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37話 王族の護衛に転職しました

 服を、買った物に着替えた。

 騎士のようなスマートな服だ。

 色としては暗い色、灰色や黒に近い色を基調としている。

 

 顔も整っているためか、騎士と言われても疑われることはないだろう。

 服一つで、ここまで変わるのかと驚きを隠し切れない。

 

「これで幾分か見た目はマシになりました。では、主であるフィラルシア第三王女に会いに行くとしましょう」


「はい」


 会ったことがないため、どんな人か分からず少し緊張する。

 ラディアント第一王子が紹介するのだから、悪い人ではないと信じたい。

 不安が募る中、服を着替えた後に城の中に入る。前に着ていた服は袋に入れてもらう。

 側使えのゲイルバッハがいるおかげか、すんなりと城の中を自由に歩ける。止める者は誰もいない。

 こちらに敵意を向ける者もいない。衣装を変えただけでこうも変わるとは、誰もカインのことを影の王だと気づいていなかった。

 

 歩くこと数分、階段を幾つか上って扉の前に立ち止まる。

 

「ここに主であるフィラルシア第三王女がいらっしゃいます」


 ようやく会う、と思うと緊張がより重く感じる。

 そんな緊張の重圧が圧し掛かっている中、ゲイルバッハが扉をノックした。

 早過ぎない!? と思わず言いたくなるが、貴族の護衛になる以上重要になるのは礼儀。

 平民であるカインは黙るのが得策だ。

 

「フィラルシア姫様。カインさんを連れてまいりました」


「どうぞ、入ってください」


 背伸びするような、可愛らしい少女の声だ。

 入っていいという許可を得て、ゲイルバッハが扉を開く。

 そこには一人の少女と三十代くらいの貴族女性、そして少し遠い所に女性の護衛騎士がいる。

 年若い声からして少女のほうだろう。

 

 絹のような艶のある金色の髪に藍色の目。目が大きくて可愛らしい。

 貴族らしく鮮やかな藍色のドレスを着て、今まで勉強していたようだ。

 初めてフィラルシア第三王女と会ったが、どこかで会ったような気がした。初めて会ったような気がしない。

 どこかで会ったような、どこだろう? と思い出せそうとするが思い出せない。

 

 必死に思いだそうとしていると、フィラルシア第三王女は二コリと笑みを浮かべる。

 

「お久しぶりです、カイン様。あの説はどうも」


 あの説とはどの説だろうか、と必死に考えるが全くといっていいほど浮かばない。

 フィラルシア第三王女の言葉に興味を持ったゲイルバッハは尋ねる。

 

「どこかお会いになったのですか?」


「ええ。前に攫われた時に助けてくれたのです」


 ん? もしかしてフィルか!!

 攫われた所を助けた、という言葉に理解できた。

 名前もフィルで呼んでほしい、ということからてっきりそういう名前だと思ったのだが愛称だったようだ。

 しかし、前に会った時と印象が違うせいか全く見分けがつかなかった。

 

 喋り方も違うからだろうか。

 彼女もまた、貴族の仮面を着けているせいか前に会ったような素は出せないに違いない。


「それはなんと」


 ゲイルバッハがこちらを向いて、頭を下げた。

 

「姫様をお助けしてもらい、本当にありがとうございます」


「いえ、あの、その」


 今まで感謝されることがなかった。

 だから、目の前で感謝の意思を示されたことに、どう対応していいのか分からずあたふたと焦りながらも必死に思考を回転させる。

 

「俺は、なんというか、ただあそこにいて運が良かったというだけですし」


「いえ、それでもです。攫われた時は私達一同、本当に焦ったのです。なので、今日はカインさんにもう誘拐されないように護衛とその教育をしてもらうのです」


「こちらでも出来る限りの事はします」


 それが仕事だ。最善を尽くす。

 しかし、貴族を教えるということに少しばかり不安を感じる。

 こちらの指示に従ってくれるだろうか? 

 貴族は身分が高いためか、平民であるカインの指示を従うかと言えば否だ。

 ただ、その命令が王族からということもあって五分五分である。

 

 ゲイルバッハからこれから護衛するフィラルシア第三王女を紹介してもらい、そして教育する騎士を紹介してもらった。

 その護衛騎士が一歩前に出る。

 ゲッ!!

 

 これから教育する騎士を見て、顔が歪みそうになって声が出そうになるのをなんとか堪える。

 来たのは、隠れ潜んでいた時に出会った騎士の片割れ。男装の騎士だ。

 まさか、この騎士と一緒に仕事をすることになるとは。別の騎士はいなかったのか?

 

 そんなことを考えざるをえない。

 他に騎士はいないのか、と思っていると男装の騎士は二ッコリと笑う。

 その笑みは綺麗だが、逆に不気味で仕方がない。

 

「お久しぶりです。ティシア・レステオンと言います、よろしくお願いします」


 仄かに笑みを浮かべるだけで様になり、女性が桃色の悲鳴を上げるのが見える。

 男装の麗人だけあって顔が整っている。男からすると、羨ましくて仕方がない。

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」


「彼女はカインさんとお見知りということもあって、今回の護衛に選ばれました」


 なるほど、そういうことか。

 対峙したことがお見知りした、ということだろう。

 ふざけているのか? と思わず反論したくなる。

 男装の騎士。ティシアも笑みが固まったままだ。

 やはり彼女も、そこまでの事情を知らないらしい。

 

 まあいい。そこら辺も踏まえて仲良くなっていくしかない。

 

「カインさん、これから一緒に頑張りましょう」


 彼女も同じ事を考えたのか、握手を求めてきた。

 

「ええ、一緒に頑張りましょう」


 握手をすると、女性だが硬い手の感触が伝わる。

 が、それは急変する。

 急に強く握られた。

 

 こいつ!!

 思わず言葉に出そうになるが、グッと堪える。

 騎士というだけあって力が強い。

 暗殺者であるカインでは、握力負けしている。

 

 やはり、暗殺者に教わるということが貴族としてはやはり、思うことはあるようだ。

 それをここで解消しないでもらいたいものだ。

 絶対にこいつとは合わない。

 これが護衛騎士のティシアとの最初の関係だ。

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