33話 王との面会なわけだが
昨日、投稿できなかったので今日。そして明日もいつも通り投稿する予定です
宿屋でゆっくりと休養していると、宿の人に呼ばれてリンジャオと会うことになった。
そこで王の面会の日を教えられることになる。
明日、だそうだ。
もう少し早く伝えることはできなかったのか、最初に聞いてそう思った。
ただ、あちらも前日に伝えないといけない理由があったに違いない。
連れて来ないと首を刎ねてもいい、と言っていたから逃げないように前日に伝えたのだろう。
逃げないことに信じてくれなかったのは少し思う所はあるが、仕方がないともいえる。
翌日だと分かり、どういう話をするのかと考えていたら気づけば日が経ち、当日になっていた。
当日の朝。朝食を食べ、身だしなみを整え、準備をしていると馬車が迎えに来る。
王城に行くこともあって、貴族向けの立派な馬車だ。
平民が使うような、古かったりボロいわけではない。
馬車の中には冒険者ギルドのギルドマスター、ロードリアンとリンジャオがいる。リンジャオの隣に座ると、馬車は動く。
見た目は立派だがガタゴトと馬車は揺れ、お尻が痛い。クッションか何かが欲しいものだ。
「まず、あなたに注意してもらわないといけないことが一つ」
馬車が王城に向かう中、リンジャオから注意事項が述べられる。
「王の面会では助けることはできません」
まあ、そうだろう。こちらを助ければ、俺と同じ罪人になる。
そんな馬鹿、するわけがない。
「分かっている。あとは王がどうするか、という訳だが」
リンジャオを目で訴えると悲壮感を漂わせた顔をする。
何故その顔をする? 何か知っているのか?
「知っている、という顔だな」
「気をつけてくれ、という一言しか言えない。すまない」
「分かった、それだけで十分だ」
何故言わない、という問いには簡単。言えないからだ。
ここは馬車。普通に話しても外に漏れる心配ない。
なのに話せないのは漏れるからだ。そこで考えることは一つ、どこから漏れるか、だ。
この馬車にいるのはロードリアンとリンジャオの二人。ただ、もう一人いる。
御者だ。どこから雇ったか分からないが、何かしらの手段でこの馬車の中の会話が盗み聞きされているのだろう。
本当、嫌な話だ。
冒険者ギルドも疑われ、今から王の面会。
どういう最後を迎えるか、容易に想像できてしまう。
馬車は沈黙に保たれたまま、王城へ向かった。
「沙汰を言い渡す。死刑だ」
やはり、こうなったか。
王の面会が始まった。場所は玉座の間。
赤い濃淡なカーペットは玉座から入口まで続く。
王という最上位の人間と会うため、立っていれば不敬に当たる。
罪人たる俺は忠誠を誓うというていを示さないといけないため、他の人と違って俯く。
後ろにはロードリアンとリンジャオ、そして何故かフォーリンもいる。
玉座には王が座っている。第一印象はしょぼい。王というからには立派な人間かと思ったが、そうではない。特徴があまりないのだ。
歳故に髪が白髪で後退している。皺も多く、ボロイ服を着ていればそこらにいる爺だ。
それでも王。この国のトップであり、自分の思いのまま人の運命を決めることができる。
玉座から隣、少し離れた場所に恰幅の良い初老の男性がいる。
質の良い服から見て、ただの貴族ではない。離れているとはいえ、王の隣にいるのだから位が高いのだろう。
その男から憎悪の籠った目で見られている。殺気ではないが、気色の悪い視線だ。暗殺者の時によく見られていたから分かる。
しかし、死刑か。生憎とそう簡単に死ぬほど優しくはないぞ。
玉座の間の周りは騎士で囲まれている。
壁際にいる騎士が出入り口を塞ぎ、逃げ出さないようにしていた。
「お待ちください、王よ!」
逃げ出す算段を考えていると、後ろにギルドマスターのロードリアンが切羽詰まったような声を上げる。
「彼が何故殺されるのか、理由をお聞きになってもよろしいでしょうか?」
「それが暗殺者だからだ。いるだけで誰が暗殺されるか、分からぬ。よって殺すのだ」
「彼はもう暗殺することをしないと誓っています。逆に、彼がいることで暗殺を防げる可能性があります」
ロードリアンの助言に、王は面を喰らったような顔をする。
「そういう風には考えていなかったな」
ええ……。
思わぬ反応に内心で声が口からを漏れそうになるのを防ぎ、心の中だけで留める。
王は考えるような素振りを見せ、数秒思考に耽た。
そして、結論が出る。
「分かった。今回の死刑は不問とする」
あっさりと自分の未来が変わってしまった。
さっきまで逃げる算段を考えていたが、なんだか馬鹿らしくなってしまう。
普通ではない王に、記憶の奥底が掘り返させられる。
まだ暗殺者だった頃、他国の王を殺す依頼を何度も受けたことがある。しかし、この国で王を殺す依頼は受けたことがないし、聞いたこともない。
風見鶏のようにコロコロと答えが変わる王を見れば、その理由もなんとなくだが察してしまう。
