閑話 ラディアント第一王子の策略
その人間の名前を聞いた時、最初は本当か? と耳を疑ってしまったものだ。
だが、相談してきた相手はそういう冗談の類を言う人間じゃない。
「本当か? 嘘だ、というほうが信憑性が高いが」
「私も嘘、とは言いたいんですけどね。生憎と言い切れないんですよ」
「本当にいるのか? 影の王が」
ラディアント第一王子には信じられなかった。
そもそも、姿形が不明と言われている最強の暗殺者が自分の国にいるなど、信じることはできない。
しかし、相談しているのはリンジャオ。
彼は滅多な事ではない限り、冗談を言うような人間ではない。
それは昔、一緒に学園に通って通じ合っていたから分かることだ。
この出来事は遠征訓練前に行われたリンジャオの相談である。
もしもの時の為の一手。何が起きるか分からない未来を考え、最悪な未来を起こさないために。
遠征訓練を終えてから、すぐに騎士団が動き出した。
妹のイリスイスが王に計らったからだ。
影の王。その存在が城の中では持ち切りである。
こそこそ動こうとしたのに、動けなくなった。厄介なことだ。
おかげで、騎士団の一部の厄介な貴族どもが活気付き始めた。
ようやく潰したと思ったのに、このゴキブリどもは。
こうなってしまっては、早急に動く必要がある。騎士団よりも
ただ、こちらは出来ることは少ない。
貴族である以上、平民に手を出せばそれだけで注目される。それに、わざわざ貴族が直接手を出さない。別の手がある。
相手がいる時間、夜に部屋の中にある水晶玉を起動させた。
「リンジャオ、いるか? いるなら答えろ」
「いますよ。ちょっと待ってください」
何やら物音が聞こえる。
水晶玉には映像が見えず、聞えるのは音だけだ。
椅子に座るような音が聞こえると、リンジャオが喋り始めた。
「どうしました? 王子」
「影の王を匿え」
「生憎とそうしたい所ですけど、もう逃げ出しましたよ」
「逃げただと?」
それは好都合だ。騎士に捕まらなければ、それでいい。
あとは騒ぎ立てる貴族を抑え込む暇さえあれば。
「騎士団が見つけるよりも先に見つけて匿え」
「そうしたい所山々何ですが、こちらは見られているんですよ」
「見られている? そういう事か」
騎士団はとことん冒険者ギルドを信じていないらしい。
それも当然といえば当然か。
影の王も元は冒険者。温情で逃走の手助けをしている、と思っても仕方ない事。
影の王と縁のある人間を見張るなど、よくやることだ。
そうなると、少しばかり話が変わってくる。
貴族を抑え込むことは不可能。時間が足りなすぎる。
それに、王都に入る門の警備を厚くしているなんて話が耳に入っていた。
外に出れなければ、中にいるしかない。
見つかるのは時間の問題といえる。
なら、別の手が必要になる。
「騎士団よりも早く見つけ出せ。あれに見つかれば、どうなるか分かるだろ?」
「ええ、知っていますよ」
思い出すだけでも反吐が出る。
あの時、この国は暗黒期だったと言える。全ての悪事が握り潰されていた。
それに王族である俺の命をも狙う輩もいた。だから無闇に外へ出ることができず、当時は魔法学院に入学していたこともあって寮に籠る毎日だ。
あのまま続けば、俺は死んで王は飼い殺し。
今とは違う他の貴族が台頭していただろう。
しかし、崩れた切っ掛けは一つ。影の王による暗殺。
あれが騎士団長を殺してくれた事で王族を排除しようとした貴族は消え、おかげでこちらも生きやすくなった。
ただ、そのせいで貴族ではなくなったものもいるが。
そういった理由もあり、影の王は恨まれている。
前騎士団長を殺した事で騎士団の中の貴族で台頭しようとした者もいて、影の王を攫うとみせかけて殺すなんてことがあり得る。というか、そういう未来が見えた。
「分かっているな、騎士団よりも早く捕まえろ。捕まえたらすぐに連絡を寄越せ。王との面会はできるだけ日程を伸ばす」
「分かりました。こちらも極力見つけるように努力します」
「それとだ、口調も前のように話せ。周りには側使えもいない。見られていないんだ」
「無理、ですよ。それはあなたが一番分かっているでしょ? これは俺の罪なんです」
そこまで言われては、深く入ることができなかった。
彼がどうして仮面を被るか、その理由も過去も知っている。だから、余計に言うことができない。
王族特権だ、と親友だから言えるジョークも言えないほどに。
「では、私からはこれで」
それを最後に連絡は終わる。
日が幾らか経ってから影の王を見つけたという連絡が来た。
しかし、騎士団にも見つかったという悲しい報告も一緒に上がってくる。
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