、正面から嫌な騎士が歩いてくるのが見える。
うげっ! と漏れそうな声を我慢した。
その騎士は寡黙な騎士。
一度、騎士に誘拐されそうな所をティシアと一緒に戦った男だ。
出来れば喋られませんように、と祈りながら横を通り過ぎようとするがそうはいかなかった。
「こんな所を歩いていれば、他の騎士から何を言われるか分からないぞ」
まさか喋られるとは、そして心配されるとは予想にもしていなかった。
そこまで仲が良いという訳ではない。
「ラディアント第一王子に呼ばれましたので」
とっとと早く終われ、と念じながらのためかそれが声に出ていた。
「そんな態度だと他の貴族に何を言われるか分からないぞ」
「すみません、以後気をつけます」
しかし、こんな所にいるとは思っていなかった。
今はまだ騎士の鍛錬の時間のはずだ。サボりか?
このまま言われ続けるのは癪で、何か言い返してやりたいという気持ちが芽生えてきた。
「確か、今はまだ騎士団で鍛錬の時間のはずでは? どうしてここに?」
「ついさっき終わった所だ。それに、あんな事に興味はない。やる気もない」
そんな言葉を騎士から聞くとは思いも寄らなかった。
ティシアを見れば分かるが、彼女はきっと全てを国に捧げるような感じではある。だからこそ、騎士全体がそのような感じだと思っていたが実は違うらしい。
「騎士がそのようなことも言うんですね。不敬に当たりませんか?」
「不敬? そんなもの、こんな腐った国には何も起こらんよ。それに、全てを失った俺には関係もない」
興味を失ったと言わんばかりに寡黙な男はそのまま去って行った。
何がしたかったんだ、あの男はと何故話しかけられたのか分からず考えていると
「カインか? 今戻り?」
後ろから声を掛けられ、振り向くとティシアがいる。
騎士団の鍛錬からの帰りなのだろう。
「ああ。こちらも今用事が終わった所だ」
顔が青くなっているのは自分でも分かっているため、頑張って笑顔を浮かべる。
しかし、それが今までとは違う表情のせいでティシアにバレた。
「大丈夫? 顔色が悪いけど」
「そう見えるか? なら思ったより重症だな」
「何か悩みなら相談に乗るけど」
「そう、だな」
こういう悩みを言っていいか、相手が騎士ということもあってどうすればいいか少し迷ったが溜め込むといつ爆発するか分からないため、相談することにした。
「頼むよ」
「なら、あまり人がいない所にしよう。それと、私達は護衛だから長時間が離れ続けるのは不味い。分かるね?」
「ああ」
王城の事は詳しく分からないため、ティシアに案内してもらう。
ここまで仲良くなるのに、かなりというほどではないが時間がかかった。
仲良くなれたのは、信頼されたからではないか。
最初は最悪だった。しかし、仕事を通じて仲良くなれた。
互いに専門は違う。だからこそ、ティシアは分からなければ俺に聞く。
丁寧に答え、教えたため信頼された。
思えば、イリスイスも最初のティシアと同じように最悪な状態だ。
時間がかければ仲良くなれるかもしれない。
そう考えると、少し気が楽になった。
ティシアに案内され、連れていかれたのは城の外の人があまり来なさそうな木陰だ。
「それで、どんな悩みなの?」
「イリスイス、第二王女で呼び方は合っているか? その人にも暗殺対策の教育も頼まれてな」
「ああ、そういう事」
大体は理解してくれたらしい。
「まず大前提として、イリスイス様が恨んでいるのは間違いないかな」
ぐふっ! 矢が心臓を突き刺したような痛みを覚える。
仲良くなるかも、という理想が崩れかけていくのが分かった。
「ただ」
その言葉にもしや、という希望があるのと同時に絶望がある。
「つい最近、魔法学院で護衛訓練があったでしょ? それで攫われたことで本人が何が思うんじゃないかな、と私は思う」
なるほど、当事者か。
もしこれが別の人間が攫われれば他人事で済ますことができたが、当事者となればさらに重く認識する。
そうなれば、真面目に受けることだろう。
だからといって不機嫌を隠すかどうか別問題だ。
「そうであってほしいな。俺としても、まずはなんとか頑張ってみせるよ」
「ええ、頑張って。ただ、気をつけて。騎士の中にはイリスイス様を持ち上げてあなたを排除しようとする動きがあるらしいから」
「ええ……」
そんなことを身近から聞かされるとは思わず、何も言葉が出ない。
何かしたくても、どうしようもできないのだ。
もしすれば、より排除しようとする動きは強くなるだろう。
「こちらも出来ることはする。だから、頑張って」
本当に、なんとか頑張るしかないだろう。
その日の内にあるのか? と思いながら仕事をしたが特になく、もしや日程の調整で少し時間がかかるのかもと思いながら、翌日も仕事をしていると、昼頃にやるそうだ。ちくしょう。
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