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38話 騎士への教育

 暗殺者への対策、それを一言で済ませるのは簡単だが教育しそれを教えるのは難しい。

 特に、覚える気のない騎士を教育するのは無理ともいえる。

 今は護衛になったということで城の中をティシアに案内してもらっていた。

 

「どうして私が」


 案内する事が不服で不満を漏らしている。

 しかし、仕方のない事だ。その指示を出したのがフィラルシア第三王女なのだから。

 

「王族からの指示だからな」


 騎士という関係上、忠誠は王族に捧げている。

 そのため、命令を拒絶することができない。

 

「それはいいんです。どうして私がこんな男と」


 彼女の言葉からは憎悪は感じられない。どちらかというと、嫌悪感だろうか。

 貴族が平民を嫌うのは分かる。

 お金が使えるのが少ない平民は、それなりに清潔はしているが貴族ほどではない。

 貴族から見れば不潔、ということである。

 他にもありそうだが。

 

「なら、離れようか?」


 そんなに嫌なら、と提案してみた。

 隣でここまで毒を吐かれれば、気分が悪くなる。

 

「やめてください。そんなことしてもし一人でいるのがバレれば、護衛から外されます」


 カインから離れるより、護衛でいるほうがよほど大切なようだ。

 そこまでの事なのだろうか、分からない。

 

「そんなに護衛が大事か?」


「はあ!?」


 呆れたように聞いてみると、熱心に話し始めた。

 

「王族の護衛というのは、騎士からすれば非常に光栄なことなんですよ! 分かりますか!?」


「いや、分からねえ」


「なんで分からないんですか!?」


 キイィィー!! という擬音が合うように両手で顔を歪ませている。

 そこまで表情を変えるほどだ。どれだけ光栄なのか、大体だが理解できた。

 ここまで発狂するのだ。逆にやめてほしいぐらいだ。


「あんたがそこまで発狂するんだ、分かったらからもういい」


「分かったなら良いんです」


 理解したと聞いて、納得するティシア。

 それでも、忠誠があるのかと言われれば少し違う。

 勿論、忠誠はあるだろう。平民からすれば、王族とは雲の上の存在。接する機会は限りなく薄く、ティシアのように発狂するほどではない。

 何をするか、されるか分からないという恐れの方が近い。力関係では、あちらの方が上なのだから。

 

 軽く雑談をしながら城を歩き、一階から上って見て回る。

 そこで分かった事は、中に入る抜け道が基本ないということだ。

 となると、入る方法か限られてくる。

 

「城に入り込む穴はなさそうだな」


「当然です。というか、あれば既に見つけていますから」


 確かにそうだ。騎士もそこまで馬鹿ではないだろう。

 お蔭で色々と絞れて来る。

 

「そうなると、前回の侵入は色々とありそうだな」


「ありそう、とは?」


「ん? スパイ」


「なっ!?」


 いるわけない、と否定しようとティシアは口を開ける。

 しかし、前回の誘拐の事を考えると否定できなかった。

 その苦悩に歪む顔を見て、何を考えているのか理解できる。

 

「入る場所がないなら、誰か入れたとしかないだろ?」


「確かにそうです。けど……」


 信じたくない、という顔をしている。

 王や貴族を守る騎士が、その貴族の中に敵がいるという事を考えたら色々と思う事があるだろう。

 

「まあ、今回はその犯人を探し出すことじゃない。どうやって襲撃を未然に防ぐかだ」


「分かってます」


 その顔には幾分か真剣さがあった。

 次の襲撃がある訳がない、という自信から最初はカインに対して敵対的だったが、身内に敵がいるかもしれないという可能性からまたあるかもしれないと考えたからだ。

 

「それで、どうすればいいんですか?」


「まず、侵入してくる事に関しては対処は無理だと思ったほうがいい」


「それを防げた方が一番だと思うが?」


「確かに。そこを防げるのが一番だ」


 事前に防げる、という点で考えれば確かに良いだろう。

 しかし、それが出来るかという問題が出てくる。

 

「問題は身内に敵がいる以上、案外すんなり入る」


 経験上によるものだ。

 そこら辺については詳しく知らないが、中への侵入はかなり楽だった。

 侵入については末端の人間がやってくれたが、失敗しないために入念な計画をしている。

 

「だから、入ることは防ぐのは不可能に近い。一番可能性があるのは、殺そうとするのを防ぐことだな」


「それまでは倒せない、ということか」


 悔しそうに呟く。ティシアからすれば、事前に倒したいという所なのだろう。

 だが、倒すのは難しい。

 

「基本的に、暗殺者は三種類に分かれている。隠れて潜むのと、変装するの、そして当日になって来てごり押しするのだ。三番目はまず倒せないが、一番目二番目に関しては上手い相手だとまず不可能」


「やはり、最後まで守るしかないということか」


「それが護衛だから当然だろ?」


「確かにそうだが……」


 ティシアは守るより攻めの方が好きらしい。

 しかし、それは護衛として失格。そういう攻めっ気のある相手は御しやすくて楽だ。

 逆に、暗殺者の視点を持っていないのだと今の会話で分かった。

 

「暗殺者を相手にする場合、肝心なのは相手を殺すことではなく守ることだ。理由は分かるか?」

 

「ん?」


 考えるように頭を悩ませ、んぅ~と可愛らしい声を上げるが回答らしい回答はでなかった。

 

「分からない。答えを教えてくれ」


「殺すのも勿論重要だ。だが、そういう相手は策を弄してくる。考えてほしい。あと一歩、殺す状況の時にティシアはどうする?」


「それは勿論殺しに行くな」


 自信満々に答える。その顔には間違いなどないという文字が見える。

 そう、普通なら誰だってそうしてしまう。

 目の前に転がっている餌。それを見逃すほど誰も優しくない。

 涎を垂らした空腹の犬のように、飛び込んでくる。

 

「もしそれが罠だった場合、その時はどうする?」


「それは……」


 言葉に詰まった。

 そう、暗殺者は万が一の可能性を見逃さない。それが一か八かの賭けであっても。

 暗殺者にとって第一は暗殺。それがゴールだ。その後のことなど、考えていない。

 

「そういう場合の相手もいる、という話だ。だから、護衛をする時に重要なのは守るという事。常に守り続ければ、そういうことにはならない」


「だが、それではこちらが一方的に攻められ続けるだけだぞ」


「確かにそうだ。なら、次はこっちが相手を罠にかければいい。そこら辺の鍛錬は騎士のほうが上手いと思うが」


「なるほど、ありがとう。勉強になったぞ」


 これで暗殺者の視点は教えられたな。

 今までの視点とは別の視点を持ち、考えた方も少しは変わってくるだろう。

 その使い方を決めるのはティシア自身だ。

 あとは助言だけに努めよう。

 

 考え事をするティシアの横顔を見ながら、そんな事を思うのだった。

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