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28話 遠征訓練 11

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 メイドは二丁のガトリング砲を撃ち続ける。

 あそこに隠れているのは分かっている。なら、出てくるまで撃ち続けるまで。

 出てこなくても、隠れている巨木に撃ち続けて破壊すればいい。

 魔石の魔力が尽きるまで撃ち続け、そして、木が崩れ落ちた。

 

 そこには、カインがいない。

 逃げた? いつの間に。既にどこかに潜んでいると思ったほういいか。

 今のうちに、ガトリング砲の魔石を入れ替えようと、左手で握ったガトリング砲を手放す。

 

 魔石を装填する。それは隙であり、このタイミングで襲って来るのは容易に分かる。

 だからこそ、警戒していると案の定だ。

 その隙を狙い、カインは出てきた。

 右手に剣を握り、身体をマントで包んで隠す。

 

 マントで隠す理由は分からない。守りのつもりだろうか? そんなもの、このガトリング砲ではただの布切れだ。

 魔石の装填を手早く終え、ガトリング砲を撃つ。

 ガトリング砲は狙った方向に一向に飛ばず、もしもう一丁のガトリング砲を拾おうとすれば、隙を狙われかねない。

 

 暗殺者としての武器、一撃離脱。その一撃は僅かな隙で瞬く間に間合いを詰めて殺す。

 ガトリング砲を拾おうとそちらに意識を向けた時、今でも弾が酷くばら撒いているのに、より酷くなれば攻撃の隙になるのは自明の理。

 

 だから拾えない。

 それに、ばら撒き続いている今、カインは近づくことができなかった。

 弾を永遠と、装填することなくばら撒き続けられ、厚い弾幕で容易に近づくことができない。

 

 避け、剣で弾を斬り落とし、傷を負わないようにしているがずっと続く訳ではなく、身を隠すマントの端に当たっている。

 端には当たっている。このまま続けばいずれ当たる。そう信じて撃ち続けていた。

 

 ただし、疑問は残る。

 カインの行動が、殺す気があるように見えないのだ。

 弾を回避して隙を伺う。

 それは確かに正しい行動だ。

 しかし、カインも分かっているはず。ガトリング砲の実力を受けて、身に染みて分かっている。

 

 そういえば、負傷した足が治っている。

 負傷していたら、あそこまで走ることは不可能だ。

 カインは全力で左右に身体を動かして弾を避けつつ、少しずつ少しずつ走って前に近づいていた。

 

 足の負傷があれば、あそこまで走ることはできない。

 痛覚を誤魔化す何かを施していても、負傷した足であそこまで走り続ければいずれ壊れるはず。

 壊れない、ということは治療する何か。回復ポーションを使ったはず。

 

 傷を治したことで、足に負担を与えて時間稼ぎして壊れるのを待つ。というのは使えない。

 少しずつ前に近づいているが、近づくことで被弾は増えてくる。

 なのに、何の対策もなく近づくだろうか。

 それに、殺意を感じられない。

 

 殺そうという気迫が見れず、まるで注意を引くような動きをしているようにも思えた。

 時間稼ぎ。

 その言葉が脳裏に浮かぶ。

 

 何故時間稼ぎを? または注意を引く? 背中を狙う気か!

 即座にそれが思いついた。

 振り向くと、マントを被って身を隠した二人目のカインが背後を取って強襲しようとしていた。

 二人目!? 分身か。

 

 魔法で作ることはできる。ただ、デメリットもある。

 身体を分身するということは、終了後の疲労も増やした分だけ増えてしまう。

 ここぞ、という決め時に使うのが基本。

 わざわざ遠回りをして背後から回って来たようだ。距離にして二十歩もない。

 

 どうして今まで気づかなかったのか、疑問には思うが近づかれた以上対処する必要がある。

 武器はない。

 他の武器を持つ余裕がなかったからだ。

 影に収納したのはガトリング砲のみ。他のも積むと、ガトリング砲とは別の物が出てきてしまう。

 

 だからこそ、武器はガトリング砲を含めてもう一つだけ。

 左手を、背後から迫っていたカインに向けた。

 まだ距離はある。しかし、カインを剣を振る。

 到底届かない。剣の間合いよりもかなり外だ。

 

 それでも剣を振るっていたが、何かに捕まれるように剣が上に引っ張られ踏ん張るが堪えきれずに手放し、明後日の方向に飛んでいく。

 縄魔法、縄操作。名前の通り、縄を操る魔法。

 お腹の周りに巻いていた縄。それを服の袖から出し、剣を掴み放り投げた。

 武器を失ったカインは離れようとするが逃がす訳にはいかず、剣を掴んだ縄で剣を投擲する。

 これで死ぬ、とは思っていない。少し気を逸らせよう、と投擲したのだが剣を掴み損ねて貫かれた。

 

「は!?」


 あまりの呆気なさに思わず声が漏れた。

 だが、貫いた剣はそのままマントと一緒に地に落ちる。

 さっきまでいたカインが、煙のように消えてしまった。

 分身!!