死刑を免れて一息吐けるが、注意深く玉座とその周りに視線を広げる。
玉座の隣、初老の男性が王を焦っているような顔で睨んでいる。その事に王は気づいていない。
「王よ、なりません」
やんわりと優しく、諭すように初老の男性は話しかける。
「もしそこの影の王を生かせば、この男に殺された貴族が何をするか分かりません」
「確かに」
「ようやくこの国も安定してきたというのに、影の王がいるせいでまだ混乱します」
「ふむ……」
だんだん風向きがおかしくなってきた。これは、覚悟を決めないといけない気が──。
「またこの国を混乱させるわけにはなるまいか。極刑しかないか」
ですよね。分かってはいたが。
「騎士達よ、影の王を捕らえろ」
生き生きとしはじめた王の隣にいる初老の男性が、腕を振って騎士達に命令する。
壁の周りに立っていた騎士数人がゾロゾロと間合いを狭めていく。
「生憎と、そう易々と捕まるわけにはいかないんだ。やりたいことだってある」
影魔法、影収納。
服の内側、腕をだらんと下げた袖の中から物を取り出す。
取り出す物はこういった時のために、絞って来た。王の面会があるまで宿にいたため、余裕があった。
袖から落下してきた物は取らず、そのまま落ちる。
それが落ちた途端、白い煙が玉座の間に広がっていく。
煙幕、目隠しだ。
「な、なんだ!?」
初老の男が驚きの声が聞こえる。
白煙は広がるのが早い分、消えるのも速い。
その間にこの場から消える必要がある。
ただ逃げるだけでは、騎士は問題ないが冒険者のフォーリンは化け物だ。
あれは考えて動いていない。直感で動く。
白煙の中を逃げるだけでなく、もう一工夫を加えたい。
影魔法、影分身。
六つの影を生み出す。五つを動かし、その場で散らせる。
残り一つをその場で止まらせ、五つの影の動きに真似てこの場から逃げ出す。
影に紛れ、さらに本体と思わしき場所には影がいる。
ばれる訳がない。
そう高を括っていたら、雷撃の斬撃が襲ってきた。
横殴りに近い形で放たれた雷撃の斬撃を剣を使って受け止める。
雷撃の斬撃はただ攻撃だけでは終わらず、煙幕すらも吹き飛ばした。
煙幕が晴れ、姿を晒すことになった影が騎士達に一体ずつ屠られていく。
元々は逃げるために作ったもの、戦う気など一切なく簡単に屠られていった。
残ったのは本体である俺。対面には騎士ではなく、冒険者のフォーリンがいる。
彼女が雷撃の斬撃を放った張本人に違いない。
「試しに聞くが、どうして俺がここにいると思った?」
聞かざるをえなかった。
煙幕だけでなく、さらにバレないために影の分身を作って、場所も入れ替えたりした。
それでもばれたのだから、興味があった。どのような理由でバレたのか、今後のために知っておきたい。
ただ、彼女の答えは頭の中で浮かんでいたッ想像の一つ。
そして、一番当たってほしくなかった想像の一つであった。
「えっと、勘で」
ふざけるな!! 心の中で叫ばずにはいられなかった。
幾つも対策を講じてきたが、その全てをぶち破った理由が、勘という一言ならどうしようもできない。
彼女を連れて来たのは、俺対策だろう。
全ての策を勘の一言で見破られたら、心が折れる。
リンジャオもこういうことが分かって連れて来たな。
もしそうでないのなら、考えることを放棄した少女を王の前に連れてくるはずがない。
恨みの籠った目で視界の端にいるリンジャオを睨むが、そのリンジャオは全く別の場所に意識を向けていた。
彼の視界には玉座の間に唯一ある扉。そこをずっと注視している。
俺の逃走に目もくれない。まるで、別の事を待っているような、そんな感じだ。
それに気を取られ、フォーリンではなくリンジャオの方に意識を向いてしまう。
戦いで相手ではなく別のことに意識を向けるのは死を意味するが、フォーリンはこちらが抵抗しなければ襲って来ることはない。
それが何を意図するか、大体理解できた。
王、いやその隣にいる男が画策して俺を捕らえて殺そうとしているが、リンジャオの方も何やら考えているらしい。
それでも待ち続けるわけにはいかない。影を倒した騎士達が間合いを詰めてくる。
逃げ出さないといけないが、もし抵抗をみせればフォーリンが動き出す。
万事休すだ。リンジャオをの策が早く動き出さないかギリギリ待ち続け、扉が開く。
物々しい音と共に開かれた扉に、入って来た人間が姿を見せるよりも先に声を上げる。
「なんだ、これは!! 何故王の御前で戦いが起きている!?」
入って来たのは二十過ぎに見える男だ。
周りには騎士と側使えを連れていた。
仰々しい服、艶のある金の髪。一目見ただけで只者ではないというのが、すぐに理解できる。
それに、あの男走っている。ローリッヒ王国の第一王子、王位継承権第一位、ラディアント第一王子。
要注意人物だと、昔ここで暗殺をしていたときに記憶している。
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