29話 遠征訓練を終えて
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どんよりとした黒い雲。そこから冷たい雨が身体を打つ。
身体が寒さで震える。かじかみ、手足が冷たくて動かない。
それでも、仕事はしないといけない。この世に潜む害虫を、駆除しないとこの世界はよくなることはないから。
月は雲に隠れ、明かりは魔石の灯のみ。
それも投げナイフで壊して明かりを消した。
周りに人もいても、場所が場所的に壊しても問題ない。
貧民街。
木で作られたあばら屋が幾つもあり、人が中に住んでいるが関係ない。
彼も、それが分かってここまで逃げて来たのだろう。
フォードル。ローリッヒ王国の騎士団長であり、性犯罪者。
幼い少女、まだ未成熟な少女を攫い犯すゴミ屑。
こんな奴、生かしておけるわけがない。
「俺をつけ狙う暗殺者がどんな奴かと思えば、まだ可愛い少女じゃないか?」
薄気味悪い笑みを浮かべる。
言葉の端々から得体のしれぬ気色悪さが漏れ出していた。
気持ち悪い、吐き気を催す。死ね。
確かに、まだ十に近この身体。それに、顔や身体付きが少女にも見えるのは仕方ない。
そういう身体に敢えてしているから。
騎士団長、フォードル。一目で見れば勇ましい。
歳を取っているはずだが若く見え、騎士として身体を鍛えているからかしっかりとした身体付き。
顔も整っていて、女性なら誰もが食いつくレベルの好物件。
だが、性癖が異常だ。幼女、少女を愛する? ただ犯し、壊れたら捨てる。そんなのは間違っている。
「生憎と、俺は男だ。可愛い少女じゃなくて残念だったな」
「少年か? それもまた一興だな。少女のような顔つきの少年、一体、どんな声で鳴くか楽しみだ」
茶化したつもりだったが、まさかこんな返しが来るとは思ってもいなかった。
やはり、生かしておく訳にはいかないな。
「まあ、いい。お前はここで死ね」
「俺はまだこの世界を楽しんでいる最中だ。死ぬわけにはいかないな」
夢から醒めた。気色の悪い夢だ。
あんなことがあってすぐだから、こんな夢を見るのか。本当にやめてほしい。
身体を起こすと、ギシッとベッドが軋む。
すぐにでも壊れそうな、ボロボロのベッドと汚らしい寝具。
やっぱり、買い替えたいな。いや、我慢だ。
買い揃えたい衝動を抑え、我慢する。
今は節約中。それに、今は買うべきではない。
ベッドから出ると、床が軋む。
さっきまで暮らしていた宿。それが嘘のようにボロボロなら場所で、今は暮らしている。
天国から地獄に落とされたような気分だ。
朝から嫌な気持ちでテンションが下がる。
まあ、仕方ないか。あんな夢を見たら、どうしようもないか。
朝食でも食べに行こう。
空腹と気分を紛らわせるために、机に広げていたフード付きマントを手に取り、外へ出た。
その日はいつものような、特に何もない日。
それでもやはり、カインがいないというのは少しばかり調子が狂う。
歯車が噛み合わなかったり、いつもしている事をしなかったり、、そんな感じだ。
それでも日は流れる。
金は必要になるし、仕事をしないといけない。
朝、いつもの通り身だしなみを整え、装備の確認をして冒険者ギルドに向かう。
中に入ると、朝早くということもあり多くの冒険者が掲示板の前で何の依頼を受けようか、悩んでいるのが見えた。
いつもの光景だ。
依頼は早い者勝ち。
誰もが簡単な仕事。報酬の多い仕事を選ぶ。
めんどくさくて報酬の少ない仕事を取ろうとは思わない。
いつもなら、ここであいつが話しかけてくる。何の依頼をするか? なんて話をしていた。
だけど、あいつはいない。本当、どこにいったのやら。
「カインがいないと寂しいか?」
振り返ると、そこにはフォンがいた。
その顔は憐憫の混じった不思議な顔を浮かべている。
「顔にでていたか?」
「いや、ただ俺も同じ事を思っただけだ」
フォン達とは一緒に依頼をしていた。
だから、いないというのは彼らにとっても思うことはあるようだ。
「やっぱり、いないと寂しいよな」
「ああ。それでも俺達は生きている、金は必要になる」
「分かってるよ」
頬を叩き、気分を変える。
しみったれた気分はさよならだ。このまま仕事でもこんなテンションなら、死んじまう。
フォンが遠征訓練をする時に言われた通り、今はフォン達と一緒に行動している。
一人で出来ることは限られているから。
「それで、今日はどんな依頼を受けるんだ?」
「今選んでる所だ」
掲示板の方を指差し、そちらに目を向けると魔法使い見習いのラクリマと神官見習いセリスが依頼を選び、その後ろで騎士のエルフィラがサポートしていた。
人が多いせいか、遠慮しているようにも見える。
ラクリマとセリス、彼らは事情があって冒険者をやっている。
誰もが憧れて冒険者をやっているという訳ではない。
基本は金稼ぎが主流だ。
話を聞けば、ラクリマは魔法学院に行くための学費稼ぎ。セリスは教会の維持費だったり、孤児の養育費など足りないということもあり冒険者になってお金を稼いでいる。