 本命が分身。それは裏をかいた戦術。あえて、本命を囮することで相手の裏をかく。

 

 分かれば容易い。

 向きなおると、ガトリング砲をひたすら避けていた本物のカインが突っ込んできた。

 眼前にまで迫っている。

 遅れた!!

 

 後ろを向いていたとはいえ、近づいた時には気づくはず。

 なのに、いつの間にか眼前にいた。理由は分からないが。

 このままでは斬られる。その前に迎撃しようと身体に巻く残りの縄、全てを使う。

 右の袖から出た縄はカインの身体を掴む。

 掴んだ身体に実体はなく、まるで先程の偽物のように煙を掴んだような感触だ。

 

 剣とマントが地に落ちる。

 落ちるマントに見覚えがあった。間近だったからこそ、分かった。

 それは、城に住む王族を攫おうとして、人攫いに渡した魔法道具だ。

 人から意識が外れやすい、という物でありこれを使えば誘拐は容易い。そう思っていた。

 だが。失敗した。そのマントが今、ここにある。

 ということはそういうことだろう。

 

 彼が人攫いを殺した。それほどの実力がある、ということを今にして気づく。

 二人も偽物。なら、本物は?

 殺気を感じた。すぐ傍で。

 

「ここまで近づけば、迎撃はそう簡単にいくまい」


 懐にまで入り込まれていた。

 すぐ隣で、カインが両腕の腕輪から伸ばした魔法刃で今にも斬り殺そう狙っている。

 裏の裏をかき、そのせいで最後の備えである縄も全て使い切っていた。

 無理だ、対処のしようがない。

 

「殺す!」


 魔法刃で腹を引き裂かれた。

 

 

 

 首を防がれた。なら、二度目は首ではなく狙うは胴体。

 臓器を裂けば時間を経たずに死ぬ。

 魔法刃が腹を引き裂き、メイドは二つに分かれた。

 上半身は落ち、下半身は立ったまま。血を流し、地面を汚す。

 

「やった、が……」


 俺も魔力切れで地面に倒れた。

 

「予定以上に魔力を使い過ぎた……」


 二回の影分身。そして影収納でマントを引っ張り出し、さらに隠密魔法での奇襲。

 三、四回の魔法が限界だったがそれ以上の魔法を使ったせいで身体が立つ気力が湧かず、横になっている。

 ああ、地面が冷たい。

 

 魔力切れは精神的な疲労に来る。立つ気力が湧かない。誰か来てくればいいが、来ないだろうな。

 なんとか一人で……。

 そう思って立ち上がろうとすると、脇から腕を通して持ち上げられ身体が勝手に起き上がる。

 

「大丈夫か?」


 ライアンがいた。あれ、戦闘は?

 

「魔力の使い過ぎで動けん。移動を手伝ってくれ」


「あいよ。そっちはすんだか?」


「ああ」


 メイドは斬った。あとは攫われた学生を連れて帰るだけだ。

 俺のメイドに向ける視線に気づき、ライアンも同じ視線の方を向いて死体があることに気づく。

 

「流石、影の王。胴体真っ二つとは恐れ入った」


「茶化すな、アホめ」


 頭を叩こうとするが身体が言う事を聞かず、優しく叩いてしまう。

 だから影の王だと知られたくなかったんだ。色々と面倒事に巻き込まれるし、茶化されるから。早く話題をすり替えないと。

 

「ライアンの方も終わったのか?」


「倒し損ねたがな」


「ライアンでも倒せないか、あいつは強いんだな」


「ああ、強かった」


 そのあと、すぐに騎士がやってきて学生の救出が行われた。

 

 

 

 彼女は戦いの途中で目を覚ました。

 地を掘削するようなアラームで目を覚ました彼女が見た物はメイドの黒の男? 女? が戦っている光景だ。

 懐に入り込んだ男が、メイドを一刀両断。

 胴体を斬り裂いた。

 

 その後男も倒れ、すぐに別の男がやってくる。

 強靭な身体の持ち主。普通の鍛え方では、そこまでいかない。

 男が倒れた人を起こすと、思いがけない言葉を聞いた。

 

 それは不老不死の薬、もしくは蘇生薬。それほどのレベルで希少な聞くとは思わなかった言葉。

 まさか出会えるとは。

 

「あれが、影の王。私の師を殺した人」

残り一話でこの章のお話が一通り、終わります

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