そういえば、フォンやエルフィラが冒険者になった理由は聞いたことないな。
特にエルフィラ。彼女は騎士を名乗っている。
本来、騎士を名乗るには魔法学院を卒業することで名乗ることができ、普通なら騎士団に所属するのだが冒険者になっているのはおかしい。
「フォンやエルフィラはどうして冒険者になったんだ?」
「ん? どうした突然」
「前にラクリマ達の冒険者になった理由を聞いたことがあってな。それでフォン達が冒険者になった理由を聞いてないと思って」
「俺はただ冒険者への憧れだな。エルフィラは……」
言い悩むような顔を浮かべるフォンに、何か話せない理由があると察することができた。
「言えないならいいさ。そういう理由がある、それだけ分かれば十分だ」
「すまん。……あっちも、もうそろそろ依頼が決まる頃かな」
話題を変えようと、フォンは依頼の話をすり替える。
「そうだな。もう決まってもいい頃だろ」
俺としてもそっちのほうが良いので、触れない事にする。
少しお喋りをしてか、掲示板に集まっていた人もかなり少なくなっている。今なら余裕を持って選ぶことができるだろう。
依頼が決まるのもすぐか、と思っていると。
「ライアンッ!!」
名を呼ばれた。少女の声だ。
声のしたほうに向くと、フォーリンがいた。
Aランク冒険者パーティー、雷鳴の剣のエースだ。
見た目は活発な少女で、獣のような勘の鋭さがある。
「ねえ、今日は暇? 一緒に遊ぼう!」
服の袖を引っ張って、物をねだるように振る舞うフォーリン。
だが、彼女の言う遊びは稽古だ。
カインがいなくなってから、暇な時に誘われて試しにと打ち合った所、今みたいに懐かれてしまった。
女性に誘われるというのは良いものだが、まだ子供なんだよな~。もう少し歳を取ったほうが範囲内なんだよな。
やるのは構わないが、やり続けるとお金が入らないと生活できない。それに、フォン達との約束もある。できれば、そちらを優先したい。
ねえねえ、と袖を引っ張られ、彼女の後ろにいる保護者のリンジャオに目を向ける。
リンジャオは目を逸らし、私は関係ありませんと言わんばかりに明後日の方向に顔を向けるが、見続けたことでちらりと顔を動かした時に目が合い、小さくため息を吐いて近づいてきた。
「フォーリン。そこまで引っ張り続けるのは迷惑をかけますよ」
止めに入ってくれるリンジャオに、心から安堵する。
「彼も冒険者。依頼をこなさなければ、お金が手に入らず生きていけません」
そうなんだ。だから離れて……ん? ちょっと雲行きが変わって来てないか? もしかしてこの流れって……。
リンジャオの言葉は断るという感じではなく、何か誘導しているような風に感じる。
その予想は当たっていた。
ピコンッ! と頭上に豆電球が光って擬音が出たような、名案が浮かんだという顔をする。
「なら、私が依頼として稽古すればいいんだ」
ちょっと待て! それは!
依頼という形であれば、拒否することはできない。
指名依頼に近い形であり、拒否することもできる。ただ、拒否するほどではないため困っていた。
一緒に依頼をこなすフォンに助けてもらおうと、隣を向くとさっきまでいたフォンがいなくなり、エルフィラ達の所へ既に行っている所だ。
「ライアンは別の依頼をするようだから、今日は四人だ」
そんなフォンの声が耳に入る。
拒否できる要素がなくなり、フォンは受けるしかなかった。
「分かった。やろう……」
「やった!!」
袖を離し、ぴょんぴょんと小さく跳ねて喜ぶフォーリンに仕方ないと開き直る。
「すみません。こんな形になっちゃって」
誘導してしまった、とリンジャオは謝る。
元はリンジャオが誘導したことで、こんな形になってしまったのだ。罪悪感はあった。
「いいさ。元はフォン達と依頼があって断ろうと思っただけだし。あっちはもう四人でやるらしいから、特に問題はない」
「私も少しばかり、嬉しい気持ちはあるんです。フォーリンが人に対して興味を示すなんて、あまりないことだったんです。だから、少し嬉しくて、なのでお願いします」
「そうなのか? なら、こっちも頑張るよ……ちょっと待って、お願いしますとはどういう意味だ?」
世話を任せた、というニュアンスにも取れるその言葉をリンジャオに聞きただそうとしたが、既にリンジャオは近くにおらず、雷鳴の剣のもう一人のパーティー、幼女のような背丈の魔法使い、机に腕枕をして寝ているテリアスの元に向かっていた。
え? もしかして本当に?
フォーリンの方を見ると、彼女と目が合った。
「ん?」
こくん、と可愛らしく首を傾げる。
その姿はまさに可憐。だが、戦いが好きな戦闘狂≪ジャンキー≫なのだ。
久しぶりの投稿です。長らくお待たせしました。
注意点がありまして、今のお話の二章が完全書ききっていないため隔日投稿で進んでいこうと思います。書き終わり次第、毎日投稿に移りますので、よろしくお願いします




